桜にふれたゆびで、
一円玉落としで、揺れながらしずんでゆく銀の、その姿を、ピンクグレープフルーツジュースを傾けるあなたのなかに見つけたのです
それはひだまりを大切に溶かすみたいにやわらかく甘い味ではなくて、切れかかったビデオみたいな、うすやみを纏った輝きだったのです
ゆれながら沈んでゆく今日の最後のひと息で火が消えてしまって、それからずっと走るのです
青い火がゆれる下で、私たちは生きています
近づくと微かに花のにおいがして、春だとわかります
桜にふれたゆびで、さわらないでください
ちいさな舟で、川面にうつるすべての影を従えて、わたしとあなたは帰ります
それだけです
24.0405
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