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小雨
2022年5月25日 18:58
小説家の彼はいつも、猫の写真を撮り溜めている。1日の終わりにその写真を披露してくれる。付き合ってみて分かったのだが恋愛小説家の恋愛は案外ロマンチックというよりは現実的で甘い愛の台詞なんて滅多に口にしない。銀行員の元彼に散財癖があったように料理人の元彼が家では一切包丁を握らなかったように男性の職業なんてものはただの“職業”でありその人のプライベートでの人間性を示す重要要素に
2022年4月5日 16:58
「ねえ、こっち向いて」「ん、写真?」「うん、思い出に撮ったげる」「よっしゃ、カッコよく撮ってな」スマホに向かってクシャっと笑う目尻のしわがすごく好き。ふざけて鼻の穴を膨らますバカみたいな顔も好き。ポーズに困ったらいつも突き出すごつごつした親指も好き。「ねぇ、こっち向いて」レンズ越しなら素直に言えるけど面と向かうと何も言えなくなる。あなたを見つめる口実がレンズ越しにし
2022年4月16日 16:36
彼女の涙は右目を流れる。春の桜が舞ったとき夏の海が青く煌めいたとき秋の枯葉をブーツで踏みしめたとき冬の雪が手のひらに触れたとき決まって彼女は涙を右目に浮かべた。そんな彼女の横顔があまりに綺麗でそれを眺められる右隣の特等席を誰にも譲りたくないと僕は思った。「ねぇ、知ってた?涙の種類は流れる目によって意味が違うんだって」「そうなの?知らなかった」「右目が嬉しい涙、左目は悲