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旅立ち〜続・父親日記、あれから一年

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放心状態の父親を救ったのは、室内楽だった。まさかの一年後、チェンバーオーケストラに入団して初舞台に挑む。
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本番

本番

6.4

台風一過の爽やかな朝。

ラウンジで朝食を済ませ、
チェックアウトして歩く。

舞台のセッティング。

自分の椅子、譜面台、
首席や指揮者の見える位置を確認。

楽器を袖に置く。
ステリハ。

音が全然違う。
これがホールの音か。

昼休憩は、人それぞれ。
やはり落ち着かない。

外の空気を吸う。

客入れ。
袖でみんなが声をかけてくれる。

みんなも緊張してるのがわかる。

大丈夫、み

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ゲネプロ

ゲネプロ

6.3

ゲネプロは大久保の、
クラシックスペース。

東京交響楽団の拠点。

本格的なリハーサル室で、
気持ちもアガる。

ソリストと微妙に合っていない。

指揮者がイラつき、
奏者の不信を買っている。

管とも呼吸が合っていない。

やっと一度に全曲を通したので、
ようやく全体の流れを掴んだ。

アレグロ、アンダンテ、
メヌエット、アレグロ。

これが3セットあるわけで、
木を見て森を見ずだっ

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雨で

雨で

6.2

台風2号、線状降水帯による、
集中豪雨が、一日中続いている。

小金井のレッスンは、
延期させてもらった。

家でじっくり、過ごした。
仕事の合間に。

楽譜を見ながら聴いたり、
練習不足のマーチを弾いたり、
楽器の手入れをしたり。

換え弦について、
深く考えたこともなかった。

本番当日の流れ、衣装などの準備、
演奏以外のことが、気になった。

雨で予定が狂ったせいかもしれない。

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通し

通し

6.1

今日は1時間の練習で、
ハフナーを全曲通す、マーチまで、
と決めていた。

途中で腰が痛くなったら、
弓を持つ手が痛くなったら。

繰り返しや譜めくりを、間違えないか。

譜面以外に、首席や指揮者を、
視界に入れられるか。

できなくても先へ行く、
流れを止めずに前へ進む。

フラメンコの舞台でも、
直前に通してみて、
発見することも多いのに、
合奏ではまだ一度も通しがない。

前日のゲ

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乗り切れるか

乗り切れるか

5.31

首席から、チェロパートにメール。

フィナーレ、乱れているので、
走らず、締めていこう、みたいな。

pにも気をつけて、とあった。

やはり本番はベテランのみなさんでも、
夢中になってしまうと、
見えなくなることもあるということか。

木管パートから打上げのお誘い。

木管好きの僕には、なんとまた素敵な機会。

フィナーレを最後まで乗り切れるか、
不安の影が忍び寄る。

だからこそ、こ

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休息日

休息日

5.30

今日は最後の休息日。

朝から夜まで仕事がビッチリで、
練習できる時間がないと、
ずいぶん前からわかっていた。

イヤホンでYoutubeも、
朝の通勤地獄だけ。

夜はオジサンばかりで、
締めでマイクを握る。

コロナ以前どころか、
茹でガエルの頃と違うのは、
帰りはガラガラの電車だった。

これが休息日か。
最低だから、最後にする。

問題は、この無駄な体力の消耗。

映画「アマデ

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頭が痛い

頭が痛い

5.29

月曜日は今週の仕事をいかに捌き、
練習時間を確保するか、調整する。

本番当日夜は、
フラメンコ公演の打上げがあり、
僕はその幹事だった。

チケットを誰にいつどうやって渡すか。考えること、やることが多く、体調は最悪だった。

阪田先生のレッスンはいろいろ考えて、
金曜の夕方に入れた。
そこしかない、というのもある。

通常のレッスンは1ヶ月休むことにしているから、
今週の木曜は自主練

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日曜日の朝

日曜日の朝

5.28

日曜日、朝からの練習。
池袋の芸術劇場リハーサル室。

本番前の最後だ。

日曜の朝、池袋をうろつく人はあまりいないだろう。
上野や初台も似たような景色かもしれない。

楽器を担いだ人が、とにかく多い。
日曜の朝、この時間をどれだけ楽しみにしてきただろう。

僕は必ず、スタバで朝食を摂る。
3時間の練習は、ものすごい体力が要る。

そこでモーツァルトを聴きながら、
15分から20分、浸

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心の準備

心の準備

5.27

土曜日は午前中、家でじっくり練習できる日だ。

楽譜の手直しをのんびりしていると、
すぐに娘が帰ってくる時間になってしまう。

その楽譜への書き込みに、さらに時間がかかる。

この書き込みが、いろんな意味で大事だった。
最初からわかっていたら本番用の楽譜を、
もっと早くから作っていただろう。

ただ繰り返しや譜めくりまで、
そこまで余裕がなかったというのが、
正直なところだ。

今さら

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純粋に

純粋に

5.26

昨日から、シンフォニーのおさらいをしている。

14番 イ長調 k.114

モーツァルト15歳の作品だ。

爽やかで明朗快活、真っ直ぐで伸びやかで、純粋。
そう、純粋に、楽しい。弾いていてもだ。

まるで体の中に、モーツァルトが乗り移るかのように。

ただ弾ければいいわけではない。合奏だ。

僕はまだどのポジションでも自在に、というわけにもいかないから、
あえて慣れないポジションにチ

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別れ

別れ

5.25

今日は通常レッスンの日

なのになぜか明日だと勘違いしていて、
自主練を1時間して先生からのLINEで気づく。

来月は休会して、先生を変えるつもりだったので、
最後に会って挨拶をしようと思っていたのだが。

長い付き合いだったのに、この半年、
オケ入団にもずいぶん悲しい言葉を浴びた。

音楽家は言葉遣いが下手なのは仕方ない。
生徒に嫌われず授業料を長くもらうため、
自然と身につけてし

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首席から

首席から

5.24

今日は1楽章。初心に帰って。

練習プランを練っている時、
たまたま首席にメールしようとしたら、
その首席からメールが届いていた。

首席からメールが来ることは最近減っていた。
タイトルは「本番に向けて」

そこには長文で、励ましのメッセージが書かれていた。

弾けるところはしっかり弾いて、初めての合奏を楽しんでほしい、と。

これからは練習するのも、難しいところより、
弾けそうなとこ

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仕事の合間に

仕事の合間に

5.23

今日は、チェロの練習の後、フラメンコの新しいクラスに顔を出すことに。

なので、仕事を切り上げて練習に向かっても、30分しかなかった。

事前にプランを練る余裕もなかったが、
ある意味昨日の続きで、6楽章のアンダンテをやった。

歩く速さで。あっという間の30分だった。

それでも今まで後回しにしてきた分、集中してやれた意味はあるはずだ。

同時に、以前から相談していたレギュラーレッス

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夢に向かって

夢に向かって

5.22

本番まで2週間を切った。
この自分の気持ちを、残しておこうと思う。

いつものように仕事終わり、部屋と楽器を借りて練習した。

今日は昨日の復習だ。

個人練習はアレグロを中心に、基礎や技術を磨いてきたが、
いよいよアンダンテやメヌエットにも、時間を割いていく頃だろう。

昨日のtuttiも、それを意識しているのは明らかだった。

特にソロがいない、6楽章のアンダンテと7楽章のメヌエッ

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