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「エモい」って|「ボクたちはみんな大人になれなかった」燃え殻

 大学の授業で「エモさの演出」みたいなテーマでこの本から2ページくらい使われていた。どこがどう演出されているのか、なんとなく覚えているけどうまく言えない。「知ってる」と「できる」の違いはここらへんだと思う。ちゃんと聞いておけばよかった。でも、居酒屋でその授業の担当の先生に聞いた話は、忘れないと思う。あと、あの店はハイボールがうまかった。しかし、今の世の中、気軽に居酒屋に行けるような状態ではなくなってしまった。

 雑誌に文通のコーナーがあったり、携帯電話がない時代の待ち合わせのハラハラした感じだったりが、ぼくらよりも上の世代からしたら「エモい」のかもしれない。今だと、なんだろう、マスクとかかな、いつになるかわからないけれど、将来、今のこのコロナ禍を知らない人と話すことがあった時は、来店時にマスクを着用していないと飲食店ですら入店を断られる可能性があったこととか、「自粛」という言葉がなんだか「お家でじっとしてること」みたいな意味に変わっちゃったこととかは教えてあげたいと思う。

でも、「エモい」ってそういう大きな、わかりやすい話じゃないのかもしれない。もっと小さな、言ってしまえばほとんどの人に共感してもらえないことの方が「エモい」のかもしれない。好きなラーメン屋の裏を歩いたらいいにおいがしただとか、学校に向かう途中意味もなく狭い道に入った時に見つけたものとか、あそこの店の酒はうまかったみたいな、「何言ってんだこいつ」って思われるくらいのほうが、後々エモかったりすると思う。だから「これ、エモくない?」とか、エモさを誰かと共有することは難しいんじゃないかと思う。そして、人の「エモい」感情を、「それ、エモくない」と否定するのも難しいだろう。

 「努力すれば夢って叶うのかな?」と聞かれて「その質問は、ナポリタンを作れるか?と一緒だと思う」なんてかっこつけた、それでいて意味の通っているような返しをしてしまう「ボク」を見て、こういう友達がほしいなと思った。この本はずっと主人公目線で話が進んで行くのだけれど、過去を思い返して、ちょっとかっこつけたまとめ方をしてしまうことは誰でもあると思うので、自分に重ねたりなんかしてたまに笑ってしまった。

 ちなみに、ぼくは寝れない夜は、YouTubeでお笑いを流しながら自分のSNSを見返して、ちょっとかっこつけた自分を笑って寝る。

 帯を見ると、いろんな人の推薦が書いてある。糸井重里の言う通り、たしかにこの本はリズム&ブルースだ。今年、映画化の話があるようだ。映像にしても面白いと思うけど、脳内で再生されているのがちょうどいいくらいかもしれない。しかし映画が配信開始したら、見てみたい。

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