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赤いポストと白いポストとローソンポスト

この前、転職仲間と電話をした。

友達「転職活動中は部屋が散らかるよね。」

私「そう?そんなに何がある??」

 
私は転職活動用に必要なものはバッグに分けてまとめていた。
ハローワーク用、合同面接会用、その他用、といった形だ。

 
友達「履歴書、封筒、140円切手…。」

 
私「切手!?なんで?」

 
友達「履歴書、郵送するじゃん。」

 
私「なるほど。福祉の転職活動は、履歴書はほとんど手渡しなんだよ。あと、私は履歴書を郵送する時は必ず郵便局行く。」

 
友達「わざわざ郵便局行くの?」

 
私「郵便局行けば、送った証拠が残るし、汚れたり濡れたりしなくて安心だから。

それに、うちの近くのポストはローソンレジそばだから買い物しないと入れにくいし、一日一回しか取りに来ないから、それなら郵便局の方がいい。」

 
友達「ローソン店内にポストあるの!?」

 
私「そうなんだよ。前はうちの近くにポストあったんだけど、転々と移動して、今はローソン。」

 
友達「は?移動?怪談話?夜中にポスト移動?」

 
私「??
年単位でポストは移動するでしょ?」

 
友達「しないよ!?それ田舎ルールだよ!?」

 
私「!?!?」

 
友達「ローソン店内にあるポストも見たことないって!」

 
私「いや、ローソンポストは一般的だよ(ググった)。普通に赤いポストっぽいのがレジそばにある。

ただ、うちの近所は白いポストなんだよね。あ!だからといって卑猥な本は捨てないよ!?」

 
友達「卑猥な本???」

 
私「白いポスト知らない?」

 
友達「は???白いポスト!?!?」

 
 
 
転職活動仲間と転職活動の話をしていたはずが、思いがけずにポストの話になり、盛り上がった。

私のポストの常識は、もしかしたら人によっては不思議な話なのかもしれない。

 
 
 
 
 
私が物心ついた時、近くのお店の敷地内にポストがあった。

当時、うちの近所にはコンビニがなかったので、何かを買いたい時はそのお店に行った。

 
地元のみんなはそこを、【タネちゃんち】と呼んでいた。
店名は全く違うが、タネさんという方がやっていたお店だったのだ。

 
タネちゃんちはアイスやお菓子、飲み物、野菜や米等飲食物を取り扱っていて、ストⅡ等ゲーム機も置いてあった。
近所の子ども達だけでなく、大人にとってもなくてはならないお店だった。
スーパーはやや遠くだったので
当時は週一ペースで行っていたと思う。

 
タネちゃんちは我が家から徒歩5分もかからない場所にあったが
道路を渡り、信号があるのがやや厄介だった。

 
買い物時はあまり気にならない信号を待つ時間が
手紙を出す時は微妙に面倒くさかった。 

 
私は小学校一年生の時から中学一年生春まで友達と文通をしていて
しょっちゅうポストにお世話になっていた。
また、当時は月刊誌の小学●年生やりぼんを買っていて
やはりポストを利用することが多かった。

読者アンケートや好きな作品のイラストだけでなく
当時は応募者全員サービスのプレゼントで
数百円分の切手を送るのが普通だった。

 
また、こどもチャレンジや進研ゼミをやっていたので
やはり定期的にテストやらなんやらを郵送する機会も多かった。

 
当時は月一回以上必ずポストを利用していただろう。

 
私はポストが好きだった。

赤く四角いポストが好きだった。
手紙を届けてくれるポストが好きだった。
筆まめな私は、ポストがないと生きていけなかった。
手紙が好きだし、手紙を届けるポストも好きだし、手紙を扱う郵便局員も好きだった。

 
学生になり、私が年賀状仕分けバイトをしたのも
少しでも手紙に携わった仕事がしたかったからだ。
なお、大学生の時に郵便局を受けたら落ちた。残念。

 
まだ携帯電話やパソコンがない時代
手紙でのやりとりは今よりも重要なコミュニケーションツールだった。

私はタネちゃんちでお菓子やアイスを買う日もあれば
ただ手紙を出すためだけに寄る日もあった。

 
だが、やがてポストは移動する。

 
 
タネちゃんちから、Aさんち前にポストは移動した。

生まれてからずっとタネちゃんちまで手紙を投函しに行っていたのに
私が小学生高学年くらいの時に移動したので
最初は違和感があった。

 
だが、最初だけだ。

 
タネちゃんちよりも、Aさんちの方がうちから近い上に
信号を待つ必要がなかった。
手紙投函はグッと楽になった。
手紙投函時はタネちゃんから話しかけられたりして
思春期に突入するにあたり

何か買わなきゃ申し訳ないかな?

