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内水面の釣り(川釣り)は何故落ち込んでいるのか?

前の記事で、内水面の釣りの現況について記載してみました。
この記事では、何故内水面の釣り(内水面漁協も合わせて)が落ち込んでいるのか、その原因考察をしたいと思います。

川をとりまく環境

まず、川の環境条件を見てみます。
(主にアユと渓流釣りに関して見て行きます。ワカサギ、ブラックバス、フナ、コイ、雑魚等は正直わからないところがあり別扱いとさせてもらいます)。
以下は、主に内水面漁協 が厳しいよ、という話のために書いた図です。

内水面を取り巻く環境変化

環境条件としては、ダム、落差工、堰堤等河川構造物が出来たことで、その河川のアユやウナギ、サケ、サクラマスやサツキマス、モズクガニ、ヨシノボリ等、海川両方を行き来する生物(通し回遊する生き物)がそこの環境では生きれなくなった。
魚道作られて上手く機能しているところもあるけど、メンテされず土砂で埋まって使えなかったり、同じ水の通りで深掘れして河床低下して段差が出来て登れなくなっている、とかも。

山林状況も50年前と違っており、スギやヒノキが戦後大規模に造林された後、林業が産業として成り立つのが難しい状況になり、間伐もされずにほったらかしになった山の木々が数多くあり。
こういうところでは、地面まで光が届かずむき出しの土に雨が降ることで土砂が流出しやすくなり川が濁りやすくなる(下草がきちんと生えていると土砂流出率が97%異なってくる研究結果あり)。普段は、50年生以上の木々が大量の水を吸って蒸発させることで、普段の河川水量が少なくなり河川生物の住める量が減っている。逆に温暖化によるゲリラ豪雨に見られる大雨にて、地面が下草なく固まっていることで多くの雨が吸収されずに川に流れて、川の増水量が多くなっている。

また、無節操な放流による外来種による既存生物の減少問題(ブラウントラウトやブラックバス等)、カワウが増えたことによる食害(1日500g以上食べるとのこと。20cmアユ1匹70gぐらいとすると、1話日7匹強)も大きい。(水質汚染は一番ひどい1970年代あたりから改善はされて、現状だと汚染による魚減少度合いはたいしてないと想定される。ただ汚れからその川に上ってきてくれない、といったことはあるかも)

さらに、都市化率は40%から70%ぐらいにはなっていて、日本1.2億人なら3600万人ぐらいはこの50年で移動していることに。

東京に出てそのまま結婚して子供生まれて、ということはよくあることだと思いますが、小さいころに近所で川釣りして遊ぶ、という経験自体をする機会がない人もそれだけ増えます。
さらに、最近は川に入ってはいけません、のような学校教育もあり(リスク0対応したい)、川で遊ぶ機会自体の減少もありそう。(水難事故による死者・行方不明者数は令和3年で212人、内子供は16人で、ほとんどが大人・高齢者の様子 https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/chiiki/R3_kaki_suinan.pdf。)

プラス、
・川釣りは難しいイメージを持っている人が多いのも確か。実際サビキでアジやサバ釣るより難しい。そしてそれ以上に魚自体がいないことも(これは別のところで取り上げます)
・遊漁券がいるのか、いないのか、よくわからない。
 (そういうルールが分かりやすいように、つりチケみたいな一つのサイトですべて情報が集約されていれば、迷わずルールに悩まず入りやすくなる、と思ってやっています)
といった内容で、一人で始めるにはハードルが高めでもあります。

そんなこんなで、釣りに行って釣れない経験をする、連れて行ってもらう人がいない、となると、ますます川釣りの人もいなくなり、釣り人やその関係者として地域に流入する人も少なくなっている、というのが実情。

そもそも環境条件自体悪化しているのは間違いないため、なかなかつらいところです。ただその状況で生きてきている私たちはその環境を前提に工夫していくしかないのです。

アユ釣りに関し

川釣りの中で、特にアユに関しては落ち込みが激しいです。

庄川沿岸漁業協同組合連合会によるアユ友釣り年券購入者年齢構成

①平均年齢が高い!
上記、富山県庄川沿岸漁業協同組合連合会のレポートですが、あゆ友釣りの年券購入者はベースだと、年齢平均が64.3歳!!
でも、各地漁協まわって話聞くのと現場見ると、実際のところこれぐらいの年齢層が平均値感覚に近いです。

