世の中を変えるデザインのチカラと愚直な挑戦
イベントについて
CULUMUでは、社会課題の解決策から新たな事業機会を生み出すために、2ヶ月に1度のペースでイベントを開催しております。次回はオンラインイベントにて「デザインは超高齢社会をどこまで“解決”するのか?」と題し、12月7日(水)18:30より開催させて頂きます。こちらからご応募可能ですので、是非ご参加ください。
私にとってのインクルーシブデザインとは
田屋さんが考えるインクルーシブデザイン。それは「商品・サービス」と「自分(ユーザー・お客さま)」を考えることが従来的な思考であるとの前提に基づき、その輪を「みんな(従業員・組織・友人・家族)」や「社会」まで広げて考えていくことです。
それは「今まで目を向けていなかった部分にも目を向けながら、一緒に商品・サービスを開発していく共創型のデザイン」と言えます。
後ほど紹介するイーデザイン損保の自動車保険「&e(アンディー)」も、今回のイベントテーマであるインクルーシブデザインの好事例のひとつでありますが、田屋さん曰く「インクルーシブデザインが良いよね、という狙いから始まったわけではなく、今の世の中やお客さまのことを考慮した結果、自然とインクルーシブデザインの考え方になった」とのことです。
共創する自動車保険 「&e(アンディー)」の紹介
ところで、イーデザイン損保とは何をしている会社なのか?
皆様も一度は聞いたこともあるかもしれないイーデザイン損保は、東京海上グループのR&D(Research & Development)拠点として活動している損害保険会社です。その為、イーデザイン損保では東京海上グループのリソースを活用し、企業価値を高める為のみならず、本質的に世の中の為になる先進的な研究開発を「愚直」に行える会社です。
「自動車保険」というのは、どの企業も似通った商品内容になっており、商品のコモディティ化が顕著に見受けられます。
そこでイーデザイン損保では、お客さまが必要とする自動車保険とは何かをもう一度考え直し、「事故時の安心だけでなく、事故のない世界そのものを、お客さまと共創する」というミッションを掲げ、ビジョンである会社自身の行動指針を定め、新たに提供できる価値(バリュー)の創出を考えました。
イーデザイン損保は、このミッションに基づき、事故後の補償内容の充実を目指すだけでは無く、そもそも事故を起こらないようにする為の自動車保険「&e」を開発しました。
では、「&e」とはどのような商品なのでしょうか?
「&e」が従来型の自動車保険と異なる点は、「&e」にはお客さまの車に設置するIoTデバイスが存在する点です。このIoTデバイスが媒介となり、万一の事故の際にも衝撃を検知し、どんな場所でどのように事故に遭われたのかなどを先回りしてサポートします。お客さまの運転状況の把握、「&e」を契約のお客さまの運転情報を元に事故多発区域などの通知、事故時のスムーズな対応等を行います。そして、より安全な運転に対してはポイントがお客さまの元へ還元され、地域に貢献するものとなっています。「&e」はまさに、「事故のない世界を、お客さまと、地域社会と、共創する自動車保険」であると言えます。
私たちの挑戦
「&e」が出来たからと言って、お客さまが主体的に契約してくれるとは限りません。自動車保険は、自動車を所持している方なら必ず入ることになるものです。だからこそ、「事故時の対応が良ければいい。」「保険料が安ければいい。」という思いで商品を選ぶことが当然で、ソーシャルグッドな取り組みへ関心を抱かせることは非常に困難でした。
そこで、イーデザイン損保では、お客さま自身は、通常通り自動車保険に入っただけという思いでも、気が付いたらソーシャルグッドな取り組みに自身が参加していた、という世界の実現を目指して”愚直な挑戦”を行っています。
「個々人がソーシャルグッドな取り組みに関心を抱くきっかけとして『&e』は存在しており、個々人の関心の輪が広がることで、世界は本当の意味でインクルーシブになっていく」と考えています。
「気づいたら事故のない世界の実現に貢献してた!」というお客さまの感情を目指し、イーデザイン損保が行った”愚直な挑戦”は、実際にイメージしにくい世界観をそのまま提供することから始まりました。
具体的には、車に「&e」が搭載されたちょっと先の未来をキービジュアルとして魅力的に表現しました。
「&e」が一緒にいる世界。安心で安全、ちょっと未来で心地よい。
みんながお互いをケアしている、そんな世界を可視化。
「&e」に対して、お客さま自身がこのイラストを通して「なんとなく親しみやすそう」と言う感覚を抱くことで、その先にある未来を共創するきっかけとなることをイーデザイン損保は目指しています。
キービジュアルが体現していること
既存の消費者の視点では、下記の画像(左側の三角図)における一番上の「商品・サービス」しか見えていませんでした。「&e」を含むインクルーシブな商品においての消費者の視点は、下記の画像(右側の三角図)のように、既存の商品においては隠れてしまっていた「社会とのつながり」や「商品・サービスを支えるつながり」が見え、それらを理解した上で、「商品・サービス」を評価していく視点になっています。これは、イーデザイン損保が今後の世の中において目指している「新しい消費者行動のカタチ」でもあると言えます。
学びと失敗
「&e」は上述した通りの方法で、お客さまに対しての提案を行ってきましたが、田屋さん曰く、「これだけでは、全然ダメだった。」とのことです。
何がダメだったのか?
