IDEATIONS TALK#01:プロトタイピング共創展示の可能性|IDEATIONSイベントレポート
こんにちは! D2C ID CX推進室です。
先日開催された『IDEATIONS Vol.2』のトークイベント「IDEATIONS TALK#01:プロトタイピング共創展示の可能性」について、イベントレポートを公開しました。
このセッションでは、IMG SRC STUDIOのメンバーから、クリエイティブなプロセスとテクノロジーの活用に焦点を当てた『IDEATIONS Vol.2』のプロトタイピング制作の裏側をお話させていただきました。IMG SRC STUDIOが『IDEATIONS』で “共創展示” をおこなう目的は?生まれたアイデアや発想はどう発展させるのか?テクノロジーを駆使した体験創造の第一線を走り続けるIMG SRC STUDIOの現場の生の声を、本記事で抜粋しご紹介させていただきます。
IMG SRC STUDIOとは
冒頭では、IMG SRC STUDIOシニアマネージャーでプロデューサーの加藤より、IMG SRC STUDIOについて紹介がありました。
加藤:全体で約150名が在籍するD2C IDのうち、IMG SRC STUDIOは、現在15名。7名のプロデューサー/ディレクターと、6名のエンジニア、2名のデザイナーからなります。昨年D2C dotとIMG SRCの合併により、新会社D2C IDのいち部署として、業界25年以上のクリエイティブ力を武器に、ご指名をいただきつつ独自に案件に進めたり、案件によってはD2C IDが得意とするマーケティングコミュニケーション戦略との掛け合わせたりと、幅広く、より深く、案件に取り組める体制となりました。
加藤:私たちの特徴のひとつとしては、XRやAIの、新しい技術を単に使ってみた体験などにとどまらないこと。未来思考のテクノロジーでユーザー体験を加速させることを活動ビジョンとしなから、企業のプロモーションやブランド活動においての最適解を、デジタルとリアルの双方向から見つけ出したものづくりに取り組んでいます。
IMG SRC STUDIO 体験創造ユニットの提供するものは大きく3つ。
1つめは、空間を作品として表現するデジタルインスタレーション体験の創造をする「DIGITAL INSTALLATION」。国際的なイベントから街中のポップアップイベントまで、より感動を生みやすいという特徴をもつデジタルテクノロジーを使った体験を、自動車/飲料/化粧品などをはじめとした、すべての業種においてデジタルインスタレーションで没入感ある体験をすることで、価値を提供しています。
2つめは、参加ライブ配信や、インタラクションライブ体験の創造をする「LIVE INTERACTION」。これは、コロナ禍を経て機運が高まっている分野です。これまではYouTubeなどで一方的に配信するようなものが一般的でしたが、ユーザーがインタラクションすることで映像が変わったりするような、デジタルテクノロジーを用いた一体感を感じられるコンテンツづくりが可能となりました。
3つめは、現実世界と仮想世界を融合させるバーチャル体験の創造をする「X REALITY」です。二次元コードを読み込むとキャラクターが出現するAR表現は、いま一般化されてきましたが、そのような簡単な表現から、VPSや位置情報、高精細画像を用いて、より精度が高く、没入できる体験が可能になってきています。
プロトタイピング共創展示とは
次に、IMG SRC STUDIOのプロトタイピング活動をおこなっています。そのひとつとして、今回のイベント『IDEATIONS』があり、IMG SRC STUDIOが独自に発表したプロトタイピングを種に、ご来場される皆様と次なる価値を見出し、共創の可能性を探っていくことを目指しています。
加藤:昨年のD2C ID発足から年に1回、発表と交流の場として、このプロトタイピング共創展示を開催しています。必ずしも、完成されたコンテンツではない状態で、皆様と、こういう体験できたらおもしろいんじゃないか?こういったものはできないか?といった対話をしていくことを重んじています。そして、そこから生まれたフィードバックから案件に繋げられれば、我々としても嬉しい限りです。
また、IMG SRC STUDIOのプロトタイピング活動方針についても話がありました。 “個人にとっても” “会社にとっても” “社会にとっても” 嬉しいことを成し遂げる、これまでもメンバーが意識していたことですが、今年からはっきりと掲げることで、「人の心を動かすクリエイティブであるか?」といったクリエイターの思考を大切にしつつも、「これって世の中のためになるか?」「会社への貢献につながっているのか?」といったマインドセットをおこなえていると加藤は話しました。
IDEATIONS Vol.2 制作の裏側
ここからは、IDEATIONS Vol.2の制作の裏側について、加藤がファシリテーターとなり、現場で活躍するディレクター、デザインエンジニアを交えたトークが繰り広げられました。
・いつ頃から計画した?
