叶萌

君の鴨

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君の鴨

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終演、52日目

ひこうき雲が 上空の右端から左端まで ずーっと繋がった時 地球は本当に球体なんだなと思った 愛は地球を救わない 1日目の朝ともつかない昼下がり アラーム2回流して昨晩の延長線 本当は大きくないキミの"大きな手"が輪郭を包み込んだ 安っぽいラブホみたいな飾り付けが 布団を捲る風に靡く 10日目の夜 不安をキスで塞いだ 愛が身を滅ぼすなら 長生きする気もないから 濡れた髪のまま抱きしめた 思えば思うほど、考えて。 わからなくなった 愛が地球を救えば

    • 望郷

      点滅する24時 私は私とお散歩デート すっからかんになった町で 1文字1文字綴る 仕事帰りにインスタライブをするラウンジ嬢 伊達眼鏡ごしに霞む数少ない街灯 夜が明けるまで家には帰らない、帰れない 死にたくならない夏なんて嫌い 夏は声も忘れた会えない誰かを思って それでもその誰かのいない幸せを確かに見出して どうしようもなくギラギラ焦燥感に駆られて 幸せすぎて今日死にたくなるものなのに 生ぬるい夜風がカラカラ、カラカラ、照葉樹の葉を騒がせる 君の座って

      • 思い出の住人になった君へ

        老舗バーの鼓膜に触れるベース音と 酔っ払ってご機嫌な女子大生と 疲れた顔した華金のリーマン達の談笑を 排気ガスと煙草の煙霧が包み込む 繁華街にしてはしょーもなすぎる。 同じように『そういう服』を着た 『そういう女の子』が 軒下で来ない誰かを待つ スマホを眺めて退屈そうにして 目の前を誰かが通っては全員が視線を追従する 「顔がいいからってなんでも許されると思うな」 まあ、結局許しちゃうんだけど。 相変わらずくっきりと鮮やかな面立ちで 彼は強く汚い怒号を

        • 夜道

          自分で踏み倒した『運命』の上で もう一度彼の横顔を見る お互い粗雑になればなるほど あの頃はいっぱいいっぱい気を使ってくれてたんだなあとか それが単純な立場からかそれともワンチャン…(?)とかとか。 考えても考えても『運命』は踏み倒されていた 惹かれたのも引いたのも父に似ているから 典型的なAB型のモテる男。やっぱり一緒にはいられない。 恐怖を煽る川の音も木の葉の音も神隠しの神社も 深淵の夜道を彩った 嘘着いたけど許してね ほんとは夜道も怖くない 3%

        終演、52日目

          別れの季節は死にたくなる 瞼をなぞる手のひらでラメの星空 会えなくなるなら春なんて死んじまえ 延命のオニオンスープは誤差の範疇 私の好きなバンドの君の曲を君が知っていたその事実だけで生きていく 髪を染めたのも新しい町に行くのも君じゃなくて私 見てるのも別れたくないのも君じゃなくて私 感傷的な別れにアンコールを求めてしまった。なんともダサい。 思いを吐露するどころか裾を掴むことさえできなかった 名前も知らないあの日の曲が霧中を漂う ごめんね 人は『声』から

          今日も、なんとか。🌎

          後ろの席から教室を見渡すのが好き 先生の話を聞いてる人、猫背になってノートを書き込む人、寝てる人、etc、授業中キョロキョロ周りの人を見てる奴は私だけだった。 見たくないモノも見える。 君は今日も「こっち」じゃなくて「あっち」 に行く。 昔からの女友達のあの子と話したいから? 君がしきりに名前を出す君のカノジョ(仮) の近くにいたいから? 今日も君に「バイバイ」って言われなかったから私は踵を返すことなく靴箱へ逃げる、逃げる、逃げる。 イヤホンをした。音量を上げた。 別に何

          今日も、なんとか。🌎

          白昼夢

          白昼夢の中で 知らない男に絞め殺された 身体は冷たくなっていくのに、 なぜか愛されてる気がしたんだ。 明日はデートなのに星座占いは どのサイト漁っても11位で 恋愛運は特にクソだった。 賞味期限1ヶ月の鮮やかな果実を 惜しいからという理由で3ヶ月かけて少しずつ齧る そろそろ消費期限も切れそうだ それでもこの果実が無い日々を 私は想像できないから これからもきっと腐った果実を 毎日少しずつ、少しずつ齧って きっと最後はお腹を壊すんだろう それでそのと

          白昼夢

          魔法は使わない 【散文詩】

          椎の木が燻って 彼女のピアノに傾聴すれば いつでも呪いに変る"モノ"を 鍵付きの宝箱にゲーセンの輝羅々々石と一緒に 大切に仕舞っている 営業戦略に託けて余命を忘れて 放課後 いつもの教室で。 可笑しな斜塔を造る 硬い皮の指 4割にも満たない拳 覆い打ちされた眼鏡 それすら受け止めるのに精一杯な脆弱な私を その手でぐちゃぐちゃにし壊して "其の"ために死ぬことは出来ないけれど たち続けることなら出来る 『最後の魔法さえ使わなければ ユートピアはあと3ヶ月は

          魔法は使わない 【散文詩】

          症候群 【散文詩】

          あの子が髪を下ろしたから 今日は気圧が高い気がした 好きな人におはようを言われなかったから 今日はお腹が痛い気がした 教室の扉を開けて3秒で決まるその日の運命は 毎朝乙女座が1位のサイトを見つけるまで星座占いを 漁る日常に仮託されているのかもしれない アンビバレンツのメリーゴーランドが 眩暈を起こして夢が終る 昨日までは好きだった彼は 今日の嫌いな人。 彼の中の彼を知ったら青い光は潰えるから 虚構を追いかけて満たされたふりをする日常 本当は彼よりあの子

          症候群 【散文詩】

          ハーバリウムの花へ 【散文詩】

          体温が0.3℃上がる 今も心臓が燃えて身体がウカウカして止まない 好きな漫画を読んでも頭がクラクラして 夢の中に傾倒する 恐れ続けた暗晦の帰り道も今夜だけは 私とギターの彼女のソロステージに消え入る 『苦み』を隠したぬるい『甘い』ハニーミルクに溺れて抜け出せない どうかこの幸せに未来の私を殺されませんように この輝かしく呪わしい日々をハーバリウムの花に どうか美しく色褪せることのないように

          ハーバリウムの花へ 【散文詩】

          地元 【散文詩】

          蜘蛛の巣張ったチャリで 大嫌いだった地元をぶっ飛ばす あのスーパーの前のこの電柱を 浴衣着て夏祭りの帰りに 今は黒歴史の好きだったアイツとの初デートの日に そういう関係になりそうでなれなかった男友達に 誕生日プレゼントを貰った日に 見つめていろんな感情抱いたのは覚えてるけど 今は全部坩堝の中に放り込んだ 顔はいいのに死ぬほど性格悪いメガネが 勧めてくれたあのバンドに今更嵌る それでもこの音楽は私のものだ この町を徘徊する度蘇るあの日買ったバックナンバーはもう捨てた

          地元 【散文詩】