シェア
大山鳥子
2021年10月9日 21:02
第4話ニャンコゥの夢「イタタ……」顔面だけが頭上に引っ張り上げられるような表情で、千翼は痛みを堪えていた。流水も消毒液もキリキリッと沁みる。数日で治りそうな擦り傷ばかりだが、千翼は自分の傷を見て、痛さがじんじん増して来たように感じた。ニャンコゥが手当てをしてくれた。救急箱の在処を教えると、手際良くサポートしてくれたのだ。処置が終わった後、絆創膏を貼った一箇所を、ふわふわの毛
2021年10月3日 20:17
第3話ニャンコゥ登場リビングのソファで、小一時間ほど眠れた千翼は、頭がスッキリしたように思った。レースカーテン越しの日差しがずいぶん暑いと感じるようになっていた。「10月に入ったゆうのに、まだまだ日中は暑いなあ」そして、換気をしようとレースカーテンを引き、窓を開けた。すると、網戸のすぐ側に、見上げられている視線を感じた。千翼は顔は動かさず、視線だけを下に落とした。「!?」
2021年9月29日 00:15
第2話ベンは怒りん坊家族入りが決定して「かんぱ〜い」とはしゃいだところで、千翼はベンの変化に気付いた。ベンが酔っ払っているのではなく、毛色が変わっていたのだ。千翼は尋ねた。「あれ、ベン、お風呂入った?」くすんでいた毛色が、全体的に赤茶色でふわっとしている。4本の脚はハイソックスを履いてるかのように真っ白だ。良い香りもする。ベンは答えた。「当たり前や。外から帰ったら風呂に入る
2021年9月20日 00:08
第1話ベンとの出会いある夏の昼下がり、わが家の軒下に犬がいた。噛まれないように、刺激しないように、とにかく目を合わさず家の中に入って玄関の鍵をかけた。軒下があるリビングからは大きな窓ガラス越しに、その犬がよく見える。あまり若い犬ではなさそうだ。毛色は茶色なのか灰色なのか、とにかくくすんでいる。飼い犬のようにも見えるので、交番に連絡しようと、その犬の写真を撮るためにスマホを向けた。