「セデック・バレ」よりも突く「台湾文学コレクション2 風の前の塵」
<文学(182歩目)>
「セデック・バレ」よりも、日本統治下の台湾の少数民族との関係が理解できる。ちょっと「稀有」な作品でした。
台湾文学コレクション2 風の前の塵
施 叔青 (著), 池上 貞子 (翻訳)
早川書房
「182歩目」は、施叔青さんの歴史巨編。
ここ最近の読書で、そもそも牡丹社事件や霧社事件を知った。
そして、戦後の台湾における二.二八事件も。
隣国にもかかわらず、知らなかった歴史的事実が多い。
わずか150年ほどの明治からの日本と台湾との関係は多くの事実から紐解かないといけないと感じた。
台湾人の施叔青さんの目線がニュートラル。そして、台湾から引き揚げてきた家族の記憶から両国の関係を考えさせる。
「最初は、日本における地主制度の形成により、農民の大半が小作農に陥った。農村は日増しに困窮し、労働力は大量に外に流れざるをえなくなった。人口過剰問題を解消するため、明治末期から大正時代にかけて、台湾を熱帯植民試験基地とし、まず先に土地が広く人影まばらな「後山」と呼ばれる台東と花蓮を選んで、官営の移民村を設立した。もしも日本人移民を人口密度の高い西部に住まわせたら、台湾人に同化されてしまうかもしれないと懸念したのである。」とあった。
ここが、台湾における少数民族のアミ族の居住地で~~とあった。
この物語の背景部分で、これがあるから戦後日本に帰国するも、生まれ育った昔の居住地に帰ってくる人も少なくない。
こんな日本と台湾との交流があったことをこの本で学ぶと同時に、日本人の憧憬ともともとのアミ族との認識の違いが多くの事件を喚起したことを知ると同時に、今も双方に先祖を持つ人々が少なからずいること。そして、思いのほか「金」等の産物が多かったことから、いろいろな思惑が動き悲劇が起きたことを知った。
この物語は、日本と台湾のあまり知られていない歴史巨編で特に日本の習慣を捨てきれない植民した方々の考えと元住者との関係を考えさせられた。
何故か、ヤシの木の向こうに見える輝く水田が見える作品でした。
かなりマイナーな作品だと思うが、最後まで心を突く。
こんな作品を翻訳してくれた早川書房さんに感謝。
そして映画化された「セデック・バレ」よりも心を突いた。
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