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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊿

ピカピカのバリアフリーオフィス

2012年
56歳、四捨五入すると60歳で
再びフルタイム勤務の始まりです。
 
通勤時間は渋滞もあり1時間弱はかかります。
朝3人分のお弁当を作り(長女は友人とルームシェア中)
会社の制服姿で出勤です
本社が都内にあるためでしょうか、胸元に大きなリボンが付いたオシャレな女子事務員の制服は56歳の私にはかなり抵抗があるデザインでしたが、
鏡に映った制服姿にちょっとうきうきしながら車に乗り込み出発です。
 
窓や壁は煙草で汚れ、書類が積み上げられた古机と、破れたソファーが置いてあり、足の踏みどころもなく、車椅子では中に入るだけでもとても大変だった事務所でしたが
数日後には、きれいに改装され、新品の机やPC、キャビネット、
車椅子で操作出来る高さのコピー機などが運び込まれ、
ピカピカのバリアフリーオフィスの誕生です。
 
職場のメンバーは
T課長、私の2歳年上、男性、PC苦手、事務苦手、親分肌
Iさん、女性事務員さんPC得意、
下請け会社のN主任とKさん(独身男性)でした。
みなさんなかなかの個性の持ち主です。
 
このメンバーで当時は6か所(後に8か所に増えました)の
サービスエリアとパーキングエリアのメンテナンスや
現場スタッフ(80~100名くらい)の管理をしていました。
 
テレビなどでよく登場する日本一のサービスエリアのバックヤードで
様々な仕事をさせていただき、毎日感心したり驚いたり、
特に現場のスタッフの皆さんの働きには尊敬しかありませんでした。
 
仕事は事務作業全般のほかに、
現場巡回などにも同行させていただいたり、
研修に参加させていただいたりしたのですが、
移動には大きなワゴン車が使われていました。
私を抱っこして乗せて、車椅子を積み込んでという手間がかかりますが、
いやな顔もせずワイワイと乗せてくださいましたので助かりました。
ありがたいことです。
 
翌年には正社員採用としていただき、
長女の海外研修費用や次女の専門学校の学費、そして
リフォーム工事をして増えてしまった住宅ローンの支払いなどに
本当に助かりました
こちらの会社を選ばせていただいた私の選択は大当たりでした。
 
2013年10月
ブー、ブー、ブー
仕事中に携帯のバイブ音が鳴りました。
見ると、海外研修中の長女からの着信です
「え?」
フィリピンにいるはずだけど
「もしもし、どうしたの?」
驚いて電話に出ると
「ママ、地震、すごい揺れてる」
「どうしよう」
「死んじゃうかもしれないから、電話代高くてもかけた」
「え、ちょっと待って、今どこにいるの」
セブ島のホテルの宿舎で寝ていたところ大きな地震が発生したようです
東日本大震災の映像が頭をよぎりました
津波だ
「逃げなさい!」
「高いところ!」
「絶対あきらめないで!」
「うん」
「あ、非常放送みたい、ちょっと待って」
と言ったきり電話が切れてしまいました
ツーツーツー
心臓がバクバクして、体中が震えてきました。

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