技能実習から育成就労は何が変わる?最終報告書の中身とは。(自分用メモ)
技能実習制度が大きく変わります。最終報告書が出て、その内容をメモとしてまとめています。自分の意見も挟んでいますので、あくまでも個人的メモ程度にご覧ください。
なお、記事内の在留資格や"A1,A2,B1"については、記事最後の補足の項目を参照下さい。
有識者会議
技能実習と特定技能の有識者会議は令和4年11月に発足し、全16回開催され、令和5年11月30日に最終報告書が出ました。
複雑ですが、3つのビジョン、4つの方向性、10の提言、から構成されています。
最終報告書
見直しの3つのビジョン
・人権保護:労働者の権利性を高める
・キャリアアップ:活躍ができ、分かりやすい仕組みを作る
・安全安心・共生社会:安全に暮らせ、共生社会を実現する
見直しの4つの方向性
・人材確保と人材育成を目的:実態に即した見直し
・技能・知識を段階的に向上、キャリアパスの明確化、特定技能への円滑移行:単純労働からの脱却?
・本人の意思による転籍、管理団体等の要件厳格化:現行は本人の意思による転籍は不可
・日本語能力を段階的に向上、共生社会の実現:長期的な日本での生活を意識
現制度名:技能実習制度
新制度名:育成就労制度(仮称)
期間:3年 (現行は最長5年)
10の提言
提言①:位置づけ
・目的:人材の確保と育成 (現行は国際貢献)
・3年間で特定技能1号の水準に育成
・特定技能は適正化を図り存続
・家族滞在は不可 (現行も不可)
提言②:対象分野や育成機能
・育成就労と特定技能の就労分野を統一 (現行は必ずしも一致しない、下図参照)
・一年経過時と育成終了時までに試験を義務づけ
一年経過時:技能検定基礎級等+日本語能力A1(N5)相当以上
育成終了時:技能検定3級または特定技能1号評価試験+日本語能力A2(N4)相当以上
提言③:受入数
・分野ごとに上限数を設定(日本人の雇用機会も考慮)
提言④:転籍 (現行は転籍を原則認めない→人権侵害の指摘)
・「やむを得ない事情の転籍」を拡大、明確化。手続きを柔軟化。
→"労働契約と実態の相違"もやむを得ない事情に該当
→暴力やハラスメントの立証手段の簡素化
・本人の意思による転籍を認める。ただし要件あり。
要件1:一定期間(分野ごとに1~2年間)以上の就労
要件2:一定水準(分野ごとにA1~A2)以上の日本語能力の試験に合格
・転籍は同一業務区分内に限る
・本人の事情やミスマッチ等で2年以下で帰国した場合でも、異なる分野・業務区分での再入国を認める。
・当分の間、転籍に関して民間職業紹介事業者の関与は認めない。
提言⑤:監理・支援・保護
・体制整備は「育成就労機構」が新たに設置の見込み
・監理団体は非営利法人「監理支援機構」となるか
・外部監査人の設置の義務化
提言⑥:特定技能の適正化
・特定技能1号への移行条件
①技能検定試験3級または特定技能1号評価試験合格
②日本語能力A2相当(N4等)以上の合格
・不合格の場合、再受験のため最長1年の在留継続を認める。
・キャリア形成の支援も実施する。
提言⑦:国・自治体の役割
・各省庁の役割が明記
・文部科学省が新たに入り、日本語教育の適切・確実な実施を図る。
提言⑧:送り出し機関及び送り出し
・送り出し政府と新たに「二国間取り決め (MOC) 」を作成(背景:不当に高額な手数料を取る機関の排除。母国で借金を抱える人が多い)
→ベトナム人実習生は来日前に、平均68.8万円を支払う
→ベトナム人実習生の80%に借金があり、平均借金額は67.4万円 (年収以上の借金) (出典:出入国在留管理庁 22年4年7月)
→参考:ベトナムの平均年収は45.9万円 (出典 JETRO HP 22年7月15日)
・原則としてMOC作成国からのみ受け入れ。(現在は中国とはMOC取り決めなし)
提言⑨:日本語能力向上の方法
・就労開始前:A1相当(N5)以上または相当の日本語講習受講
→現行は介護職種を除いて要件無し(介護職種はN4)
・特定技能1号移行時にA2相当(N4)以上
・特定技能2号移行時にB1相当(N3)以上
※JLPT以外の試験目安は未開示
提言⑩:新たな制度に向けて
・転籍制限が2年の場合は、1年経過後に昇給等の待遇向上を義務づけ
今後の日程
(済)2月9日 「政府方針」が閣議決定
3月中旬 入管法・技能実習法一括改正案を通常国会に提出
さいごに
以上、技能実習から育成就労への変化の概要でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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補足
文中に出てくるA1, A2, B1については、以下を参照ください。
在留資格についてはこちらを参照ください。
特定技能の追加の動きについてはこちらを参照ください。