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ボブ・ディランのイスラエル支持ソングは, 1982年のイスラエルのレバノン侵攻と同年9月のベイルートにおけるパレスチナ難民虐殺事件の直後に書かれた

タイトル写真の左は, 当時イスラエル軍が包囲したベイルートの難民キャンプでイスラエルの同盟者キリスト教右派民兵たちに無惨に虐殺されたパレスチナ難民らの遺体(1982年9月)。右はボブ・ディランのイスラエル支持ソング "Neighborhood Bully" が収録されたアルバム "Infidels"(「異教徒たち」)のカヴァー写真, 同アルバムは 1983年4-5月録音, 同年10月リリース。

ボブ・ディランの恥ずべきイスラエル支持ソングと, サブラ・シャティーラ難民キャンプにおけるパレスチナ難民等虐殺事件39周年

ボブ・ディランが 1983年の公式アルバム "Infidels" (「異教徒たち」) に収めたイスラエル支持ソング (イスラエルの新聞 Haaretz 2016年5月24日付記事より: "While Dylan’s Jewishness has been examined and reexamined over the years, relatively little attention has been paid to his 1983 song 'Neighborhood Bully' — a rare declaration of FULL-THROATED ISRAEL support by a mainstream American rocker.", 太字さらに大文字にしたのは引用した筆者) を書いたその直前, 1982年とは, イスラエルとレバノン, そしてそこに住むレバノン市民やパレスチナ難民にとって, どんな年だったのか。

そして, 今からちょうど39年前のこの時期(1982年9月16日から18日にかけて)は, どんな時期だったのか。

サブラ・シャティーラ難民キャンプにおけるパレスチナ難民等虐殺事件, 1982年9月 〜 ボブ・ディランがイスラエル支持ソングを収録した "Infidels" (「異教徒たち」, 1983年4-5月録音) 1983年10月リリースの前年

1982年6月からのイスラエルによるレバノン侵攻・侵略と同年9月16-18日のレバノンの首都ベイルート, サブラ・シャティーラ難民キャンプにおけるパレスチナ難民およびレバノン市民虐殺事件については, 前章にリンクを付した昨年9月17日に投稿した note に詳述したので, 参照されたい。

虐殺の犠牲者は 3,000人以上とされるパレスチナ難民とレバノン市民, そして虐殺の首謀者はレバノンにおけるイスラエルの同盟者であった同地のキリスト教右派民兵(当時サブラ・シャティーラ難民キャンプはイスラエル軍によって包囲されており, 夜間には照明弾を打ち上げたりしたイスラエル軍の協力なしに虐殺は起き得なかったとされる)。

ここでは, 今年 2021年のこの時期のインスタグラム投稿から, 1982年9月に起きたサブラ・シャティーラ難民キャンプにおけるパレスチナ難民等虐殺事件に関するもの, 3つを取り上げるに留める。

1) 

Remembering the Sabra and Shatila massacre.
39 years ago this week, one of the bloodiest chapters in Palestinian history unfolded in a refugee camp in #Lebanon.
For the Palestinians, the tragedy of Sabra and Shatila remains as a powerful reminder of their apparently endless cycle of displacement.

2)

39 years ago, aided by Israeli forces, Lebanese militia stormed the Sabra and Shatila refugee camps in Beirut, killing an estimated 3500 Palestinians and Lebanese civilians, as Israel’s army cheered on.
The massacre has been labelled an ‘act of genocide’ by the United Nations.
#Sabra&Shatila #freepalestine

3)

Remembering the Sabra and Shatila massacre
Source: @middle_eastmnt (Middle East Monitor)

ヴィデオは 1) と同じもの。

ボブ・ディラン 1983年のアルバム "Infidels"「異教徒たち」収録曲 "Neighborhood Bully" 〜 イスラエル前首相ベンヤミン・ネタニヤフと現首相の極右シオニスト, ナフタリ・ベネットを想起させるイスラエル支持ソング(イスラエル紙の記事より)

この歌 "Neighborhood Bully" は, 今もボブ・ディランの公式ウェブサイトの歌詞コーナーに掲載されている(そもそもこの曲を収録したアルバムはそのまま, つまり回収など一切されていないし, ディランが改心したなどという話は聞かないから, 歌詞を掲載したままにするなど, 何ら恥じることのないディランにとっては当然のことなのだろう, 因みに件の歌の歌詞の中の "he" はイスラエルのことである)。