それは「&e」を運営しているイーデザイン損保には、田屋さんが所属するCX推進部や、万一の事故時のサポートを行う部署、カスタマーサポートなど、さまざまな業態の部署が存在しており、既存の自動車保険とは全く異なった「&e」に対する社内理解が追いついていませんでした。お客さまをインクルードしていく中で、無意識のうちに、社内の人員をインクルード出来ていなかったのです。
そのことが起因し、社内では、
「アプリとのペアリングができない」
「&eではなく、既存の保険をお勧めしたい」
「良いところが無くて嫌だ」
・・・など厳しい意見が飛び交う事態に発展してしまいました。
この事態にいち早く気付かれた田屋さんは、「お客さまと共創をする為には、まず社内での共創が為されている必要がある」と考えました。今まではお客さまに対して行っていた”愚直な挑戦”から、社内の人員も含めた”愚直な挑戦”が始まりました。
社内における共創の取り組み
「お客さまにとって新しい自動車保険は、社員にとっても新しい自動車保険であり、すぐに理解出来るものではありません。そういった前提に立って、まずは社員一人一人の理解を一緒に深め、『&e』をより良いものへ共創していくことが非常に重要であり、それが結果としてお客さまへも広がる」と田屋さんは言います。
そしてこの失敗と気付きをもとに、「CX推進部」の中に、「CXM(CX Management)」と言う部署を立ち上げました。この部署では、お客さまの声を集め分析することや、デザイン思考に基づくCXリサーチ、そこから得た情報を元に、お客さまがどのような行動をしていて、何処でどのような感情を持っているのか。どんな期待やつまづきがあるのか、実際のお客さまの行動や感情を軸に、社内で共有しながら動いています。
「社内で『&e』の理解を深めるためのワークショップを行い、しっかりと一人一人と向き合い説明をしていく、この”愚直さ”こそが大切である」と田屋さんは言います。
まとめ「People Always Matters」
最後に田屋さんは、「今までのさまざまな経験を通して、共創やインクルーシブな世界は『人』が全ての基軸にある」と言います。「だからこそ、その『人』を動かすためには、社内・社外に関わらず、全ての人に熱意を持って接していく事が非常に重要であり、その過程を飛ばすことは不可能である」と。
田屋さんをはじめイーデザイン損保では、どんな「人」も置き去りにしない、インクルーシブな活動や研究を今日も続けています。
次回イベントのご招待
「企業課題と社会課題の解決を共に目指すインクルーシブデザインとは」
イベントレポートは今回で終了になります。
龔[きょう]さん、田屋さん、CULUMUの第1弾イベントにご登壇いただきありがとうございました!
インクルーシブデザインスタジオCULUMUでは、社会課題の解決策から新たな事業機会を生み出すために、2ヶ月に1度のペースでイベントを開催しております。次回はオンラインイベントにて「デザインは超高齢社会をどこまで“解決”するのか?」と題し、12月7日(水)18:30より開催させて頂きます。こちらからご応募可能ですので、是非ご参加ください。
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