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【閲覧注意】イギリスでトランスジェンダーの16歳少女が殺害される

烏丸百九です。タイトル通りですが、悲惨なニュースが飛び込んできたので、緊急的に更新いたします。

この記事には、致命的な暴力行為およびヘイトスピーチの描写が含まれています。当事者でない方々も、閲覧には十分注意してください。

土曜日、チェシャー州カルチェスのリニア・パークで、複数の刺し傷を負ったブリアナ・ゲイの遺体が一般市民によって発見されました。
午後3時頃に救急隊が呼ばれ、その場で死亡が確認されました。
地元の警察は攻撃の動機を追跡しようとしています。現時点では、彼らはブリアナの死を憎悪犯罪(ヘイトクライム)として扱っていません。

Brianna Ghey: Two teens arrested on suspicion of murdering trans girl in Warrington park

バーチウッド出身のブリアナはトランスジェンダーで、数か月間女の子として生活していた。チェシャー警察は、殺害が「ヘイトクライム」であることを示唆する証拠はないと述べた。
日曜日の夜のチェシャー警察の声明によると、地元の15歳の少年と少女が殺人に関連して逮捕され、警察に拘留されている。

Two teenagers arrested on suspicion of fatally stabbing trans girl, 16

「ヘイトクライム」を同定する証拠は今のところ見つかっていませんが、イギリスの大手メディアの多くは、被害者がトランスジェンダーであることを華麗にスルーする一方、恐ろしい保守派メディアである「デイリー・メール」紙はゲイさんを「少年」と書き、それを受けて「The Times」紙は彼女のデッドネームを公開しました

両紙がいかにロクでもないメディアかは以前のnoteで詳しく書いたので、↓よければご参照ください。

流石に読者の抗議が殺到したためか、現在は穏当な修正を加えたようですが、イギリスの各種メディアがこの手のヘイトクライムの発生を煽ってきたことを、図らずも自ら証明してしまったように思います。

16歳のトランス女性、ブリアナがウォリントンで殺害されました。
警察は、この「標的型攻撃」が憎悪に起因するものであるという証拠は今のところないとしながらも、「オープンマインド」を持ち続けていると述べています。彼らは憎悪犯罪の可能性を除外していません。
2人の容疑者が逮捕され、どちらも 15 歳でした。トランスジェンダーの人がトランスフォビア以外の理由で苦しむ可能性はありますが、 reddit にいる何人かのブリアナと関係があった人々は、彼女はトランスフォビアによるいじめに苦しんだと主張しています。

「What The Trans!? 🐀」による連続ツイート

この事件でおそらく重要なことは、犯人が十代の(たぶんシスジェンダーの)少年少女だったという点だと思います。言うまでもなく、社会や大人から最も影響を受けやすい時期の人々です。

私はこの手の悲惨な少年犯罪を見る度、自分の子ども時代に世間を大いに騒がせた酒鬼薔薇聖斗の事件を思い出します。彼の精神鑑定の結果には、以下の印象深い一節があります。

この事件は長期的に継続された多様で漸増的に重症化する非行の最終的到達点である。

神戸連続児童殺傷事件 - Wikipedia

いくらJ.K.ローリングのような愚かな人物が憎悪を煽ったところで、人々はいきなりトランスジェンダーの人々を殺し始めることはないでしょう。
しかし、陰口的なヘイトスピーチはやがて心理的な嫌がらせとなり、直接的な暴力となり、最終的には殺人や虐殺に至ります。これは人類史上で何度も繰り返されてきた「エスカレート」の典型的な形態です。

―ヘイトスピーチが規制されずに蔓延していくと、どのような事態が引き起こされてしまうのでしょうか。

先に述べたように、ヘイトスピーチは言動そのものの暴力性とともに、より深刻な差別を誘引するという害悪があります。下記の図は「憎悪のピラミッド」という図で、ナチスのユダヤ人迫害がホロコーストに至った歴史や、ルワンダでの虐殺など、過去の様々な事例を分析して作成されたものです。
この図は先入観や偏見によるレイシズムが放置されることで、差別が日常化・固定化し激しさを増していき、最終的にはジェノサイドに至るということを表現しています。日本の現状を見てみると、すでに上から2段目の「暴力行為」が起きている状況です。

ヘイトクライムに抗う ―憎悪のピラミッドを積み重ねないために―

先日の秘書官差別発言を受けてなお、自民党は相も変わらず「差別禁止は行き過ぎている」などと寝言を言っていますが、「行き過ぎている」のはどう考えても少数派へのヘイトの方であって、これに対抗するにはまず差別を禁止するのが「最初の一歩」です。

これは道徳や感情の問題ではなく、社会に憎悪が蔓延し、これ以上の悲劇的な犯罪や、救済されない暴力が起きることを防ぐ「法的権利による秩序の創造」なのです。

ブリアナ・ゲイさんにどうか安らぎがあらんことを願います。

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