思い出の住人になった君へ

老舗バーの鼓膜に触れるベース音と

酔っ払ってご機嫌な女子大生と

疲れた顔した華金のリーマン達の談笑を

排気ガスと煙草の煙霧が包み込む

繁華街にしてはしょーもなすぎる。

同じように『そういう服』を着た

『そういう女の子』が

軒下で来ない誰かを待つ

スマホを眺めて退屈そうにして

目の前を誰かが通っては全員が視線を追従する

「顔がいいからってなんでも許されると思うな」

まあ、結局許しちゃうんだけど。

相変わらずくっきりと鮮やかな面立ちで

彼は強く汚い怒号を吐き捨てる

「まあ、だから時間つぶしやけど」

本命に会うまでの暇つぶしに後輩を使うな

まあ、結局ついて行っちゃうんだけど。

また『そういう女の子』が

今度はターコイズブルーのドレスをはだけさせて

笑いながら夜道をよぎる

驚くほど綺麗にブリーチされた

如何にもクズ男な大学生が

人生をつまらなさそうに

夜道をよぎる

エメラルドのスパンコールを纏った

『そういう女の子』と

汚い髪色の男

それを冷たい目で1人蔑むOL

入口前に屯する汚いチンピラ

に、絡まれないように端の方に集まる大学生

セブンの駐車場はごった返していた

如何にもなスミが入った汚いチンピラ三人衆が

メビウス6箱買った女の子達と別れを告げる

レジのヘルメットの大学生は虚ろな目を泳がせた

「大変ですね」「お疲れ様です」

哀れみの言葉はかえって失礼になるだろう

「どっちでもいいよ」

の真理に逆らって進んでしまう

君の偉く整った唇からまた愚痴が零れるんだろうな

尖ってなんだかつよそうな自転車を

ママチャリの私に合わせて

それにしても遅すぎるくらいに

のらりくらりと車輪を回した君の

綺麗な輪郭を知らない町が彩っていた

それを今度は助手席から

相変わらず綺麗な輪郭を

今はもう慣れたこの町が彩るのを見たくて君を待つ

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