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シラサギの飛び立つとき-終|小説
ひとしきり滑ったあと曾祖母の家に帰って、夕食の後は疲れてすぐに眠ってしまった。目が覚めたのは朝の四時だ。今日ここを発つのに、荷造りがまだ終わっていない。慌てて広げた荷物を片し始める。ひと段落したところでまた寝ようとベッドに潜るが、なかなか寝付けない。仕方がないので居間に下りて暖かい物でも飲もうと思い立つ。
キッチンに灯りがついている。よく見ると曾祖母が料理をしていた。こんな朝早くからいつも朝ご
シラサギの飛び立つとき-2|小説
そうして気づけば三日が過ぎた。残すところあと三日。半分を超えたが、漫画はほとんど読み終わってしまった。この家には娯楽が全くなかった。本当に、テレビとモノポリーくらいしかない。イリヤに普段は何をして過ごしているのと尋ねると、他の友人の中にはゲームやコミックをたくさん持ってる子もいるけど、だいたい皆外でお酒を飲んで遊ぶから困らないと言われた。たしかにイリヤは初日の晩は私たちのために夕食を共にしてくれ
もっとみるシラサギの飛び立つとき-1|小説
この物語にはロシアが登場しますが、私はロシアの文化にのみ憧憬を抱くのであり、戦争によって苦しんでいる人々への救済を願っています。
冷たい空気が肺を刺した。ここに来たのは三年振りだろうか。前は高校二年生の冬休みに来たのだった。ちょうどスケートをやめたばかりで、せっかくこの国に来るならまだ現役の頃が良かったと思ったのだ。
暖房の効かない父の車に乗ってぼうっと外を眺めると、そこには一面、白、白、白
考えることは泳ぐこと|エッセイ
片づけをしていたら、高校生のときに使っていたメモ帳を見つけた。そのなかに、わりと芯を食った文章があったので、保存用に書き起こしてみる。
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私は演劇部に入っていて、今はもう引退してしまったけど、あれはたぶん夏になったばかりの話だと思う。
そのとき、部員である私と他高校生4人とコーチ2人がいた。私たちは文化祭公演で銀河鉄道の夜というとても難しい作品を演じるにあたって、練習をしてはいた
詩は感情の伝達のために存在する?|エッセイ
アンドロイドの彼氏がほしいと本気で願うときがある。最初にこの願望を抱いたのは、前の彼氏と別れたときだ。自分から振ったくせに、この世の終わりみたく落ち込んで、ゲームや本を楽しめなくなって、ただ天井を見つめるだけの不規則な生活になった。
深夜、コンビニから酒を買ってきた帰りに、「私の気持ちや願望をなんでも受け入れてくれて、容姿端麗な、私のためだけに作られたアンドロイド彼氏がいればいいのに」と本気で
「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」|エッセイ
卯月コウの配信を見た。具体的には、『集まれ!卯月コウの視聴者』をアーカイブで視聴した。配信日の2月2日はどうやら卯月コウの誕生日らしく、内容は視聴者による卯月コウ宛てのクソデカ感情お便り配信だった。その中で、「何者にもなれなかった美大生」からのお便りが来ていて、私は、ああ、こういうの、と思いながら見ていた。以下、該当のお便りから一部引用する。
率直に、この卯月コウの発言は名言だと感じた。私はここ