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天然漆と合成漆、その未来

天然漆(本漆)の需要は石油によって戦後大幅に減少しましたが、さらに高価な国産漆から安価な中国産漆への移行が97%以上を中国産に頼る外国依存の産業構造へとなったいろいろな変遷は目を覆いたくなります。
神社仏閣などの歴史的建造物の修復・保存に漆は必要不可欠なものですが・・
日本の天然漆を使って作られたものは、勿論ですが日本の天然漆を使って修復しなければなりません。でもこの修復・保存のために必要な漆だけをみても2t/年必要ですが、今国産天然漆の供給量は半分程度しかないのが実態です。
江戸時代から中国・東南アジアなど広く漆を輸入していたし、それらを国産天然漆とブレンドして使うなどの歴史はあるものの・・現状は過度な中国依存です。
とほほな現実・・
調べてみると今のマーケットにあるほとんどは合成漆器のようです。
塗装に天然漆だけを使ったものを漆器と呼びますが、天然漆以外を使えばそれは“合成漆器”です。ほとんどの人たちはこの合成漆器を使っているというのが実態です、これまたすごく淋しいものですね。漆器はあくまでも漆器であって、合成漆器とは違いますから・・
(合成漆は漆に合成樹脂が混ぜられているもので天然漆のように使い込んでも風合いさえ変わりません。(伝統工芸品は天然漆ですが昨今、必ずしもそうではない可能性が高いです。)このほかにカシュー漆やウレタン漆がありますが、この二つは漆は全く使われていません。)

さて、ならば漆の木を増やせば良いわけですが、今植えたとして収穫は10-15年先の話になり、またこれが面白いのですが、1本の木から数ヶ月を掛けて200ccという僅かしか採取できず・・しかも!1年限りで伐採という超稀少なもの。
木は苗から植えるとして、はて漆は誰でも採取できるのか?
いえいえ、漆掻き職人という職人さんがいますが、高齢化もありで全国で50人ほどしかいません・・その職人さんたちが使う道具を作っている職人さんは1人・・
絶望的な状況。(今の技術の全てを記述したり全てを記録して保管するのが急務かもしれないと個人的には思いますが・・やってないだろうなあ)

奈良井宿にある古道具店にて見つけた、店主曰く本漆・日本の職人による漆器だとのこと・・

如何に生活を蔑ろにし、大量生産・消費を我々またその前の世代、その前の世代が謳歌してきたのかがわかります。
誰もそこに耳を傾け、修復しようとはしなかったが故に、悲惨な状況になるまで放置されたわけですが、これから我々でこのふざけた連鎖は終わりにしましょうと言った時に、それができるのだろうかという不安。
こういうことに賛同される豊かな資金力のある方がいたら静かにお声がけを頂きたいと切に願います。
残したい、ではなく、これらはあらゆる策を講じて残さねばならないわけです。
でないと、我々日本人のあらゆるものが破壊され尽くし、先の時代に何も残らないだけでなく、それを知る術も、もう一度再興しましょうさえ叶わぬ夢になってしまうのは避けねばなりません・・

どうぞご連絡をお待ちしております。


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