という思いが強くなった。

 
 
だが、Aさんちは商売はしていない。
ただの民家だ。

だから、基本的にはAさんと顔を合わせることはないし
仮に投函時に目が合っても挨拶だけですむ。

 
 
ポストが移動したことにより
段々と私はタネちゃんちに行かなくなった。

ちょうどその頃、近所にコンビニができたことにより
地元の人は何か買いたい物があったらコンビニに行くようになった。

 
時代だった。

 
タネちゃんは優しかったけど、買い物をする時にあれやこれやと話しかけられることは
人情や昔ながらの良さを感じる反面
買い物における気楽さや気軽さがなかった。

 
タネちゃんちは駄菓子屋ではないが
駄菓子屋に近い雰囲気もあった。
それが味でもあったが
できたてのピカピカのコンビニに
地元民は吸い寄せられた。

 
 
コンビニができたことにより、やがてAさんちからポストは移動した。
コンビニ入口外側に移動したのだ。

 
ポストは我が家からどんどん北へ北へと遠ざかっていった。
だが、どんどん気楽にはなっていった。

 
コンビニは立ち寄りやすかったし
手紙の投函を身近な人がいちいち見ない。

それは大人や都会の人からしたら当たり前だったかもしれないが
当時の私からしたら非常にありがたかった。

 
 
やがて私は高校生になり、電車で高校に行くようになった。
そして駅前にはポストがあると知り
通学ついでに投函ができるようになった。

 
コンビニや駅利用により、ポストへの投函はどんどん気楽になっていった。
コンビニより駅前ポストの方が回収回数が多く
私は駅前ポストを重宝するようになった。

 
そして車の免許を取得し、車を買ってからは
車で気軽に郵便局に行けるようにもなり
郵便局前のポストもよく利用するようになった。
郵便局前のポストは駅前ポストより回収回数が更に多く
便利だった。

 
 


そんな中、私は大学生になり、偶然ある場所で白いポストを見掛けた。

そのポストは性的な本等を無料で回収してくれるポストらしく
手紙等を投函し、郵便局が回収するわけではないことが調べて分かった。

全国各地にあるらしいが
私は大学生の時に初めて見掛けたし
人生で数えるほどしか見掛けたことがない。

 
確かに特に若い頃は性に対する好奇心や興味が強く
何かしら性的な本(等)を手に入れるものの
処分に困りやすい。
正直、入手よりも処分の方が大変だろう。

だからきっと白いポストの設置は
様々な人の役に立ったはずだ。
下手に田んぼや川原に不法投棄されるよりは
そこにきちんと入れていただいた方がありがたいだろう。

 
白いポストは人が集まりやすい場所…から少し離れた目立たない場所に設置されていた。

だから、その辺を歩いている時に知り合いに見つかっても誤魔化しがきくし
白いポストのすぐ近くまで来たらキョロキョロし
人が完全にいなくなったらシレッと捨てればいい。

 
私はその白いポストの前を何度も通ったが
使っている人は見たことがないし
私自身も使ったことはない。

 
 
 
 
それから更に時が流れ、私がアラサーになった時
近所のコンビニがリニューアルオープンし
外に設置されていたはずのポストは店内に移動した。

調べてみると、ローソン店内のポストはいかにもポストらしい赤いタイプもあるようだが
私の近所にあるローソンは
白い箱状のものだった。
白い箱状のポストがカウンター下に取りつけられており
箱の上に当たる部分が銀色になっていて、投函口になっている。

 
 
そして、現在に至る。

 
 
 
 
私は友達と話しながら、記憶を遡った。 

………言われてみれば確かに
我が家から一番近いポスト以外は移動しているのを見たことがないと思った。

 
また、他県で白いポストは見たことがないし
ローソン店内にあるポストも
数えるほどしか見たことがなかった。

 
私の中での常識が崩れていった。

 
 
ポストは通常駅前やコンビニ外側や人が賑わう場所に設置されていて
私とポストの関係性は特殊なのかもしれない。

昔は性的な興奮や欲求を本に頼りがちだったが
スマホやパソコン、インターネットの普及により
性的な本を入手する方は減り
白いポストの需要も減っているかもしれない。

 

もしかしてもしかしたら
ポストが年々場所移動することを目撃したり
白いポストの場所やその利用目的を知っていたり
ローソン店内にあるポストを使用しているのは

この三種類の体験をしているのは

 
私だけなのだろうか?

 
 
友達と電話しながら思いがけず、私はポストについて考えたり、思いを馳せた。

 
 
 
例えば観光地に合わせて
和風なポストやデザイン的なポストを見掛けた時
私は思わず写真を撮っていた。

だけど、そういった唯一無二なポストと同じくらい
私の身近なポストはレアだったのかもしれない。











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