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SFコメディ小説 『ベン』

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い、犬が喋った⁉︎猫も喋る‼︎え、まだ出てくる?! ハイスペック犬のベン、同じく猫のニャンコゥとの出会いが、穏やかだった日常にハプニングを巻き起こしていく! おっさん的なベンと、懐か…
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第4話

ニャンコゥの夢

「イタタ……」

顔面だけが頭上に引っ張り上げられるような表情で、千翼は痛みを堪えていた。
流水も消毒液もキリキリッと沁みる。
数日で治りそうな擦り傷ばかりだが、千翼は自分の傷を見て、痛さがじんじん増して来たように感じた。

ニャンコゥが手当てをしてくれた。
救急箱の在処を教えると、手際良くサポートしてくれたのだ。
処置が終わった後、絆創膏を貼った一箇所を、ふわふわの毛

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SFコメディ小説 『ベン』

第3話

ニャンコゥ登場

リビングのソファで、小一時間ほど眠れた千翼は、頭がスッキリしたように思った。
レースカーテン越しの日差しがずいぶん暑いと感じるようになっていた。

「10月に入ったゆうのに、まだまだ日中は暑いなあ」

そして、換気をしようとレースカーテンを引き、窓を開けた。
すると、網戸のすぐ側に、見上げられている視線を感じた。
千翼は顔は動かさず、視線だけを下に落とした。

「!?」

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第2話

ベンは怒りん坊

家族入りが決定して「かんぱ〜い」とはしゃいだところで、千翼はベンの変化に気付いた。
ベンが酔っ払っているのではなく、毛色が変わっていたのだ。
千翼は尋ねた。

「あれ、ベン、お風呂入った?」
くすんでいた毛色が、全体的に赤茶色でふわっとしている。4本の脚はハイソックスを履いてるかのように真っ白だ。良い香りもする。

ベンは答えた。
「当たり前や。外から帰ったら風呂に入る

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第1話

ベンとの出会い

ある夏の昼下がり、わが家の軒下に犬がいた。
噛まれないように、刺激しないように、とにかく目を合わさず家の中に入って玄関の鍵をかけた。
軒下があるリビングからは大きな窓ガラス越しに、その犬がよく見える。
あまり若い犬ではなさそうだ。毛色は茶色なのか灰色なのか、とにかくくすんでいる。
飼い犬のようにも見えるので、交番に連絡しようと、その犬の写真を撮るためにスマホを向けた。

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