見出し画像

内水面漁業制度制定の背景

前回の記事で、内水面=川・湖・沼の資源管理主体である内水面漁業協同組合=漁協が、金が回る体制でもないし、そもそも未来への投資的な判断もやりにくいし、法律も川釣り=観光・レジャーの観点の法がない、と制度問題だらけ、という記事を書きました。そもそも制度おかしいのでは?

ただ、今の法制度や運用になった背景があるはずです。超優秀な官僚や政治家の皆さんが作ってきたものなので。
ということで、今のような制度になった背景を追ってみたいと思います。

魚を獲る権利について定めている「漁業法」

内水面・川釣りは基本「遊漁」で、「漁業法」で定められている第5種共同漁業権を持つ内水面の漁業協同組合が、漁業の範疇として「遊漁」の方法を定めています(いわゆる「遊漁規則」)。

その大本の「漁業法」は、以下の流れあり。(基本は海がベースで、内水面の特異な部分だけ別設定の形)

■1901年(明治34年):「漁業法」制定。
■1910年(明治43年):漁業法が全面改正される(明治漁業法)。
 これらの漁業法では、従来の慣習を基盤として漁業権制度、漁業許可制度、漁業取締制度が打ち出された。

■1949年(昭和24年):現行「漁業法」を制定。
 戦後、GHQと4年ぐらい喧々諤々やりつつ決めたそうな。
 漁業権は知事による免許制。
 漁協による増殖義務の履行設定。(国営増殖方式は様々な反対により左記に至る)

内水面漁業制度の確立過程と流域環境・魚類資源問題 -1949年衆議院水産委員会での議論を中心に- 2000-08-30 大森正之
f他、海も含めると漁業法制定に関する資料論文は色々あるのでご参照を。)

元々江戸時代も含めたずっと昔から、日本ではそれぞれの土地で地域の海や川・湖・沼等で食料や販売物として「漁業」をしていた地域の人たちがいて、地域毎の一定のルールで運用していた(各時代で各政府が定めも作っていた)。その権利を明治漁業法では基本的にはそのまま取り込んで認めた形。
現行の「漁業法」はそこに、知事の免許制にして、一定の資格の中に明示的に「増殖義務」も設定した、というあたりがポイントかと。

1949年現行「漁業法」制定時の社会背景

では、今も使われている「漁業法」がどんな時代に作られたものかを見てみると、その時何を考えて作られたのかわかるかと思っています。

以下は都市化率の推移。

出典:土屋宰貴「わが国の「都市化率」に関する事実整理と考察―地域経済の視点から―」日本銀行ワーキングペーパーシリーズNO.09-J-4 2009年7月

1960年で43%ぐらいなので、1949年当時では40%弱でしょうか。現在は2022年で70%近くだと思われます。
日本人口1.2億人だとすると、30%だと3600万人は都市部に移った計算ですね。

上記は乗用車・バイク・自転車の普及率。
特にみたいのは乗用車で、1960年には2.8%なので、1949年だと2%弱でしょうか。今は80%前後。
1953年だと世帯数は1700万世帯ぐらい、2016年で5000万世帯ぐらいのようなので、1949年自動車保有世帯は1700万世帯の2%で34万世帯。現在は4000万世帯。1995年あたりと今の携帯普及率ぐらいの違いでしょうか。

上の図は自営業が少しずつ減り、家族従業者はかなり減り、雇用者が増大の一途を表しています。
要するに地域でも個人・家族経営の小規模店舗やっていた人が減り、組織に属する労働者=サラリーマンが増えている、という話。
それはつまり9時-5時のような働く時間決められているから、平日地域のことがあっても手伝えないということ。

出典:政策課題分析シリ-ズ 17 日本のフリーランスについて ―その規模や特徴、競業避止義務の状況や影響の分析― 令和元年7月 内閣府政策統括官(経済財政分析担当)

上記も、自営業の人の種類割合ですが、自営業のうち増えているのは雇用的自営業、という現在増えている組織からの受注を前提とするようなハイスキルを売りのいわゆるフリーランス。
地域で主だった自営業種類は軒並み減っている状況。

出典:中村智幸(2017) 内水面漁協の組合員数の推移と将来予測 水産増殖 65 (1), 97-105

上記は内水面漁協の組合員数推移と予測。2035年は0になる予測さえありますね。
1975年ぐらいまでは逆にずっと増えていたので、人気の所属だったということですね。(結構ダム等の補償等狙って入った人達もいると思いますが。。)

これらのデータから1949年現行「漁業法」制定時の社会背景を想像すると、

  • 各地域にはまだまだいっぱい人がいた(今の過疎的な話は無い)。地域内で平日休日含め組合活動を手伝える人がいた。

  • 個人で車持っていないので長距離移動しないから、隣の都道府県から釣りに来るような人がいない。

そのような社会背景を元に、私たちがヒアリングしたり調べたりした情報を含め内水面漁協とその周辺環境の1949年及び2022年比較を表にまとめると、以下のようなイメージだと認識してます。

新漁業法制定時(1949年)と現在(2022年)の比較

以上の状況から推察するに、
■1949年(昭和24年)は、戦後すぐで乗用車普及率は2%以下、都市化率も40%を切っており、基本は「地域」「組合員」のための漁協であった。
 →増殖義務、遊漁者を不当に排除しないこと、等の法律制度も
「組合員」が内水面資源の主たる利用者であることが前提。

