冴えない主婦が初めてjazzバーに行って視界が開けた話
「昨日までの人生は・・・紀元前・・だったのかっ・・・! 」
2020年秋、38歳にして初めてジャズバーで生演奏を聴いた私の感想です。
録音でしか聴いたことのなかったジャズを、至近距離で全身に浴びる幸せ・・・
「この人(=ジャズミュージシャン)たちは・・・神か・・・創造主か・・・」
それは脱力系こじらせ主婦(=私)が、思わず天を仰ぎ胸の前で十字をきった瞬間でした。
仏教徒なのに。
はじめに
ずっと前からジャズは好きだったけど、ライブに行く勇気はなくて
ジャズバー=人生の成功者がゴルフ帰りにパートナーと入店し、高い酒を傾ける場所だと。。
→完全なる偏見でした!!関係者の皆様すみません!
私が訪れたジャズバーは、内装こそ重厚で歴史を感じるお店ですが、老若男女もグループも、お一人様だってウェルカム。ドリンクは美味しいコーヒーをいただきました。
何よりnoteに残しておきたい経験は
一度のライブが、ここまで実生活に影響をもたらすとは・・・
あの日から1年、私の暮らしにはさまざまな変化がもたらされました。まとめに書いているので、お急ぎの方は最終章だけどうぞ!
◇◇◇◇◇
過剰に適応した専業主婦
私が第一子を出産したのは、東日本大震災の翌年です。かつてない災害で世の中が落ち着かない中、「子どもが幼いうちは自分の手で育てよう」と自分で決めて専業主婦になりました。
出産後、全力で我が子に向き合う毎日。やがて第二子も誕生し、子育て全開の日々が続きました。一馬力ですから生活費の節約は欠かせません。スマホの検索履歴はコスパ料理や家庭教育ばかり。抱っこひもは命と体重を背負う責任の証で、いつだって全身が凝り固まっていました。
そしていつしか、思考が「専業主婦」に過剰適応するようになったのです。
「全エネルギーを家族に向ける」
「わたしの意見は主張するべきではない」
「変化はリスク。安定こそが最良かつ節約」
次第に毎日同じようなことを繰り返している自分がなぜか悲しくなり、苦しくなってきました。子どもを幼稚園に送り出したら、何もしないのに疲れてソファーで横になる。テレビのニュースに映る女性たちは、キラキラ輝いていて本当にまぶしかった。
ジャズを聴くようになったのはその頃です。YouTubeにはお世話になりました。古今東西さまざまな演奏を聴き、「推し」と呼べる存在もできました。
◇◇◇◇◇
変化の予感
私の「推し」は、東京で毎晩のようにステージに立つジャズピアニストです。地方在住の身にとって、東京は飛行機の距離。CDやYouTube を毎日聴き、ツアー情報をSNSでチェックするという推し活を続けていました。使ったお金は、推しのCD全2枚だけ。なのに私にとってはNetflixと同じくらい価値があり、極上のエンターテイメントとして大きな感動を与えてくれました。
そして2020年秋。かの推しが某ジャズバンドのツアーで、私の街に来てくれることになったのです!! マスク生活という難しい時期、本当に多くの関係者の方々がご尽力くださったのでしょう。
私は、ライブに出かけようと決心しました。かつてなら、自分の娯楽のために数千円とはいえお金を使って夜に家を空けるなんて、母親として良くないことだとあきらめていたはず。
でも、そんな自分を丸ごと洗濯して干して畳んで押し入れに収納してしまえるくらい、ジャズライブへを望む気持ちは止められなかった。
「私は、ジャズライブに行かねばならない!」
生で聴きたいな~とか、推しを拝みたいわ~とか、そんな次元の問題ではなく
「ジャズを聴きに行く」という挑戦によって、専業主婦に過剰に適応した自分を変えたい!!
人生の節目となる予感。冴えない自分に、エンジンがかかった瞬間でした。
同時に、いくつかの課題を抱えることになります。
①チケットの購入方法、入店方法、席の座り方、オーダー方法が分からない。
②1stと2ndステージの間やライブ後、ミュージシャンと交流できるチャンスがあるかも。どう振る舞えばよいの?