②道具が高い!
アユ釣りには、友釣り、餌釣り、毛ばりを使用する「ドブ釣り」、引っかける「コロガシ釣り」、ルアー釣り(ルアーも友釣りタイプと、アユイング名称で攻めているキャスティングタイプあり)、がありますが、アユ釣り=友釣りのイメージが強いと思います。
しかし、友釣りは特に、竿が高い!
amazonで「鮎竿」で検索してもらうと、大体の竿値段が見れると思いますが、5万10万円単位がゴロゴロ出てきます。
鮎釣りHACKさんで、最低限必要なアユ釣り道具を最低値段で揃えた場合の試算出してくれていますが、最低5万円、です。
レジャー初心者が揃えるには、感覚値ですが5000円~1万円ぐらいからではないでしょうか。

③内水面漁協で天然遡上ないところでは、運営続けられないレベルの収支!

以下は、水産試験研究所の中村氏による、横軸増殖経費(=ほぼ魚の仕入れと同義。後、放流時の交通費や当日人件費等は含まれるが、職員人件費は含まれず)、縦軸が遊漁料+行使料(組合員から毎年支払ってもらっているお金)収入で見たときのプロット図。

アユと渓流魚の放流事業採算性

なかなか衝撃的なのですが、特に左の天然遡上無しのアユの場合、
 収入-仕入< 0
となっているところがほとんどです。
 収入 - 販売管理費 < 0
ではなく、です。

スーパーで、牛乳200円で仕入れて150円で売ってる、みたいな状態です。
普通の経営感覚では意味が分かりません。
でも、地域の共同体である組合が運営すると、あり得るのです。これに関しては別途触れていきますが、赤字を減らすうえでもアユの放流量を減らしているところは多いので、よりアユが釣れなくなっているのも確かです。(天然遡上あるところはまた別)

アユ釣りに関しては、私の考えは以下、です。

鮎釣り人口ピラミッドイメージ

つまり内水面漁協・販売店、釣具メーカー、釣り人、がみんなして友釣り以外認めてこなかったことで、アユの市場自体を縮小させていった、という形。経済学の「合成の誤謬」が発生している典型です。

販売店がおとりを販売したいので、内水面漁協は友釣りしか認めず。
釣具メーカーは釣り人が減った分の収益を高めるためにより高単価の竿を売る。
釣り人は友釣りこそ一番の釣りで、それ以外はしょぼい、ぐらいの意識。(
「そんな竿じゃ釣れんだろう」「この竿は〇〇万円」等)

個々は自分達の良いように動いて、結果合成されてアユの友釣り人口減少。
その間に漁協運営では放流が当たり前になってきて、赤字体質になるも改善されずそのまま出資金食いつぶし続け、解散。
(最近は、漁協自体が成り立たっていないところ多くなり、アユに関してのルアーNG圧力が減ってきたのを受けて某メーカーもアユイングで力入れ始めていると感じます)

渓流釣りに関して

渓流釣りは、餌釣り、ルアー、フライフィッシング、テンカラが大きく分かれますが、こちらはちょっと毛色が違います。
釣り人も漁協も、減っていったのは確かで、それは前述の内水面環境の悪化+メインのあまご、ヤマメ、イワナ等はアユのように大量に増えるタイプの魚ではないため、持ち帰り制限もなくどんどん釣ればすぐにいなくなって魚が釣れなくなる→釣れないところに来る人はいない、友人も連れてこれない、という状況が徐々に進展して釣り人が減り続けてきたのだと思います。

ただ、渓流釣りに関してはほぼ運営方法は固まっているので、後はその努力が出来る体制・制度運用が出来れば、多くの川で皆が釣れる場を作れて、地域にとっても役立つ資源になると考えています。これはまた別途。

まとめると

・河川改修、山林荒廃、外来種、カワウ、都市への人口集中と川釣り環境との距離、と魚がいなく、釣り人も減るような環境条件になり続けてきた
・渓流釣りは持ち帰り制限ないところも多く、魚がいなくなる環境が多く釣れないイメージついていた
・アユ釣りは、それに加えて高齢化、道具が高価、漁協大赤字、友釣り至上主義により漁協と釣り人両方縮小
という状況です。

次回は、そんなオワコン感感じる内水面の環境について、でもどうにか出来ると思ってます、という話を書いていきたいと思います。

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