■現在2022年は、乗用車普及率は80%を越え、都市化率も70%を超える。
 →地域外の「遊漁者」が内水面資源に対する利用者のメインとなっている(少なくともニーズは多数)

地域のための資源 と 外部からの利用者を呼び込む経済資源 の2軸バランスが 法律制定時と変わってしまっている。

そういう、そもそもの前提が違う状況です。

何故あえて社会背景書いているかというと、例えば「漁業法」の中に、

①「漁業法 第百七十条第五項   都道府県知事は、遊漁規則の内容が次の各号のいずれにも該当するときは、認可をしなければならない。
  一 遊漁を不当に制限するものでないこと。
  二 遊漁料の額が当該漁業権に係る水産動植物の増殖及び漁場の管理に要する費用の額に比して妥当なものであること。」

という文面がありますが、遊漁料設定の制限の一つになっていて適正値段で持続して回すことができない一因になってます。

以下、具体的なイメージとして。

1949年制定当時は地域の組合員と組合員じゃない人がいて、組合員に入っていないと釣りも魚獲ることも出来ない!みたいな意地悪いことがないように制限したのだと思います。川も魚も公共財なので。
なので年間費用が組合員5000円、非組合員20000円、というのは不当制限でやりすぎでしょう、と。今そういう制限を行政でかけてます。
でも、今まではそこに1時間以上かけて車でやってくる地域外の釣り人はいなかった。

でも、2022年現在は当たり前のように車で釣りにやってきて、釣りキチなら片道3時間とか、釣り旅とかもいたりするわけで。

ただ、「不当に制限」にならないよう地域内と地域外関係なく等しく扱う必要あるので、組合員5000円、非組合員7000円、みたいな金額パターンは多い。
地域で増殖してくれている組合員は、組合で自分たちのためだということもあり、増殖活動もボランティア、もしくは安い費用で地域外から来る釣り人が釣れる川にしようと努力する(組合員のための組織だから、収益出したらダメなのでそれを前提に遊漁料や賦課金も行政指導で決めている)。
でも、そもそも地域の組合員も今や大部分釣り人。それも2/3ぐらいの組合員は町内会費のような形で払っているだけで川に釣りにさえ行っていない。自分のメリットなく、知らない人が楽しみで釣りに来くるためにボランティアで増殖手伝いとかしないので、増殖手伝いしないか組合を抜けていく。

これが、レジャー観点なら、地域外から来る人はある程度お金払います、その代わりいい川にしてもらって釣り楽しみたい。それによって地域にもお金が回る。別にお金が第一目的ではなくても、雇用が出来たりちょっとした贈り物レベルでお金回ると、続けやすいですよね、と。でも、それが出来ていないところが多い。

当然、今回の例えにしている法律文言通り解釈するなら、「地域にお金を回すことも『水産動植物の増殖及び漁場の管理に要する費用の額に比して妥当なものであること。』の妥当な理由なので、20,000円の遊漁料にして持続できる運営費にさせてもらってもいいですよね?」という話も出来るはずなのですが、実際は都道府県行政に持っていっても、これまた運用で
・遊漁料は組合賦課金の1.5倍以内にしなければいけない
・遊漁料算定の参考式が入っているエクセルが、過去3年の実績を元に遊漁料を算出する仕組(この運用をするためには理想的にこれぐらいの遊漁者が来て金額この設定でないと回らない、という目的志向ではない)
という制御が入っていて、それを受ける漁協側も行政と専門的にやり取りしてきた「職員」でないことが多くあり、そのまま受け入れる、等。。

ここでのポイントは
・資源管理の上で持続可能な金額設定はあるはずで、出来ている漁協もある
・でも実際は、1949年制定時の法律設定と解釈を元にした行政運用と、漁協の体制で実現出来ないところの方が多く、資源管理主体の漁協が毎年消えていっている
ということです。

法律ロジックは積み上げで過去事例や判断重要なんですけど、積み上げてきたロジックの土台がそもそもすり替わっている状態なので、根本がズレているのに頑張ってロジック積み上げても意味なくないですか?0ベースでもう一度組みなおすしかないでしょ、と。
色々見て聞いて考える中で、確信しているわけです。
こういう根本のズレがいくつかあり、それに紐づいた積みあがった今の環境に合わない運用・制度が色々ある状態だと思っているので、治したいです。
治すと、もっと川釣り出来る場所増えて楽しめる人増えます。


…ということで、今までの記事で
1.内水面釣り人口の現状
2.なぜ内水面の釣り人口が減少しているのか
3.内水面遊漁の可能性は?
4.内水面制度の問題点
5.内水面漁業制度制定の背景
といった話を書いていきました。
この後の記事では、自分なりに考えた「内水面制度改革の基本骨子」「内水面制度の解決案」を書いていこうと思います。


ちなみに、この一連の記事の目的は、法、制度、法解釈、行政運用を変えることなので、是非是非

①スキ を押してもらって注目度を上げてもらう
②twitterなどでシェアしてもらう。有名な新聞、雑誌等で取り上げてもらえるようプッシュしてもらう、紹介してもらう。
③実際の法、制度、法解釈、行政運用をやっている担当者や議員に伝えてもらう、紹介してもらう

といったアクションも合わせてお願いします!!
Twitterアカウントはこちらです。 @cwptsurichange

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!