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不安になるほど苦手な人が現れたら?心理士の処方箋


おばんです。

オマメの心理部屋へようこそ。


ここでは、臨床心理士として働く私が、
日頃感じる臨床心理学の魅力や役立つところを
発信しています。

今回の記事では、
「不安になるほど苦手な人」が現れたとき、
自分の心を守るためにできそうなこと

考えてみたいと思います。

みなさんは、職場や学校などに、
不安になるほど苦手な人はいますか?
(もしくは、いたことがありますか?)


「やり過ごせるけど苦手な人」ではなく、
「不安になるほど苦手な人」です。


どんな相手かというと…、

その人のことを考えると不穏な気持ちになって
心臓がドキドキしてきたり。

嫌な記憶を脳内で反芻してしまって、
寝る時にまで不安な気持ちが消えない…など、

明らかに生活に悪影響が出てしまっている
ような対象
を指しています。


そんな人には、まあ、ホントは、
近づかないに限りますよね。


ただ、それが職場やクラスの人…つまり
同じ集団に所属している人だった場合、
関係を絶ってさよならバイバイ!というわけに
いかないこともある
と思います。

そんな時、どうしたらいいでしょうか?

…というのも、私自身、数週間前に、
「不安になるほど苦手な人」に出逢ってしまう
ことがありました。


残念ながら同職の方で、
基本的な喋り方がキツく、弱きを斬り捨て、
白黒/善悪思考で"〜べき"を多用される人です。


一度その方を怒らせてしまったのですが、
帰宅後に相手のことを考えると動悸がしてきて
ちょっと焦ることがありました。

『動悸?明らかにストレス反応じゃん…。
闘争-逃走反応(;動物が示す恐怖への反応)で
心拍数の上昇ってマジなんだな…。』

そんなことを考えてみても、
強い不安がなかなか消えません。


このまま相談業務に支障が出たら困ると思い、
色々試したところ、時間はかかりつつも
なんとか平常心を取り戻しました。


そんなわけで、今回は私の実体験を通して
「不安になるほど苦手な人」が現れた時の
対処法をまとめておこう
と思います!


今後自分が似たようなピンチに陥った時のために…というのと、皆さんのセルフケアの参考にもなれば幸いです。


(※①〜⑤は、その時のエネルギー残量により
実践しやすさが変わるかもしれません)

①不安の根源をつきつめて考える。


一時的な強い不安に襲われた私は、
「もし自分がクライエントとして目の前にいたらどう対応するかな」と考えました。

ブラックジャックが自分を手術したように、
自分で自分を分析したれ!の心持ちです。

不安を抱えた人に自分が心理面接をするなら、
まずはその不安の質を査定して、背景を探る
思います。そこで、

「自分はなにを不安に感じているのか?」
「どのくらいのレベルの不安なのか?」
「その不安はどこから来ているのか?」

これらを掘れるところまで掘ってみました。

すると、私の場合は、
「相手に嫌われる不安」が生じていたと思ったのですが、そのレベルが普通でないことに違和感を覚えました。

自分の臨床感覚としては、なんか、
"その人に嫌われたら死ぬかも?"位の危機感があったんですよね。

これ、変ですよね。
幾らその人に嫌われても、それで死ぬってのは
現実的じゃありません。

怒らせた相手が逆上して殺しにくるかというと
「いやそれはない」と自分も思ってます。
それなのになぜ、命の危険に近い不安を感じているのでしょう?

このへんで、これは相手の人格的な問題だけでなく、私の受け取り方にもなにか上乗せされている気がするな…と思い始めました。

相手に嫌われたら、死ぬ?
そこから連想したのは、
この世にひとつだけ、"嫌われたら本当に死ぬ"
という関係性がある
ことでした。

そう、それは『赤ん坊と養育者』です。


考えてみると、私の場合は、
「不安になるほど苦手な相手」が幼い頃の養育者と似た要素を持っていたことに気がつきました。

気が強く、プライドが高くて、厳しい。

子供の頃に"その人を怒らせたら生きていけなくなる"と感じた強い不安が、脳のバグで、
似たタイプの人に蘇ったのかもしれません。


そう捉えた私は、とりあえず自分に、
「あの人は養育者じゃない。他人だから。
どう思われても死ぬことはないから大丈夫。」
と何度か言い聞かせました。

不安は依然として残っていましたが、
「自分は過度に不要な心配をしているかも」と
理解できたことで、少しだけ落ち着きました

「不安になるほど苦手な人」が現れたら、
まず、なぜ自分が不安に感じているのか、
それは本当に現実的な不安なのか、
可能な限り自己分析してみるのもお勧めです。

②過去の成功体験を思い出す


次に私がやったのは、
『これまで苦手だった人たちを思い出すこと』
でした。

これまでの人生でも、
"合わない人"と出会う機会はあった筈です。

…思い返してみると、

「毎回挨拶無視すんなし。感じ悪ゥ」
「なんか嫌われてる気がするわ…やりづら」 

そんな風に、自分が勝手に苦手意識を持った人と共に過ごすしかない時もありました。


でも、今その人たちのことを思い出しても、
何の害も感じません。
数年前に死ぬほど苦手だった人のことも、
いまは安全に思い出せる
のです。

ということは、ほぼ確実に、
今は不安になるほど苦手な人のことも、数年後には絶対気にしてないよな…と思えました。

ちょっと気が楽になります。

また、そこからさらに、
一時期苦手だったけど普通に話せるようになった人たちのことも思い起こしました。


中高の時は苦手だったけど、大人になってから
普通に喋れるようになった子たち。
職場で難癖つけられた時は苦手だったけど、
数年後には普通に話せるようになった人たち。