以下は, イスラエル紙 Haaretz を含む 4つのメディアによる, ボブ・ディランのイスラエル支持ソングおよびディランの一貫したイスラエル支持の姿勢, アティチュードに関する詳細な記事。

見て分かる通り, アメリカ合州国の The New York Times, Washington Post, イギリスの The Guardian, The Independent といった, 世界中に広く知られたメディアの記事はない。日本の朝日新聞を含む世界の主流派メディアは, 「ボブ・ディランの不都合な真実」に沈黙し続けている(関連 note 投稿へのリンクは次章)。

1) イスラエル紙 Haaretz 記事(2016年5月24日)「ボブ・ディランの忘れられたイスラエル支持ソングを掘り起こす」

記事のリンクはこの下に付すが, 以下にはディランのイスラエル支持ソングに関して特に目立つ箇所のみ引用しておく(強調のための太字さらに大文字は引用者・本 note 筆者による)。

While Dylan’s Jewishness has been examined and reexamined over the years, relatively little attention has been paid to his 1983 song 'Neighborhood Bully' — a rare declaration of FULL-THROATED ISRAEL support by a mainstream American rocker.
Some of the lyrics sound like they could have been taken from speech by ISRAELI Prime Minister BENJAMIN NETANYAHU, who often portrays ISRAEL as besieged.

歌詞の一部は, ベンヤミン・ネタニヤフ(記事が掲載された当時のイスラエル首相)の演説からとったかのようだ, と。

Others are reminiscent of the 2015 campaign ads for religious Zionist political party Habayit Hayehudi, in which Education Minister NAFTALI BENNETT urges ISRAELIS to stop apologizing.

歌詞のその他の部分は, ナフタリ・ベネット(記事が掲載された当時のイスラエル教育相, 現在のイスラエル首相)の主張 〜 「イスラエル人は謝ることを止めるべきだ」 〜 を聞いているかのようだ, と。

2) Al Jazeera 記事(2016年10月22日)「ボブ・ディランのもう一つの顔」

3) The New Arab (Al-Araby Al-Jadeed), ロンドンをベースに発行されているアラブ系メディアの記事(2016年10月23日)「イスラエルの守護者としてのボブ・ディランの肖像」

4) The Electronic Intifada, シカゴをベースに活動するパレスチナ問題に焦点を当てたメディアの記事(2016年10月18日)「ボブ・ディランによるイスラエルの戦争犯罪の積極的な容認」

イスラエルの擁護者ボブ・ディランと, 長年パレスチナ人の人権を擁護するために声を上げイスラエルの政策に対する強力な批判者であり続ける元ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズとの対比も書かれており, これも興味深い記事。

ボブ・ディランの不都合な真実 〜 しかし, 日本の朝日新聞を含む世界の大手メディアは, ディランの「権威」の前にひれ伏し, ひたすら沈黙を守り続けている

詳しくは, 本 note 第1章にリンクを付した昨年9月17日付 note 投稿(以下の *1)の最終章において書いたが, 特に朝日新聞の惨状(ドナルド・トランプや安倍晋三など批判しやすい政治権力者への批判は記事にしても, ディランや他にも例えばイスラエルの「知の巨人」ユヴァル・ノア・ハラリ *4 の欺瞞などについては, カルチャーや「知」の世界における彼らの「権威」を前にしてひたすら弱腰・及び腰・腑抜けの態度を決め込む, 自称「ジャーナリズム」)について取り上げたのが, 以下の *2, *3 の note 投稿。

*1 ボブ・ディランの恥ずべきイスラエル支持ソングと、サブラ・シャティーラ、パレスチナ難民虐殺事件 38周年(2020年9月17日 note 投稿)

*2 ボブ・ディランの不都合な真実 ー 1982年イスラエルのレバノン侵略とパレスチナ難民虐殺事件の直後に書かれたイスラエル支持ソング(2020年9月17日 note 投稿)

*3 ボブ・ディランの不都合な真実(2)ー または 私が 37年余り購読し続けた「朝日新聞」の購読を止めた理由(2020年9月19日 note 投稿)

