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男性も「おっぱい」について学ぶとき

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赤ちゃんにとって人生最初の食事、「おっぱい」や「授乳」について、みんなで考えてみませんか? 社会科学と自然科学の視点から「おっぱい」について1冊にまとめてみました。また男性でも読… もっと読む
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記事一覧

12章:The First Diet for Lifeを実現するために

The First Diet for Lifeについて考える本書の冒頭で、母乳や授乳に関係する課題を、社会課題と捉え、母子に閉じた課題にするのではなく、男性も社会も巻き込んで解決すべき課題であると述べました。私たちはこの課題を社会で考えようとすると、「母乳」という言葉が障壁になっていると考えたので、「The First Dirt for Life」という言葉と、人生最初の食事について考えるという命題を示しました。その命題について考えるため、本書を通じて現時点で私たちが捉えてい

11章:母乳のメカニズム

母乳の複雑さと凄さ母乳に関するメカニズムはとても複雑で、実はまだまだわからないことだらけで、現在も研究中です。 本書は、母乳を研究している専門家が対象ではなく、母乳についてはじめて学ぶ人、特にこれからパパになる予定の男性を対象と考えているので、テーマごとに整理し、分かりやすく説明しようと思います。 母乳は血液からできる 男性は母乳が血液からできているということを意外と知りません。 実際、母乳の中に含まれる白血球は血液中の白血球と比べると、100倍から500倍の白血球が含まれ

10章:胎児と赤ちゃんについて

人体をテーマにする難しさ人の人体に関わること、医学では、「AだからB」、それが「BはA」と言えないことが多々あります。つまり、AとBとは相関関係はありそうだけど、因果関係があるかはわからないと言うことです。なぜなら、人は生活環境が異なるため、双子であっても同じではないため、因果を証明することが難しいのです。だから少しずつデータを集め、その確からしさを証明することが求められます。 商業目的のヘルスケア関連商品のPRは、特定の成分や機能に注目し、ある一部で効果があったから、それは

9章:動物としてのヒト 【自然科学】

動物とヒト京都大学の総長であり、霊長類の研究者である山極寿一先生は、「人間以外の動物にとって生きることは、食べること」であると言っています。そして、それを実現するために、いつ・どこで・何を・誰と・どうやって食べるかが、それぞれ動物によって違うと言っています。 現代人は科学技術の進歩により、いつでも・どこでも。どんなものでも・好きないように食べることができるようになりましたが、誰と食べるかという課題は技術で解決できるものではないとも言っています。なぜなら、人間の食事には栄養を補

8章:日本の子育て支援に関する取り組み

日本の子育て支援に関する現状日本では少子化の課題を、社会課題と認識し、いろんな施策が行政や民間で行われてきたことで、多くの人たちが子育ての課題を認識し、女性(ママ)だけが子育てする時代から男性(パパ)も子育てに係る時代となり、さらに社会も係わる時代になってきています。 (図8-1 孤独な出産から夫婦二人での出産へ) (図8-2育児に参画する父親の増加) 子育て支援に関するサービスや施策に関する大きな課題は、提供する側と利用する側の温度差、言い換えると、提供したい人たちは

7章:子育て支援に関する政策

現在の子育て世代は社会環境や生活環境において様々な課題がある中で行なっています。 このような状況に対して、政府もいろんな施策を行って、対応していこうと動いていますが、子育ての当事者である時しか関心がないため、全体像を把握している人は少ないと思うので、本章で全体像を説明します。 日本の子育て支援政策の大きな流れ1989年の合計特殊出生率が1.57となり、過去最低となったことを受け、日本政府は少子化という現象を認識しました。当時は1986年に施行された男女雇用機会均等法によって

6章:男性から見た授乳に関する課題

育児に参画するパパ、母乳は出ない育児に参画する男性が増えて、赤ちゃんと接する機会が多くなり、パパとかママとかを意識することなく育児をすることができるようになりつつありますが、母乳をあげる行為だけは、男性ができないことです。育児をしていると、赤ちゃんが不機嫌で泣いていても、お母さんのおっぱいを飲むと機嫌が戻り、泣き止み、やがてすやすやと眠ってしまうということはよくあります。こんな時、男性の無力さと赤ちゃんはやはりお父さんより、お母さんなんだなぁと思ったりして、「男性も母乳をあげ

5章:授乳・母乳育児に関する課題

The First Diet for Lifeをみんなで考える子育てはママだけでなく、パパも一緒にするようになり、ママとパパとで相談しながら、進めるようになりましたが、赤ちゃんの授乳はまだパパが何か意見をするという状況になっていません。これはパパの授乳および母乳育児に関する知識が不足していることが課題と考えていますが、それ以外に、ママ自身の思い込みや社会的な通念などが影響し、他者と議論する余地がないという空気感が漂わせていることも原因だと考えています。 考えるべき課題は、自分

4章:産前産後における様々な課題

1)不妊治療の実態 現在、不妊治療をしているカップルは5.5組に1組と言われています。 晩婚化と晩産化により、不妊治療を受ける人が年々増加する傾向にあります。 不妊治療は健康保険適用外で、費用もバラバラです。 人工授精の場合、1回あたり1万〜4万円、体外受精は20万〜60万円、顕微授精は30万〜70万円くらいと言われています。特定不妊治療(体外受精および顕微受精)には助成金が出ています。1回で着床するとは限らないため、なかなかうまくいかない場合、回数が増えて金額が増していき

3章:子育て全般に関する課題【社会科学】

自らの経験から見えた子育ての課題これまで数年間、子育ての課題を子育ての当事者かつ男性(パパ)としての目線とビジネスという観点から、少し俯瞰的に考えてきました。そこからいくつかの大きな課題があり、それらが複雑に関係していて、簡単に解決できないことを実感しています。この章では、子育てに関する課題を整理してみようと思います。 1)意識の課題 常識や前提を疑う 子育てに限った話ではありませんが、あらゆる常識や前提を疑う必要があります。特に、社会環境が変化する時代こそ、それが求められ

2章:The First Diet for Lifeについての仮説

The First Diet for Lifeに関する現状現時点で、The First Diet for Life(人生最初の食事)がどうであれば健康的で、どうすれば改善できるのかと問われても、明確な答えがあるわけではありませんが、The First Diet for Lifeの意味から想像することでいくつかの仮説は作れると考えています。本書では、赤ちゃんの食事について考えるとき、お腹の中にいる胎児の時とお腹から出てきた赤ちゃんの両方で考えることにします。 胎児のとき 本書

The First Diet for Life

〜赤ちゃんにとって人生最初の食事について考えてみよう!〜 はじめに 株式会社こそらぼについて 私たちは、30代後半で結婚し、リーマンショック後の景気が冷え込んだ時期に子どもが生まれ、40歳くらいから子育てが始まったという男性が集まり、子育ての課題を次の世代に先送りするのではなく、自分たちで問題提起し、解決することを目標に、株式会社こそらぼを立ち上げました。 最初は、子育てに関する課題を自分たちの経験をもとにどんな課題があるのかを洗い出し、それは個人としての課題なのか、そ