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クリエイティブとテクノロジーのアイデアを生み出す|IDEATIONSイベント開催レポート

2023年11月14日〜17日の4日間、プロトタイプ展示『IDEATIONS Vol.2』by D2C ID IMG SRC STUDIOを開催しました。新作6点のプロトタイプ展示と全3回のトークセッションIDEATIONS TALKを実施。今回の記事では『IDEATIONS Vol.2』の展示プロトタイプを中心に、開催全体の様子をご紹介させていただきます。


『IDEATIONS Vol.2』について

『IDEATIONS』とは

社会の環境や価値観が大きく変化する時代において、様々な課題や理想を超えていくための、クリエイティブとテクノロジーのアイデアを生み出すイベントとして発足。ご来場される皆様と次なる価値を見出し、共創の可能性を探っていくことを目指しています。

今回のテーマは「RETHINKING(Distance)」

体験は、その起点となる出来事と鑑賞者との「距離」によって形成されるものである。その距離を私たちはディスプレイやインターフェースと呼ぶ時もある。例えば、見るものと見られるものとの距離。それは、人と映し出される影。例えば、見るものと操作するものと操作されるものとの距離。それは、人と指と小さいロボット群。存在する様々な「距離」を再考することでマルチモーダル・マルチチャンネル化した体験のプロトタイピングを試みた。

『IDEATIONS Vol.2』では、「共創展示」という、来場者と制作者が共に共創することを意識した空間作りを行いました。また展示と同時に、プロトタイプ制作の裏側や各プロトタイプに対する企画が語られたトークセッションIDEATIONS TALKも大変好評でしたので、ぜひ3回に渡るトークセッションのレポートも是非チェックしてくださいね。

本記事では、各プロトタイプの紹介でD2C ID内で寄せられた企画についても簡単に紹介しています。

『Augmented Projector』

スマートフォンでのAR体験を小型プロジェクターで拡張する装置『Augmented Projector』は、スマートフォンに表示されているARコンテンツを小型プロジェクターで現実空間にも投影することで、1台の端末でその場にいる複数名が同じコンテンツを楽しめるといった体験装置です。通常のAR体験では、スマートフォンなど個人のデバイス画面内のみの体験になりますが、この『Augmented Projector』では、1台の端末で複数名が同じAR体験を共有でき、複数名で、より没入感のあるAR体験が実現できます。

制作者の梅園は、「デジタルで体験するお化け屋敷や美術館、アトラクションでのアミューズメント施設になどで展開できれば嬉しいですね。また、空間全体を撮影した画像データを使って、暗がりの空間を照らしながら見たり遊んだりするダイナミックな演出も可能ですので、ぜひそのような体験を構想されている方がいらしたらお声掛けいただきたいです」と語りました。

デバイスは、懐中電灯を照らすように片手で手軽に扱えるハンディタイプに設計していることもポイントのひとつです。これは、3Dプリンターを用いて梅園が独自に設計しました。D2C ID内からは、エンターテイメント以外に、夜型観光への応用、心拍数などフィジカルコンディションを連動させた企画も提案されました。

『Surface of Distance』

ディスプレイの新しい形を模索した『Surface of Distance』は、群制御ロボットを使って短冊状のスクリーンを変化させるプロトタイプです。短冊状のスクリーンが動き、形状が変化、カーブを描き、その変形に連動して映像が映し出されます。また、プログラミングされた動きのほか、体験者自身がコントローラーで短冊の曲げ伸ばしして操作をすることも可能です。

主に開発を担当した制作者の加島は、「このプロトタイプは、ロボットで色々なものを動かしてみたいなというアイデアから生まれました。テキスタイル製品の質感を見せるといったファッション領域など、ぜひ共創できれば嬉しいです」と語りました。
主に映像の制作をした松田からは、「投影されるモノが立体かつ動的である点を意識しながらも、展示空間でどのような映像であればより美しく、インタラクティブな体験を際立たせられるかを念頭に置きながら制作に取り組みました」と語りました。

D2C ID内からは、あらゆるものを「動くこと」や「質感」を活かしたディスプレイにすることが可能であることを鍵にした企画も考えられました。

『Ambience Wall』

映像と振動を同期させることにより視覚と触覚の融合体験を可能にした『Ambience Wall』は、手を触れた箇所から映像と音の波が周囲に広がっていく演出を楽しめるインターフェースです。手が壁に触れたことを検知、その箇所を中心に波模様が映し出され、波模様に合わせて振動も移動していきます。このプロトタイプは、物体との距離を、視覚情報以外にも振動を感じることで無意識に感知しているということから、その疑似体験をすることで、より深い感覚体験ができるのではとの発想から、制作されました。