*4 イスラエルの歴史家・哲学者ユヴァル・ノア・ハラリによる論考への批判(2020年3月30日 note 投稿) 〜 ただしハラリは少なくとも最近になってイスラエル/パレスチナ問題に関してまともなことを語り始めたかもしれない(*5, *6)。

*5 今年1月になってある意味ようやくのこと, "イスラエルはヨルダン川と地中海の間に存在する 「アパルトヘイト」 レジームである" と宣言した(*7)イスラエル最大の人権擁護団体 B’Tselem の Executive Director であるイスラエル人/ユダヤ人の人権活動家 Hagai El-Ad の今年 2021年9月12日のツイートより。

以下, スレッド内より転載。ただしその後に続く反シオニストのイスラエル人/ユダヤ人活動家 Ronnie Barkan(彼のツイッター・アカウントにおける自己紹介は "An Israeli dissident. Anti Nazi. Anti fascist. Anti Zionist.")の, Hagai El-Ad のツイートへのリプライが, ユヴァル・ノア・ハラリの分析に対する不満・批判を述べていて, 興味深い(*5-2)。

@harari_yuval (Yuval Noah Harari) : "The ruling forces in Israel moved from a two-state solution to a three-class solution. They foresee one state between the river and the sea, where three types of people will live: Jews, who will enjoy all the rights; ..."
"...Class-A Arabs, who will have some of the rights. And Class-B Arabs, who will have almost no rights. This is already the current reality, and judging by the votes at the ballot box, it seems that most Jews in Israel prefer that this is how it will remain. Forever."
Unofficial English translation available online: https://middleeast.in-24.com/News/amp/216507

*5-2

以下, スレッド内。

4 CLASSES!
the most important group is the one which @harari_yuval (Yuval Noah Harari) conveniently disregards and seeks to erase from history: the 6 million who are sons & daughters of this land and denied their right to return home for 7 decades - for the sake of maintaining the Zionist race-state

*6 世界最大の人権擁護団体 Human Rights Watch の Israel and Palestine Director である Omar Shakir の今年 2021年9月12日のツイートより。

なお, このツイートにも, 上で紹介した反シオニストのイスラエル人/ユダヤ人活動家 Ronnie Barkan がレスポンスし, ユヴァル・ノア・ハラリの分析に対する不満・批判を述べている(*6-2)。

*6-2

以下, スレッド内。

4 CLASSES! the most important group is the one which @harari_yuval (Yuval Noah Harari) conveniently disregards and seeks to erase from history: the 6 million who are sons & daughters of this land and denied their right to return home for 7 decades - for the sake of maintaining the Zionist race-state
off topic - here's @harari_yuval (Yuval Noah Harari)'s misrepresentation of the term 'humanism' vs. what humanists say about humanism:

*7 イスラエルはヨルダン川と地中海の間に存在する 「アパルトヘイト」 レジームである(イスラエル最大の人権擁護NGO) 〜 これに対しイスラエル「擁護」専門家の抗弁は?(2021年1月19日 note 投稿)

さて, 次章で ボブ・ディラン批判に話を戻す。

All Along the Watchtower と言えば, もちろん 〜 ボブ・ディランよりも, ジミ・ヘンドリックス(歌詞和訳つき!)

英米のロックを聴いて育った自分にとって, かつて, ボブ・ディランは数多く存在する好きなミュージシャンのうちの一人に過ぎない存在だったのであり, 特別な存在だったことはない。また, 彼が作った歌の中に自分にとって好きな歌は少なからずあったものの, いつも彼本人が歌うヴァージョンよりも他のミュージシャンによるカヴァーの方が好きだった(ただし 2016年4月に遅ればせながら初めて且つ2度 ディランのライヴを観た際はそのカリスマ性を感じさせるステージに感銘を受けた, それは正直に書いておく)。

そして, ディラン自身が歌う歌は, 2016年秋に今日の note でも取り上げた彼の恥ずべきイスラエル支持ソングの存在を初めて知って以来, 一切, 聴かなくなった。

もちろん, 通常は, アートにおける作品とその作者の政治的態度は切り離してアートを鑑賞している。いちいち音楽家や画家などが(例えば)どの政党を支持するか, あるいはどんな政治思想を持っているか, などによって音楽や絵画の選り好みなどしていたら, キリがない。

