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彼女の居場所『2023.11.4』

今日は、元同僚が主催のイベントに向かった。
私がニートなのを知っていて、アルバイトをして欲しいと頼んでくれたのだ。

彼女のイベントの世界は、今までの私の視野には入っていないものだった。

なんて素敵な世界なんだろう。そう思った。


私はスタッフの方と受付をしていた。
精算したお客さんにドリンクチケットを渡す。本当にそれだけ。
イベントの参加経験も労働経験も無い私にとってはとても有難かった。

私の立ち位置からは少しだけステージが見えて、ステージに向かってペンライトを振っていたり、踊っていたりはしゃいでいたり、ご飯を食べたり飲み物を飲んだり。
基本的に全員が『好きなもの』の為に集まるイベントだった。

私を誘ってくれた元同僚は、ステージで満面の笑みを見せながら、彼女のパフォーマンスを待ち侘びていた人々を圧倒した。


貴方が生きる場所は、ここにあったんだね。
私は本当に嬉しかった。安心した。


私は彼女の後を追うように仕事を辞めた。

異動先にいた彼女。
彼女の最終出勤日が、私の初出勤と最終出勤日になった。
彼女がいないこの場所で、やっていく自信と意味と価値がないと思ったからだ。

「誰かに愚痴を話したり出来てたの?」
一か月前。この場所が地獄だと数分で理解した自分は、彼女と二人きりの時に聞いた。

「他の所で一緒に働いてる人、とか」
「ううん、一緒には働いてるけど愚痴は言わないかな。仕事仲間だから」
彼女はそう言っていたし、私には愚痴を一つも零さなかった。

この職場で辛く苦しい時、誰が声を掛けてくれたんだろう。
酷く心が傷んだ時、誰に助けを求められたんだろう。
私には半年一緒に働いた同期が四人もいたけど、彼女は同じ部署の同期が減っていく中、ストレスと疲労でいっぱいいっぱいだったのではないか。

自分が辞めたあとも、彼女の辞めた理由を考えていた。


今日。
彼女が初めて笑っていたのを見た。

一緒に働いたたった八時間の中でも、彼女の笑顔は確認出来た。
でもそれとは違う、本当の、心の底からの笑顔は、彼女の趣味と、仲間と、この会場にあった。

彼女を守っていたのはこの空間だったのだと気付かされた。


主催者の彼女に向けて、サプライズプレゼントがあった。彼女はとても喜んでたみたいだったが、受付にいた私は見れなかった。
後に動画を確認してみると、嬉しそうな彼女がそこにいた。
ああ、貴方の居場所はここで、あそこではなかったんだね。 そう思った。

彼女のおかげで、素晴らしい景色と、素晴らしい彼女とその仲間を見ることが出来た。新たな出会いも生まれた。
私の知らない世界はまだまだあるんだと感じた。


私の居場所はどこにあるんだろう。

きちんと見通しを立てて、仕事を辞めてからも自分の好きなものの為に頑張って、居場所を見つけた元同僚。
なんにも考えてない私。

私の今の居場所は、文章の中に隠されているかもしれない。

様々な文章を見て、学んで、文字に起こす。
そんな生活が私にとって居場所になりつつある。でももっと居心地良く、同じ居場所にいる人に必要とされるように動きたい。

自分の居場所は、自分で良い物にしなければいけない。
そう思わせてくれた元同僚と、仲間の皆さん。ありがとう。

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