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ぼくとザ・ビートルズ#1

はじめてビートルズを聴いたのは小学校低学年の頃だった。クラスの山川くんに情報の授業中、コンピューター室で
『え!リンゴ・スター知らないの!
やばくない!それ!』
と言われた。
『え? なにそれ?おいしそう…』
『ちがうよ。 音楽の人だよ
今度来日するらしいよ!』
パソコンでリンゴ来日!のネットニュースを開きながら半ば興奮したような山川くん。
山川くんは僕が初めて会ったちいさなドラマーだ。小学生なのに、ドラムススクールでドラムスを習っていた。
『山川くんって外国の音楽とか好きなの?』
『うん。 家に沢山レコードがあってさ休みの日とかよくお父さんがかけてるんだよ。』
『へえー。』
その頃の僕といえば、当時めちゃくちゃ売れていて、街の至る所でかかっていたいきものがかりのニュートラルというアルバムを狂うように聴いていた。
『洋楽を聴くんだったら、ビートルズから聴いたほうが絶対良いって父さん言ってたんだ。カジタニも聴いてみたら?』
『たしかに。外国の歌も聴けたらカッコ良さそうだね。
アルバムはどれがいいの?』
『やっぱり最初はワンがいいと思うよ』
『ん?ナン?』
『ちがうよ。ワン。英語で1って意味』
『ああ、この写真のやつね』
山川くんのディスプレイには、赤い背景に黄色いペンキのようなもので
1と塗られた四角い写真が映し出されていた。

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