展示までのスケジュールの話題では、展示会『IDEATIONS Vol.2』を実現するため、進行の主軸を担ったディレクターの吉田が中心にお話しさせていただきました。簡易版の進行管理表や、作業の様子の写真、制作経過の資料などを今回のトークセッション用に特別に公開しながら、説明しました。
吉田:今年6月からコアメンバーが決められ、会場探しからスタート。7月半ばに会社の承認を取るため、展示作品と並行して、たくさんの会場を下見しながらレイアウトを企画、それとCGパース/ビジュアル/グラフィック制作も企画制作していきました。展示作品はモノによりますが4月頃からアイデアを出しながら制作し、10月頭にD2C IDで社内体験会をおこなった際には、50%くらいのレベル感。そこから展示前2週間で磨き上げられましたね。──包み隠さず話しすぎましたでしょうか(笑)。
前野:社内体験会では機材が剥き出しの状態でしたね。そこから体験いただけるものに仕上げていきましたね。
・いつ制作している?
今回の展示では、6点すべてが新作のプロトタイプ。制作現場で手を動かしているエンジニア、ディレクター、デザイナーそれぞれが担当しています。今年4月の入社後すぐに、この展示会での作品制作のメンバーとなったデザインエンジニアの加島より、『Surface of Distance』の制作途中の画像などを公開しながら、具体的な話がされました。
加島:特徴としては、この展示のためにがっつり時間を割いているのではなく、一口に表すと案件と案件の合間のスキマ時間に制作しています。ただ、その過程のなかでも、自分でフェーズを決めることで展示で見せるクオリティを担保していきます。『Surface of Distance』の例で言えば、ロボットでモノを動かしたいという考えがベースにあって、そこからどういうモノをつくっていくかといったアイデア出しにまず取り組みます。この初期段階では、時間は1時間程しか使わない、素材も手元にあるモノしか使いません。ロボットで土を動かしてみたり紙を使ってみたりし、その後、IMG SRC STUDIO内に展開して、個人として向かいたい方向と会社として向かいたい方向を共有しアップデートしていきました。また、この状態でSNSに公開し、その反応も汲んでいきました。この第二段階でかけた時間は1〜2日程度。ラピットプロトタイピングをみせる社内の体験会まで、案件のフィードバック待機日などに作業していきました。最後の1週間ほどは、展示のクオリティを高めるため詰めていきました。神泉オフィスで、それぞれの制作に感化されながらおこなっていくのも楽しかったですね。
前野:完成されていない状態でSNSに出せてリプライをもらえるというのも、案件とまた違った制作背景ですね。
加島:限られた時間のなかで密度高くおこなっていけたと思います。アイデアに機能をもたせている状態である、ラピットプロトタイピングまでがスピーディにできていると思います。それを軸とし、展示するにあたって空間に合わせながらどう改変していくか、機能をカタチにしていきました。
加藤:神泉オフィスはラボのような雰囲気ですよね。IMG SRC STUDIOが長年築いてきた文化を継承しつつ、ものづくりへの想いとクオリティをみんなで高め合える場ともなっています。
・プロトタイプの目的は?
ここからは、プロトタイピングをおこなう目的について、
前野:案件でご提案させていただく時のための準備であると、私は思います。案件では話題性が求められるため、制作アプローチも今までにないものになります。そのときすぐにお役に立てるよう準備していくことが、私のなかのプロトタイピングの目的です。体験を成り立たせる構成要素を探ることだけでなく、できないことはできないと知ることも大切です。だからこそプロトタイピングでは、成功するだけでなく失敗もたくさん経験したいと思っています。
加藤:前触れなくお題が出されたとき、テクノロジーを駆使したものづくりにおいては、開発のフィジビリティを掴めているかは大変重要なことのひとつです。前野が申し上げたように、失敗の経験がないと、本番でも失敗してしまうので。
前野:今回『IDEATIONS Vol.2』で展示しているプロトタイプは、本番となる案件ではそこまでやると危ないと見越しているものが多いです。本番では構成しないような環境まで追い詰めてみることが、案件に活かされると思っています。私の作品『Overlapping AR』はAWS経由で通信しているのですが、立てるサーバーの量をかなり絞っており、小規模な状態でつくっています。案件だとその数倍は立てておくのですが、ギリギリの負荷でどこまで耐えられるかを見たかったのです。プロトタイピングだからできる攻めをして、今回も学びがありました。
加藤:テクノロジーをつかった表現は、リスクが伴うというのが正直なところ。企画制作時には、それを踏まえた技術の説明をクライアントや代理店にしていますが、その説明内容が、どこかの記事を参照したようなレベル感では、プロとしては失格だと私は思っています。失敗も含め経験した知見を提案していけるクリエイティブチームであり続けるために、『IDEATIONS Vol.2』をはじめとしたプロトタイピングの機会を継続していきたいですね。
・アイデアの起点は?
