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花火を見ているときの大人

「明け方の若者たち」。何気なく読んだけど、心に残るシーンが多い作品でした。気持ちの描き方が自然で共感できた。

大人が花火を見るとき子どもほどはしゃがないのは、「いつか誰かと見た花火を、静かに思い出してるからなんだとさ」というところは素敵だなと思いました。

不本意な部署に配属されて、入社から4年経って成長する感じとか。23、4歳の頃の青春とか…自分と重ねて懐かしい気持ちになりました。また、風俗嬢とのシーンも哀しみが押し寄せてきた。「ここが悲しみの底な気がした。クリスマスの道玄坂。本名も知らない女性の腕の中で、全裸の僕が無様に泣いていた。」

わたしの恋も似ていたのだ。相手は既婚者ではなかったけど、好き過ぎて、どうしようもなかった。しっかりはっきり振られたわけではないけど、つなぎとめられないと感じたときは泣いた。たぶん人が一生で泣く量をこの失恋のときに使い果たしたと思う。だからか、長いこと泣いていない。

「あの頃はよかった」とか言い出すオトナにはなりたくないと「僕」は言っていた。わたしはもう前から大人だけど、そう思いながら生きている。「僕」が新しい恋をしたらいいな、と読み終えたあと思った。

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