人件費の方が安いと思っているうちは…

今年の10月から、保育園の無償化がスタートするらしい。
娘が保育園に入るというのに、恥ずかしながら全くのノーマークだった。
それまでに、自民党政権が終わってしまい、「無かったこと」になってしまう可能性もあるが…

無償化がスタートした後、保育士さんの給料はどうなるのだろうか?
今までは市が算出した利用料を、預ける親が払う仕組みになっていたが、
無償化が始まると、お金の流れが大きく変わり、親は支払いをしなくてもよくなる。
ということは、保育士さんの給料の出どころも、極端に言えば「税金」ということになる。
そのせいで、ただでさえ悪い待遇が、さらに悪化しないとよいのだが。

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保育士さんをはじめ、介護従事者や小売業の店員、バスの運転手など、慢性的に人が足りていない職種がある。
一方で、近年のコンピュータ技術、とりわけAI技術の発展は、将来的に人の仕事を“奪う”と言われている。

この構図を考えると、「人手不足のところにAIを導入すれば良いのでは?」と思ってしまう。
だが、現実的なコストを考えると、そうもいかない。

技術を導入するには、コストがかかる。
場合によっては、人件費よりも遥かに高額である。
いや、「高額である」というのは想像でしかないが、
もし人件費と同等のコストであれば、そもそも人手不足なんて存在していないのだ。

わかりやすい例がコンビニである。
人手不足の象徴のような業種だが、そもそもコンビニ業界にセルフレジを導入するコスト体力があれば、少しくらい人手不足が解消されているはずである。
それでも「人手不足」のシュプレヒコールが上がっているのは、
結局「セルフレジを入れるよりも、レジも打てて品出しもできる“人”を雇った方が、コストも安いしリスクも少ないから」ということなのだろう。
同じように窓口業務が必要な鉄道の切符売り場は、自動発券の技術導入がどんどん進んで、今ではみどりの窓口ですら次々と閉鎖されている。
賛否はあるだろうが、こちらは人手不足を技術で解決している1つの例と言える。

冒頭に挙げた保育園や文中の介護現場も、技術導入が進んでいない業界ではあるが、技術導入を進めるコスト体力があれば、あそこまで劣悪な待遇にはなっていないのだ。
コストを掛けられないから待遇が悪いのであって、だとすれば技術導入のコストが捻出できるはずがない。
この状況は、先に挙げたコンビニよりも深刻である。

バス業界も同様であろう。
自動運転技術は未だ開発中ではあるが、車両や乗務員を効率よく回すための技術やソリューションは既に存在している。
それでも「運転手不足で本数が削減されているはずなのに、回送バスはやたら多いし同じ行き先のバスが連なってやってくる」のは、
結局のところ、技術導入を行なったり頭と時間を使って考えたりするよりも、今のまま何も考えずに人手不足と対峙していた方が楽だからである。
厳しいことを言えば、技術導入のコストが思考停止のコストよりも高いのだ。
こういうマインドが蔓延しているうちは、技術導入による現場と待遇の改善はまず無理である。


おそらく、「AIが仕事を奪うかもしれない」という恐怖や懸念は、あまり現実的ではない。
むしろ「人間を使うコストが、何をするコストよりも安い」という状況が一番恐れるべきではないだろうか。
過去に製造業が、安い人件費を求めてアジア圏に進出していった「ピラミッド」のような構図のように、
「人を使う」ことがコストのピラミッドの最底辺にいることが、非常にマズいのである。

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(個人的には、保育園を無償化するよりも、保育士さんの待遇向上を国家施策レベルでやるべきだと強く思う。ぶっちゃけ、保育士さんの待遇が良くなってなり手が増えるのであれば、むしろ高い金を払っても構わない)

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