この設問では、アイデアブレストからアイデアシンキングの手段や評価軸を説明したあと、各メンバーから意見が述べられていきました。アイデアブレストは、Figmaを使用した共有資料でおこなうという、オーソドックスな方法でしたが、アイデアシンキングでは、どういったものに使えるかといった展開例を制作者以外の者が出すことで、盛り上がり、広がり、展示内容を詰めていけたと、皆、感じているようでした。
吉田:展示スペースでは、展開例をイラストにしたものから選抜して掲示させていただきました。これが好評ですね。
加島:考えを巡らせすぎて、凝り固まってしまうことは、制作者にはよくあります。人の意見を聞くことで、その制限が取り払われて、柔軟になっていきます。自分では2案程に絞ってしまっていたが、7〜8案も活用案が出て思考が広がりました。
前野:私は不安の解消になりました。迷っちゃうと実装が進まないことがあって、チームの意見は、個人を前進させてくれるものだと感じました。
加藤:テクノロジーって、クライアントや社会と向き合った際に、「これおもしろいですけど何に使えるんですか?」ってことに陥りがちですが、展開例の引き出しをしっかり把握しながらコミュニケーションをとっていくことは、共創をするために重要なことだと思います。テクノロジードリブンで、単に流行りのものを使ってみた発表会ではなく、しっかりと社会に向けて実装されているところまでイメージしながら開発を進めていくことも、私たちIMG SRC STUDIOが大切にしているところです。
この設問についてはセッション最後に設けられた質疑応答にて、より深掘りされていました。質問者からあった「アイディエーションする際に制約条件をもたせるか?その際の注意点は?」といった質問には、加藤が次のように答えました。
加藤:既存のプラットフォームを使用したり、体験できる端末や環境を絞ったりと制約を設けることで、コンテンツのクオリティを上げていくこともあります。ただ、制約条件をもたせることでバリエーションのひとつに見えてしまい、新規性に欠ける場合があるので、その点は注意しています。完全に新しい技術ひとつでなく、組み合わせるなどし、最終的にはどんな体験設計としたいのかに重きを置いています。
・案件との違いは?おもしろいものづくりはできる?
前野:構想段階から世の中にアイデアとして出せるところです。先ほどプロトタイピングの目的でもお話した内容と重なりますが、プロトタイピングは準備や過程。案件との違いというよりも、結果、案件として成り立つことが会社としての存続でもあるし私もゴール設定としています。準備をして案件は失敗させないというところは、違いですね。
加藤:冒頭に話したプロトタイピングの目的にも通ずるのですが、自己表現や作品づくりに没頭しながら報酬を得られるのはアーティスト活動であり、一方で私たちの体験創造は、ビジネスを駆動させるための活動です。そのフィールドでものづくりの価値を見出していきたいと、常に思っています。
前野:案件にしかできないことがありますよね!「案件だから制約があり、ここまでしかできなかった」などとネガティブに語るのは、違うのかなと思います。スケールも大きくできますし、価値を共に創っていくおもしろさもやりがいもあります。先に決められた仕様に合わせて、これしか無理ですみたいな提示をする…それって良くないしクライアントを軽視しているうちは、共創は叶わないないと思います。だからこそ私たちは、プロトタイピングに取り組み、案件ですぐにモックアップを出せるよう努めていきたいですね。
加藤:要件定義にのっとった開発が理想の業界もあると思いますし、その中でクリエイティブを詰めることのやりがいもあると思いますが、はじめに決めたハードルが低く設定しすぎたためにおもしろくなかった、ということもありますので リスクマネジメントとクリエイティブのバランスを取れるための、準備も必要ということですね。
前野:一様にどっちがいいとかではないですけど、そこで攻める方に寄っていきたいですね。うちはじゃないと意味がないんじゃないかと。
展示までのストーリーから、クリエイターの想い、具体的なR&Dの取り組み方、IMG SRC STUDIOの在り方まで、質疑応答含め、様々なお話をさせていただきました。トーク終盤には、新しい体験を生み出し続ける老舗クリエイティブチームとしての意気込みも感じた、熱いトークセッションとなりました。
また、今回、加藤以外の3名はIMG SRC STUDIOに参加し1年未満ですが、それぞれが経験値と挑戦を続けることで、対等に意見を交わしながらものづくりができるといった、クリエイターが活きる風土も感じられました。
社内外で興味をお持ちの方は、ぜひお声掛けください!
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