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亀井健自然に帰る日記

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#小説

私たちは植物のように愛し合った。

このタイトルで新作の戯曲を書きます。
上演は未定。
タイミングが合えば戯曲賞に送ろうかな。
ここで、メモ書きで、小説みたいなメモ書きをしていこうと思います。
まずは、文章で。
なんかいいロケーションがあれば、メモ写真みたいなこともしたいな。 
ひとまず、戯曲にするまで、ちょいちょい書いてみます。

私たちは植物のように愛し合った。

真っ直ぐの道の先は、二股で、真ん中から割れて二つの道になってて、

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優しい乱暴 原案小説その6 完結

繁華街のバス停

バスを待つ八十五歳の女の子を由利が見たのはどれくらい前だっただろうか。たった数ヶ月前の事だった気がする。
「水野、バス停はまだかな」
どれくらい時が過ぎているのか。
由利は風景に混乱している。
それはたぶん女子高生に戻った水野も同じで、突然老人になった蟹江も同じ様に混乱しているのだと由利は考えていた。
その由利はカツラをはぎ取られ、中途半端な女装姿で頭に下りますのボタンをつけて

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優しい乱暴 原案小説その5

殺し屋は阿呆面が地面に向かって垂れた。突然光の中に現れたのは蟹江だった。蟹江は殺し屋の垂れる顔を両手ですくうつもりだったらしく、差し伸べた手を見ながら「あぶねぇあぶねぇ」と小声でおどけている。水野ははち切れるくらいの笑顔をしたのだが、それが蟹江のおどけのせいだったのか、老婆を救うという発見のせいだったのか、由利はどうでも良かったのに聞く。
「どうして笑う?」
水野は答えるのが面倒だから笑い続けた。

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優しい乱暴 原案小説その4

ひどい二日酔いで、今日も鏑木エリエリレマサバクタニ八十七歳の家です。そこで殺し屋と合う約束です。蟹江の家の時計が壊れているので約束を守れるのか不安だったのです。尋ねてくるのは殺し屋ですけどね、待つ方もしっかりと約束の時間に待っていたいものですから。鏑木エリは突然の訪問に寝間着から先日売りつけられたオレンジのワンピースに着替えて無理に三人をもてなしている。まるで似合っていないのだから売りつけられたの

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