③夢の時間が終わると、人生の希望が失われてしまうかも。。逆に期待外れというケースも。。
④ライブは夜。小さい子どもがいる。
⑤着て行く服がない・・・
◇◇◇◇◇
ライブまでの準備
以下、前段で触れた課題への対応策を記します。
①「ジャズライブの行き方・楽しみ方」をネット検索しました。決済方法はお店によって異なるので、事前に質問する。それでも分からないことは現場で自分から「教えてください!」と聞く。オーダー方法や独特のルールも、お店によってそれぞれです。常連さんの中に乗り込む状況は確かに緊張しましたが、勢いで何とかなりました。
②の交流時間。これは本当に深刻で、頭の痛い問題でした。普段は家族や友人としか会話のない単調な生活です。初対面の人に対する振る舞い方がイメージできないまま、神と崇める存在=推しに対峙する不安といったら。
何日もかけて熟考し、丸暗記して臨んだコミュニケーション方針は
■舞い上がっても敬意とマナーを忘れない (変なことは言わない聞かない、笑顔でハキハキ)
■ついつい感想を長々と伝えたくなるけど、推しを一人占めしない
■人生をかけて突き詰めた音楽理論や磨き抜かれた感性。私に理解できるだけの力はない。でも「感動しました、ありがとうございました」の言葉は本当に本当に大切に言おう
結果的に、大きな失敗はせずにやり過ごせたと思います。というか皆さん、拍子抜けするほど気さくで素敵な方たち。こんなに心配しなくてもよかったのかもしれません。
③当たって砕けろの一言。
④数週間前から夫に、定時帰宅を繰り返しお願いしました。仕事のスケジュール調整を何度も確認し、子どもの服薬や見守りなどを念押しました。
⑤私の制服は、ユニクロUVパーカーと楽天No.1激安クロップドパンツ、砂場で茶色く染まったスニーカーです。久しぶりにクローゼットを引っ掻き回し、ZARAの羽織もの&ヒール靴を見つけ、何とかお出かけコーデを完成させました。
ひとつだけ、新しく購入したものがあります。シンプルなデザインの化繊スカーフです。使い古しのナイロンバッグに結び、さりげなく華やかさをアピールしました。スカーフを見れば、何年経ってもライブの夜を振り返れそうな気がしました。
◇◇◇◇◇
開演
(結局私は、当日の朝を迎えても入店への不安と緊張がぬぐい切れませんでした。そこで、念のために計画しておいた「予行演習」を遂行。お昼にランチ営業中のバーに行き、すました顔で日替りランチを頼んで場の雰囲気に慣れておくのです。どこまで気が小さいのでしょう。でも、おかげで随分リラックスできました。)
・・・いよいよ20時、開演です。ベース、ピアノ、ドラムによるトリオ構成。鳴り始めた音楽の感動を、私はいまだに上手く表現できません。薄っぺらい言葉であえて例えるなら
「100か国語を操るコミュ力おばけが3人集まり、100万種類の絵の具を使って、夜空いっぱいに巨大なアートを描いてすぐに消している感じ」。
生きててよかった。本当に。
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ライブがもたらした実生活への影響
ライブから1年間で起こった生活の変化をまとめておきます。
①仕事を始めた
無性にアウトプット欲が高まり、自宅でライター活動を始めてしまいました。魅力的なクライアントさんとの交流や、なかなか出会えない方から発せられる言葉の数々。 新たな世界に心が満たされています。そういえば、かつてはマスコミに勤務していました。久しぶりに物書きを学び、楽しんでいます。
②実家に放置されていたピアノを引き取った
高校生まで弾いていたピアノ。隣県の実家から業者さんに運んでもらい引き取りました。楽器は生き物ですね。家族が増えた気分です。
③20年ぶりにピアノのレッスンを受けた
我が子にも音楽の喜びを知ってほしくなり、近所のピアノ教室でレッスンをスタート。子どもはすぐに挫折し、代わりに私が習うことになりました。20年ぶりです。予算の関係で半年間だけのレッスンでしたが、この上ない楽しい時間でした。
④夫のことを見直した
華やかなステージの裏で、人生をかけて音楽に向き合っているミュージシャンたち。夫は同様のボリュームで、仕事に人生を捧げ、プロのジャパニーズサラリーマンになったのだと思いました。音楽はできないけれど、その代わりにできることが沢山あるのだと信じてます。
そして私。かつての過剰適応とは距離を置き、
家族の幸せのために自分自身を抑えるのではなく、家族全員みんなで幸せになれる方法を見つけたい。
と考える主婦になりました。
◇◇◇◇◇
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ライブの1年後、なんとまた私の街に推しが降臨。もちろん聴きに行き、初回よりも肩の力を抜いて楽しめました。
そのとき持って行ったバッグは、在宅ワークのギャラから捻出して買ったもの。ちょっと高かったけど、シンプルで上品なお気に入りです。持ち手に巻かれた1年前のスカーフが、店内の電球に照らされ柔らかく光っていました。
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