しかし, それにも限度はある。一線を超えたら話は別だ。例えば, 「ゲルニカ」で有名なピカソが, もしも実はナチスを賛美する絵画を描き, 生涯それを恥じることもなかったと知ったら(もちろん仮定の話, ピカソに関してそんな事実はない), あるいは, "Imagine" や "Give Peace a Chance" などを歌ったジョン・レノンが, もしも実はベトナム戦争時の米軍によるソンミ村虐殺事件の直後に「アメリカ合州国」支持を旨とする歌を書いていたことが分かり, それを彼が生涯恥じることなどなかったのだと判明したら(これももちろん仮定の話である, 実際のところはジョン・レノンがそんな歌をそんなタイミングで歌う, 歌ったなどということは有り得ない話だ), 仮にそんなことがあったとしたら, 二人に対する後世の評価はどうなっていただろうか。

なぜ, ボブ・ディランだけは, その「不都合な真実」が「不都合」なものとして広く世に知れ渡らない? なぜディランだけは許容される? それはディランだから? 

ディランはポピュラー音楽史において触れてはならない, 批判してはならない絶対の「神」のような存在だとでも言うのだろうか(そもそも筆者は一切の宗教について信者ではないのでそんな莫迦莫迦しい心理は理解に苦しむが)。文字通り, 莫迦莫迦しい。

さて, 上にも書いた通り, 筆者はもともと, つまり2016年以前から, ディランが作った歌に少なくない好きな歌はあっても, いつも彼本人が歌うヴァージョンよりも他のミュージシャンによるカヴァーの方が好きだった。それは "All Along the Watchtower", 邦題「見張塔からずっと」にしても然り。

元々この歌の歌詞は, ユダヤ系アメリカ人であるディランが, ユダヤ教の「旧約聖書」(「イザヤ書」第21章)にある逸話をもとに書いたものらしいのだがね。

"All Along the Watchtower" written by Bob Dylan 〜 covered by Jimi Hendrix (November 27, 1942 – September 18, 1970)

*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた英語歌詞を削除しました。英語歌詞・原詞は公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。

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「ここから脱け出す道があるはずだが」
 ジョーカーが泥棒に言った
「混乱し過ぎて心休まる時が全くないんだ
 商売人は俺のワインを飲むし
 農夫は俺の土地を掘り返す
 結局境界線の奴らは誰もわかっちゃいないんだ
 そいつにどんな価値があるかってことをね」

「エキサイトする必要はないさ」
 泥棒が優しく言った
「ここには人生はジョークに過ぎないと感じてる奴ばかり
 だけどあんたと俺はそいつを通り抜けてきたし
 これは俺たちの運命じゃないのさ
 だから俺たちは間違わないことだ
 死期を迎える時は遅くなりつつあるんだよ」

見張り塔からずっと
君主たちは監視を続けた
そのあいだ女達はみんな入ったり出たり
裸足の召使達も同じだった
遠く彼方で山猫が唸り声をあげると
馬に乗った二人が近づいてきた
風も音を立て始めたぜ

見張り塔からずっと
見張り塔からずっと

How many roads must a PALESTINIAN man walk down, before you Bob Dylan call him a man?

ボブ・ディラン「風に吹かれて」の 替え歌 の歌詞(簡単過ぎるのだが, いま作った!)を載せて, 今日の本 note はおしまい。

How many roads must a PALESTINIAN man walk down
Before you Bob Dylan call him a man?
Yes, ’n’ how many seas must a white dove sail
Before she sleeps in the sand?
Yes, ’n’ how many times must the cannonballs fly
Before they’re forever banned?
The answer, my friend, is blowin’ in the wind
The answer is blowin’ in the wind

How many years can a PALESTINIAN land exist
Before it’s washed to the sea?
Yes, ’n’ how many years can PALESTINIAN people exist
Before they’re allowed to be free?
Yes, ’n’ how many times can Bob Dylan turn his head
Pretending he just doesn’t see?
The answer, my friend, is blowin’ in the wind
The answer is blowin’ in the wind

How many times must a PALESTINIAN man look up
Before he can see the sky?
Yes, ’n’ how many ears must Bob Dylan have
Before he can hear PALESTINIAN people cry?
Yes, ’n’ how many PALESTINIAN deaths will it take till Bob Dylan knows
That too many PALESTINIAN people have died?
The answer, my friend, is blowin’ in the wind
The answer is blowin’ in the wind

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