妄想旅行
タイトルに”旅行”という言葉が入っているが、私は特に旅行が趣味というわけではない。
人に誘われてとか、何か用事があって遠出することがほとんどだ。
理由はどうであれ、よその土地に足を向けるその行為は、新鮮で自由や楽しみを見出すことが多い。
旅行ができない今、過去に行った場所やこれから行くかもしれない場所への思いを書き綴っていこうと思う。
2020年6月現在、緊急事態宣言が解除されて1ヶ月ほど過ぎたが我が家ではまだまだコロナに対する警戒を緩めていない。
帰宅時には持ち帰ったものに必ずアルコール除菌をしている。スーツに鞄、メガネ、時計、マスク、スーパーで買ってきた食材もだ。
除菌が終わると早々に入浴して、やっと自分の元の生活が始められる。
一年前の私だったら帰宅時に手洗いうがいぐらいはするが、そのあとは除菌などせずに買ってきた食材はそのまま冷蔵庫に入れていたし、入浴する前にまずソファーに座って一休みしていた。
この作業をして数か月、さすがに慣れてきたしほんの些細なことだが、その一つ一つが小さなストレスになる。
そんな私のささやかな幸せ、それは旅行に思いを馳せること。
新婚旅行で訪れたハワイでは、夜のワイキキビーチを眺めながらホテルのベランダできりりと冷えたパイナップルワインを飲んだ。
祖父の米寿祝いの為に訪れた磐梯熱海では、新緑に輝く山を見ながら”美肌の湯”と呼ばれる肌触りの良い湯につかり、夕食に山菜と香り高い地元のウィスキー”963”を味わった。
瀬戸内海に浮かぶ直島ではベネッセハウス”ミュージアム”に宿泊。宿が美術館という非日常感とフルコースにスパークリングワインは最高だった。部屋に戻ると夜食のおにぎりがお洒落な包みに入っていたのも忘れられない。
中学時代に修学旅行で行った仙台では、友人たちと牛タンラーメンを食べた。当時、900円ほどしたそのラーメンは中学生の自分にとっては大きな買い物だったがその味は分厚い牛タンチャーシューの姿とともに今でも覚えている。
大学の友人と行った沖縄では今まで食べたどのスープより澄んだ味わいのアーサーそばを食べた。その後に万座毛で見た夕日は、なぜか懐かしいと感じた。
いつか、また行きたい。今度は家族か、あるいは友人と。
歳を重ねてできることも、感じることも変わってきている。同じ場所も今ではどう感じるのか、その時選ばなかった事をしたい。
学生時代に金欠で行くことができなかった台湾旅行、台風であきらめた石垣島旅行、3.11でなくなったグアム旅行…できなかったことは上げたらきりがない。
行くことができない今だからこそ、行ける時に何をしたいか考えたいと思う。
家族と会話や、晩酌時、仕事の休憩時間、通勤時間、私は今日も楽しい時間に思いを馳せている。
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