フリーランスの取引に関する新しい法律がスタート!
いわゆる「フリーランス法」が施行されました。
結構細かな法律なのでさわりだけを記載します。詳しくは関係省庁等のホームページなどで御確認下さい。
|「フリーランス法」とは
いわゆる「フリーランス法」とは、正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、略称は「フリーランス・事業者間取弓|適正化等法」ともいわれている。
|「フリーランス法」の目的
この法律は、働き方の多様化が進み、フリーランスという働き方が普及する中、個人が事業者(フリーランス)として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備することを目的とし、フリーランスに係る取引の適正化及び就業環境の整備を図るための法律として新たに制定し施行されたもの。
つまり、フリーランスとしての事業者の
①企業などの発注事業者の間の取引の適正化
②就業環境の整備
を図ることを目的とした法律である。(法第1条)
|法律の適用対象
この法律では、いわゆる「フリーランス」は、「特定受託事業者」ということになる。
企業などの業務委託の相手方となる事業者であり、
① 個人であって、従業員を使用しないもの
② 法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの(個人事業者や一人親方(一人社長)といわれる法人で従業員を使用していない。)
ということになる。
なお、「従業員を使用」とは、
1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用
が見込まれる労働者を雇用することである。
労働者派遣の派遣先として、上記基準に該当する派遣労働者を受け入れる場合も該当する。
なお、事業に同居親族のみを使用している場合は該当しない。
「特定業務委託事業者」とは、フリーランスに業務委託をする発注事業者のことであり、
① 個人であって、従業員を使用するもの
② 法人であって、二以上の役員がいる、または従業員を使用するもの
とされている。
なお、この法律では、(特定)業務委託事業者と特定受託事業者との間の「業務委託」に係る取引に適用されることになる。
「発注事業者」には特定業務委託事業者と業務委託事業者があり、フリーランスからフリーランスに業務委託する場合も含まれる。
|対象となる取引の内容
本法の対象となる「業務委託」とは、事業者がその事業のために他の事業者に、給付に係る仕様、内容等を指定して、物品の製造、情報成果物の作成または役務の提供を委託することをいう。
本法の適用対象には、業種・業界の限定はない。
発注事業者からフリーランスへ委託する全ての業務が対象となる。
|義務と禁止行為
➤ 取引条件の明示義務 ( 第 3 条 )
フリーランスに対し業務委託をした場合は、直ちに、取引の条件を、書面または電磁的方法により明示することとされている。
<取引条件を明示する場合の注意点>
○ 取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引も対象であるため、発注事業者がフリーランスである場合にも義務が課される。
○ 明示する方法は書面か電磁的方法のみが認められ、どちらの方法とするかは、発注事業者が選択できる。
電磁的方法とは、電子メール、SNSのメッセージ、チャットツールなど。
なお、SNSのメッセージ機能は、送信者が受信者を特定して送信できるものに限定され、インターネット上に開設しているブログやウェブページ等への書き込み等は認められない。
○ 電磁的方法で明示した場合であっても、フリーランスから書面の交付を求められたときは、遅滞なく、書面を交付しなければならない。
ただし、フリーランスの保護に支障を生ずることがない場合には、必ずしも書面を交付する必要はない。
<明示すべき事項>
トラブルを防ぐための基本は、取引条件の共通認識であり、以下を明示する必要がある。
① 業務委託事業者および特定受託事業者の名称
② 業務委託をした日 → 業務委託をすることを合意した日
③ 特定受託事業者の給付の内容 → フリーランスにお願いする業務の内容
④ 給付を受領または役務の提供を受ける期日 → 納品日や作業日など
⑤ 給付を受領または役務の提供を受ける場所 → 納品場所、作業場所など
⑥ 給付の内容について検査する場合は、検査を完了する期日
⑦ 報酬の額および支払期日 → 具体的な報酬額や算定方法、支払期日など
⑧ 現金以外の方法で報酬を支払う場合は、支払方法に関すること
※ ⑥お よび⑧ は該当する取引であ る場合のみ明示すること。
➤ 発注事業者の禁止行為 ( 第5条 )
フリーランスに1か月以上の業務委託をしている発注事業者には、以下の7つの禁止行為が定められている。
たとえフリーランスの了解を得たり、合意していても、また、発注事業者に違法性の意識がなくても、これらの行為は本法に違反することになるので十分注意が必要である。
7つの発注事業者の禁止行為はやらないことが当たり前 。
① 受領拒否
特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく給付の受領を拒む こと(1項1号)
② 報酬の減額
特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく業務委託時に定めた報酬の額を減ずること(1項2号)
③ 返品
特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく、給付を受領した後、その給付に係る物を引き取らせること(1項3号)
④ 買いたたき
特定受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付 に対し通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬の額を不 当に定めること(1項4号)
⑤ 購入 ・利用強制
特定受託事業者の給付の内容を均質にし、又はその改善を 図るため必要がある場合その他正当な理由なく自己の指定す る物の購入・役務の利用を強制すること(1項5号)
⑥ 不当な経済上の 利益の提供要請
1か月以上の業務委託に関し、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること(2項1号)
⑦ 不当な給付内容 の変更 ・やり直し
特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく、特定受託事業者の給付の内容を変更させ、又は特定受託事業者の給付を受領した後若しくは特定受託事業者から役務の提供を受けた後に給付をやり直させること(2項2号)
➤ 募集情報の的確表示義務 ( 第12条 )
発注事業者は、広告等によりフリーランスを募集する際は、そ の情報について、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をし てはならず、正確かつ最新の内容に保たなければならない。
➤ 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務 (第13条)
発注事業者は、フリーランスからの申出に応じて、
○ 6か月以上の期間で行う業務委託について、フリーランスが妊娠、出産、育児または介護(育児介護等)と 業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければならない。
○ 6か月未満の期間で行う業務委託について、フリーランスが育児介護等と業務を両立できるよう、必要な 配慮をするよう努めなければならない。
➤ ハラスメント対策に係る体制整備義務 (第14条)
ハラスメントによりフリーランスの就業環境を害することのないよう相談対応のための体制整備その他の必要な措置を講じなければならない。
また、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由として不利益な取扱いをしてはならない。
➤ 中途解除等の事前予告・理由開示義務 (第16条)
発注事業者は、
①6か月以上の期間で行う業務委託について、
②契約の解除または不更 新をしようとする場合、
③例外事由に該当する場合を除いて、解除日または契約満了日 から30日前までにその旨を予告しなければならない。
予告がされた日から契約が満了するまでの間に、フリーランスが解除の理由を発注事業者に請求した場合、発注事業者は、例外事由に該当する場合を除いて、遅滞なく開示しなければならない。
➤ 違反行為への対応
○ フリーランスは、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省に対して、発注事業者に本法違反と思われる行為があった場合には、その旨を申し出ることができる。
○ 行政機関は、その申出の内容に応じて、報告徴収・立入検査といった調査を行い、発注事業者に対して指導・助言のほか、勧告を行い、勧告に従わない場合には命令・公表をすることができる。
命令違反には50万円以下の罰金。
○ 発注事業者は、フリーランスが行政機関の窓口に申出をしたことを理由に、契約解除や今後の取引を行わないようにするといった不利益な取扱いをしてはならない。
|おわりに
フリーランスが発注事業者との間で適正な取引がされ、また就業環境の整備がされることを目的に新しい法律ができた。
この法律が効果的に運用され効果が上がることを期待したい。
資料:
ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化等法(パンフレット)https://www.mhlw.go.jp/content/001261528.pdf
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