苦手が苦手じゃなくなった過去の成功体験は、
"なんとかなるかも"と思わせてくれます。

不安になるほど苦手な人とは、この先もずっと悪い関係性だとは限らないのです。
もしかしたら、この人ともいつか話せるようになるのかもわからん…と思うと、
少し心に余裕が出てきた気もしました。

③ここを超えたら成長すると信じる


②の最後で、"苦手だった人と普通に話せるようになった"という成功体験は支えになることを示しました。

これまでそういう体験がない人の場合でも、
まだ自分が持ち堪えられる感じなら、
そして相手と話し合いの余地があるならば、

"とりあえず様子見る"もありだと思います。

かつて苦手だった人たちのことを振り返ると、
相手側に余裕がなかったり、向こうの警戒心が一時的に高まる背景があったり、そこには
相手側の個人的な事情があった気がします。

それが時間によって解決したり、相手側に
余裕が生まれてきて普通に話せるようになる
パターンもあった
なと思い出しました。

なので、
自分側の自信やエネルギーが回復して
「不安になるほど苦手な人」が「苦手な人」
ぐらいのレベルに落ちてきたなら、
いずれその相手は"ピンチを乗り越えた体験"にできる可能性もあると考えます。

そしてその体験は、もしまた「不安になるほど苦手な人」に出逢ってしまった時、今度は
自分を守ってくれる成功体験になる
のです。

ここを超えたら成長する。
苦しいけど、ここで破壊されずに耐えることが自分の糧にはなる。

また、その人と喋れるようにならなかったとしても、生き抜いていれば良しだとも思います。

「とりあえずその体験を耐えて生きた」という
経験値には絶対なる
のです。

そう信じて、時に任せて少し様子をみるというのもいいかもしれません。

④味方になってくれそうな人を頼る


自分1人で考えていると、ぐるぐると煮詰まってドツボに嵌ってきたりします。

考えてもさざなみのような不安が消えなかった
ので、私は味方になってくれそうな人を沢山
頼りました。

家族、友人、師匠など。

客観的な意見をもらうと冷静になれるし、
ただ聴いてもらえることでもホッとしました。

特に今回、心理士の師匠を頼ってみたことは、
とても印象深かった
です。

心理士の多くは、自分より先輩の心理士から
SV(スーパーヴィジョン)というものを受けます。

対応に迷った時に助言を貰うこともあれば、
自身の課題を指摘して貰えることもあり、
"育ててくれる先生"という感じです。

これまで私は、ケースの理解や面接技術に関する相談に目一杯時間を使っていたので、
自身の個人的な不安について先生に相談したことはありませんでした。

しかし、同職種じゃないと分からない感覚値の
ようなものや背景事情があるので、
今回のことは先生に相談したいなぁ…と、
強く思いました。

結果的には、面接室で50分間話し続けて、
あっという間に時間が終わりました。

相手方の課題についても冷静に指摘して貰い、
ものすごく安心したのですが、
面接室の中で50分間自分のことを話すって、
こんな感じなんだな…

と、クライエントさんの追体験にもなりました。

心理士の先生に個人的な相談をしてみて
一番に感じたことは、

相談するのって、こんなに勇気が要ったのか

ということでした。

不安に襲われている時、
・自分が普通じゃなかったらどうしよう
・自分に原因があるのかも
・打ち明けてみて信頼を失ったらどうしよう

こんな感じの不安や怖さがありました。
本当にピンチの時に相談するって、結構怖い
ことなんですね。

これまで自分の面接室に来てくれたクライエントさんたちのことを思い出して、色々な想いが
湧きました。


少し話が逸れましたが、
信頼できそうな人のことは勇気を出して頼る
ということはかなり有効だと思います。

⑤本当に無理、と思ったら、逃げる


最後にこれを書いておきたいです。

「不安になるほど苦手な人」の中には、時折、
本当にヤバい人もいます。

私が相手にした人はまだかわいい方で、
社会にはもっとスゴい(ヤバい)人たちがいるということも感じています。

頭の中であらゆる可能性を検討しすぎると、
私のように、
「もしかして自分がヤバいのか…?」と、
不安になってくることもあるかもしれません。

しかし、これは本当にしんどいと思ったり、
明らかに心身の不調が続くならば、
「逃げる」ことから逃げない方がいいな
とも
感じました。

なんか、自分の中の弱さを認めるって、
言うは易しで、難しい
こともあるんですよね。
(今回の件で、自分の中に心理士としてのプライドも結構あるんだなと感じました…)

自分も、もしあの動悸が3日続いたり、
夜も眠れなくなるようなことがあれば、
クリニックに行かなきゃな…とは思っていました。

相手のヤバさレベル×自分のコンディションを
見極めて、必要な外の力を必要な分だけ借りる
のが大切だなと感じます。


以上!

「不安になるほど苦手な人」が現れた時、
心理士が行ったセルフケアでした。

自分はこんなヤバい人に会ったことがあるよ、
等、大変を生き抜いた体験談などあれば、ぜひ
お聞かせください。

ご質問なども大歓迎です。

それではまた〜。

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