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「過去」と「未来」をつなぐ建築

建築には、「過去」と「未来」をつなぐ役目があります。

過去ばかり見ていても、思想や問題解決が進展しない。
未来ばかり見ていても、人々の心は置き去りになってしまう。
様々なコンテクストを読み解き、どう未来につなげていくのか。

そのようなことを日々考えながら、設計を進めています。

7月8日(金)日本列島に衝撃が走った安倍晋三元首相への銃撃事件。
そして、ロシアのウクライナ侵攻、アメリカの銃乱射事件など、今、全世界では何が起こっているのかと未だに信じられません。

自身が平和ボケしていたなと反省すると共に、未熟なひとりの人間として、または設計者として、今の自分には何が出来るのだろうかと考えています。

今から12年前(2010年9月)に大学院での建築研究の一環として、ドイツ・ベルリンを訪れたことがありましたが、ある一つの建築に感動し、泣いた経験がありました。

その名は「ノイエ・ヴァッへ(Neue Wache)」

首都ベルリンの目抜き通りのウンター・デン・リンデン街に建てられた石造建築で、「新衛兵所」や「新哨舎」と訳される建築です。

1816年にプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世が建築家カール・フリードリッヒ・シンケルに設計させ、1993年以降はドイツ連邦政府の戦没者に対する中央追悼施設として「国民哀悼の日」の式典会場にもなっています。

新古典主義の重みのある石造建築の内部空間中央には、彫刻家ケーテー・コルヴィッツが第一次世界大戦で死んだ息子ペーターをイメージして作った「ピエタ(死んだ息子を抱きかかえる母親)1937年」の像が置かれており、その上部は、パンテオンのような円形の天窓が開けられ、光や雨、風が入ってくる作りで、舞台のスポットライトのようにピエタ像を照らしています。

映画のワンシーンを切り取ったような光景と、戦争で人が死ぬことの悲惨さが心に飛び込んできて、感動と悲しさで自然と涙が流れました。

この建築を見たときに、これが建築なんだ。
建築で過去を未来につなげるとはこういう事なんだと理解できました。

人々が悲しまない世の中になってほしい。
まずは、自分にできることからやってみようと思います。

外観正面
空間中央に位置する「ピエタ像」
全世界の言語で書かれた追悼の言葉(日本語)



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