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「いちばん訪れたい国、日本」の食風景



ここへ来て、マスク着用や海外渡航の制限もぐんと緩んできた、6月。
早いものです。

嬉しいながら、拭いきれない恐さも些か残りつつ、
ずっと会いたかった人との再会を果たしに、
ずっと行きたかった場所へ足を運びに。
この夏は、
そんな我慢を乗り越えた旅に向かう人たちで、
各地、賑わいを取り戻すのでしょう。

実際にすぐに腰を上げるわけではなくても、
「(なんの制限もなくどこでも行けるとしたら)最初にどこへ行きたい?」
近頃、あちこちでそんなことが頻繁に話題にのぼるようになりました。

世界中できっと、皆がお互いに遠い外国へ思いを馳せているのかも…と思いながら、
ニュースを見るともなく見ていたら、
まさに「今後の他国の旅事情」の特集に。

そこでの調査によれば、
「最も行きたい国は、日本。」という方が一番多かったそうです。
そんなニーズを無視できないことから、
今回の入国規制緩和はギリギリのタイミングだったのかもしれません。

もちろん歴史的建造物や、日本らしい四季の自然、芸術、文化に触れることも欠かせない醍醐味ですが、
旅する上でそれと同じくらい重要なのは、食ではないでしょうか。
以前JETROがまとめた調査でも、外国人の好きな料理の第1位が日本料理だった、というのを耳にしたことがありました。

この国に住んでいる立場で慣れている目から見ても、日本の食文化はかなり独特な多様性に満ちていると映りますから、
旅人の皆さんの驚きや面白味は、きっとその何倍も。
期待も大きいのだと思います。

春の八寸

例えばミシュランなどのガイドブックを開いてみれば、和食だけでも、割烹に寿司、天ぷら、蕎麦と多種多様で、各地方ならではのさまざまな名物の味わいや匠の技が楽しめるほか、
レベルの高いイタリアン、フレンチ、スパニッシュ、中華、韓国、インドなどの世界の料理も。
さらに、例えば牛肉をとってみれば、しゃぶしゃぶ、ステーキ、すき焼き、牛タン、鉄板焼き、ハンバーグなど、実に細分化されています。
旅行者にとっては、毎回選ぶのに困るほどの多彩さでしょう。

浅田屋のすき焼き

また、ラーメンやナポリタン、オムライスやプリンアラモードなど、他国の料理を日本固有のものに融合し進化させたものまで、しっかり定着しています。

みかど食堂のプリンアラモード

そのアレンジのうまさ、良いものをなんでも取り入れる柔軟さ、細長い国土ゆえの好みの多様さは、やはり世界でも屈指と言えるのではないでしょうか。

ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)

ハラルやヴィーガンなどの料理を見ればわかるように、宗教や主義、嗜好により、限られた食材と調理法で、日々同じようなものを食べ続ける人たちが数多くいらっしゃいます。
また、毎日毎日、食卓に伝統的な料理しか並ばない国や地域も少なくありません。
東京でのオリンピック後、フードダイバーシティ(食の多様化)が急速に進みましたが、
そうした特別な食生活を続ける人たちとも共にテーブルを囲んで、お互いにストレスなく満腹になれる場も、街中に格段に増えてきました。

他方、こう言った外食にとどまらず、
各国のさまざまな料理が一般家庭の食卓にまで深く浸透していて、
和食のお惣菜と同じようにパスタや中華、カレー、韓国風焼肉、シチューにグラタン…と、
ここまで日常的にあれこれ作られている、と言うのは、案外珍しい例かもしれません。
海外で市場やマルシェ、スーパーを覗くたび、
日本の家庭料理の、ある種の柔軟性のようなものに驚かされるのです。

感染や変異株を恐れ、海外とも容易に繋がれなくなったこの数年。
もちろん辛いことや嫌な思いもありましたが、
これまでなんとなく他国に比べて保守的だったり、消極的だったり、日本人の気質をネガティブに感じていたことが多かった以前に比べ、
実は他の国より良い面もある、と気づく場面が、
なぜか増えたと感じています。

他国で多発する争いやトラブルの映像を見るたび
身の回りを振り返ってみれば、
お互いを思い遣る心があるから、お願いレベルでもマスクは浸透しているし、
略奪、混乱など起きようもなく、粛々と並んでいる人々ばかり。
これほど穏やかな人たちが多い国は、実は稀有だったのですね。

また、前述したように、
さまざまな良い点を取り入れて自分のものにアレンジする柔軟性、器用で巧みな職人技を大切に思う心根も。
殊に大切にしたいところです。

少し話がそれますが、
日本人の食の多様性は、楽しみだけでなく、生活習慣病の予防にもつながっていると確信しています。

特定の食材を用いた料理を繰り返し摂るより、さまざまな食材や調理法による種類豊富な料理を食べることの方が良いのは自明。
こうした食の多様さが、もしかしたら日本人の健康や、長寿にさえも影響を与えているのではないでしょうか。
各国で起きている日本食ブームも、根底には健康的なイメージがあるからこそ、ここまで広く伝播したのだと思います。

感染の再拡大は怖いけれど、
こういう日本を好きだと思う人が増え、
美味しいものをたくさん味わって帰ってもらえるのは、掛け値無しに嬉しいことです。
そしてあの禍いがあったからこそ、
お互いに行き来できることはさらに大きな幸せ、と気づくことができました。

緩和されてもなかなかマスクが外せない私たち。
おっかなびっくりで消極的だと言われても、
日本人らしいゆっくりしたペースで
ぼちぼちもとの暮らしに近づいていけたらいいのでは、と思っています。


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