主に映像制作を担当した斎藤は、「案の一つとして、スポーツ観戦などにも活用が可能ではと考えています。例えばバレーボールのスパイクやサーブでボールが落ちた際に、その視覚情報に合わせて振動を与えることでスポーツ観戦の没入感を高めたり、音楽ライブでは体験者のいる床の振動を同期させながら新次元の音楽体験も可能なのではないかと想像を膨らませています」と話し、主に開発を担当した増本からは、「今回のプロトタイプで使用したデバイスはあらゆる場所に取り付けられますので、市街地や山道などシュミレーションのシナリオに合わせて開発することも可能です。例えば人工芝を敷いた原っぱを振動させ、妖怪が走っているように体感させたり、大きな水槽の下に振動子を取り付ければ、水面を振動させたりすることもできます。大きさに関しても現在の構成であれば3m×3m程には拡大できるので、より大きな面もご相談があれば開発していければと思います」と語られました。

『Overlapping AR』

スマートフォンで操作したキャラクターの動きに合わせて、実空間に置かれた物体も同時に動くWeb AR体験『Overlapping AR』は、デジタルと現実が交わる現象を体感できるプロトタイプです。Web ARにてスマートフォンの画面内に出現したCGキャラクターを操作し、実空間に置かれた缶を押すと、まるでCGキャラクターが本当に缶を動かしているように、スマートフォン内のCGアニメーションと共に、モーター制御で実空間のコップも移動します。会場では、デジタル上の操作が目の前の缶に、リアルに反映されていくことに驚く来場者が多く見受けられました。WebブラウザでのAR体験画面から、指定サイトに遷移させる機能も追加。そのことにより、例えばインスタレーションから購買までの導線や、その場でSNS発信いただくための導線づくりなどにも応用ができるとのことです。

制作者の前野は、「私がこのプロトタイプを制作した目的としては、クライアントのオーダーに対してすぐにモックアップが出せるように、改変可能な仕様と、共通する(であろう)仕様とをつくっておきたかったのです。例えば、共通コンポーネントを予め作成しておくことによって、このプロトタイプとは異なる体験をオーダーいただいたとしても、予算も時間にも柔軟に対応できるようになるからです。もちろん複数デバイスで同時体験性を重視したり、ARで表示されるキャラクターを同時に1つ追加したりと、追加実装で様々な体験をつくることができますので、気軽にご相談いただきたいです」と語りました。

『Sync High-definition AR』

『Sync High-definition AR』は、クラウドレンダリングによって、デバイスの性能に依存せずに高精細で迫力のあるAR体験がスマートフォン端末でおこなえるプロトタイプです。映像の精細さに加えて、複数端末で体験することができ、よりリッチで新しいAR体験に挑みました。

制作した加島と田中は、「今回のプロトタイプで使用したクラウドレンダリングやARCloudは、高コストかつ通信環境などが整っていないことなどを理由に、一般化されておらず、現時点では導入ハードルが高いのではと思っています。ただ、今の時代であっても店舗や展示会場などといった特定の環境下において、実現できる可能性を秘められているということを今回伝えたかった。またコスト面においては、ローカルネットワーク上にレンダリングPCを準備して、仮想クラウドレンダリングを組むことで、クラウド上のサーバー費用を抑え、長期間の常設展でも導入しやすい構成も考えられます。今回のプロトタイプ制作の知見を活かし、アーティストやVTuberのライブで、リッチな体験ができるなどコンテンツ設計に活かしていけるのではと思っています」と語りました。

『Parallel Realms Through AI』

『Parallel Realms Through AI』は、画像生成とChatGPTによるテキスト生成を用いて、AIにより生成された架空の自分と出会うことができるディスプレイ体験です。入力した体験者名と、カメラで撮影された画像から、もしかしたら存在したかもしれない架空の自分の姿と紹介文、人生の中で叶えたいことが生成され、語られます。AIを使って生成された自分と出会う、ミステリアスな体験です。

制作者の菅野は、「AIによる並行世界の自分は、思いもよらない結果を出してくれます。 “将来どうなっていたい?” と考える子どもが使用したら、未来にあり得るかもしれない自分との出会いを楽しめるかもしれません。また、美容やファッションの領域などで、“なりたい自分” や “もう一人の自分” が映し出されるという点を活かしたおもしろい体験に発展させられるとも思います。“こうありたい自分” を入力すると、AIによって生成された別の自分映し出されるのも楽しそうですね」と語りました。


私たちIMG SRC STUDIOでは、これからも独自のR&Dをもとに、デジタルインスタレーション、オンラインライブ、XR、AIなど、クリエイティブとテクノロジーの力で、デジタルとリアルの双方からユーザー体験をご提供できるよう、クラフトマンシップを磨き続けてまいります。

D2C IDでは、他にもプロモーション、SNS、Web制作、展示/インスタレーションをはじめ、デジタル領域を中心としたCX(顧客体験)向上のための施策を提供しております。

今回の展示会『IDEATIONS Vol.2』をはじめ、気になる取り組みや、ご相談などがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。


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