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大人になっても必要な能力

こんにちは! 

こしあんです。

今、人生の成功を左右するのは「非認知能力だ!」という話があります。
仕事や人間関係、夫婦生活など、様々な問題を乗り越えるにはこの能力が欠かせないのではないかと研究者たちは考えました。

しかし、「非認知能力」と言われてもピンときませんよね。
「一体どんな能力なのか?」と疑問に思う人も多いと思います。

今回は、今の子どもたちに必用だと言われるこの能力の話をしていきます。


【非認知能力ってなに?】

最近、性格の強みとも言われる粘り強さ、誠実さ、自制心、楽観主義が子供たちの発達を研究する人々の間で注目されています。
これは「非認知スキル」あるいは「ソフトスキル」と言われているもので、この気質が今の子供たちには必要だと考えられています。

しかし、過酷な、あるいは不安定な環境が、成長過程にある幼少期の子供たちの脳や体にいろんな変化をもたらしこのスキルの成長を妨げます。

そしてこのような環境の場合、子供たちの思考や感情を制御する能力の発達を邪魔してしまいます。
邪魔された結果、情報を処理したり感情を制御することが困難になり、学校生活を上手くこなすことが難しくなります。

ただ、この「非認知能力」を身につけることで、大人になってからも様々な改善が見られることを示す研究もあります。

これは1970年代の初め、ニュージーランドのダニーデンで生まれた1000人の子供たちを対象に何十年にもわたり追跡した結果、非認知能力の高い子供のほうが、学歴が高く、健康状態もいいという結果も出ています。

また、ひとり親になる可能性は低く、借金を抱えたり刑務所に入ったりする可能性が低いそうです。
実は良いこと尽くめの「非認知能力」ですが、あまり注目されてはいません。

なぜかというと、その能力を伸ばす最善の方法については結論がでていないためです。
「効果はあるがやり方がよくわからない」といった感じで、多くの教育者たちが躊躇している状態だからです。

現在、「子供たちの非認知能力を伸ばそうとする際、どのようにしたらいいのか?」という疑問を解消するため、日々研究を重ねていると言います。
研究者たちは、「このスキルは普通にモノを教えるときの方法論は使えないかもしれない。数学を教えるのと同じ方法では気質を教えることはできない」と考えました。

たしかに、黒板に書かれたものをノートに写して能力が身につくなら苦労はしません。

その後、研究が進む中、フリーのジャーナリストであるポール・タフという人物が1つの結論を出しました。

タフは「非認知能力は教えることのできないスキルである」と考えるよりも、「非認知能力は子供を取り巻く環境の産物である」と考えたほうが正確であり、有益であると考えたんです。

中学生や高校生でも、非認知能力は主に彼らの属する学校を中心とした環境の産物だと言っています。
だから、最初に働きかけるべき場所は子供自身ではなく環境なんです。

日本の学校はこれとは逆の考え方かもしれません。
つまり、環境ではなく、個人の能力やそもそもの気質が重要だと考えています。

たとえば、ケンカやいじめなどの問題があった場合、問題を起こした学生に注目しますよね。
その子の性格をみて「だからお前はイジメられるんだ」という見方をすることがあります。

しかし、問題を改善したいと思うならば生徒ではなく、いじめを黙認しているクラスの雰囲気や担任の様子もよく観察しなければなりません。
また、劣悪な家庭環境のために攻撃的になっている生徒、逆に意見が言えない生徒がいる可能性もあります。
この環境にテコ入れしない限り、また同じような問題が起こる可能性があるのではないでしょうか。

【子供たちの発達を阻害しているもの】

非認知能力の発達を阻害している原因をいくつか紹介しておきます。

1、子供が受け取るストレス
子供たちはいくつかの環境要因によって、長期にわたり不健全な圧迫を受け続けることがあります。
暴力ネグレクトといった様々なストレス要因が、子供の心と体の健全な発達を阻害することがわかっています。

貧困や虐待などの逆境のなかで育った子供、とくに幼い時期ほど脳と免疫システムと内分泌システム(コルチゾールなどのストレスホルモンを作り、放出する内分泌腺)を結ぶネットワークの発達に強い影響を及ぼします。

幼い子供はこれからの人生で何に備えるべきか学習している状態です。
そんな時に「あなたの人生には困難が待ち構えている」という信号を送られ続けると脳はトラブルに備えるための反応を示します。
血圧をあげ、アドレナリンの分泌を増やし、警戒を強めるのです。

人間には「闘争・逃走反応」といわれる危険を察知する能力があります。
このシステムがあるからこそ有事の際にすぐに反応することができるのですが、これが長期にわたって続くと悪影響を与えます。

免疫系が上手く働かなくなり、体重増加の一因となる代謝の変化が起こり、のちに喘息から心臓病まで様々な病気を引き起こします。
そして、ストレスは脳の発達にも影響を及ぼす可能性があります。

特に、幼い頃に経験した高レベルのストレスは、前頭前皮質の発達を阻害し、感情面や認知面での制御能力が育つのを妨げます。
幼い時期に慢性的なストレスを受けた子供は、失望や怒りの反応を抑えることに困難を覚えるようになります。

小さな挫折が圧倒的な敗北に感じられたり、ほんの少し軽く扱われたように感じただけでも深刻な対立関係に陥ったりします。
また、学校での生活では常に警戒しているため「闘争・逃走反応」が働き、ケンカや口答え、教室内での我儘なふるまいが見受けられます。

目立たないものとしては、クラスメートとのつながりを警戒し、教師や大人から差し伸べられた手を拒むようになるそうです。

認知面では、このような不安定な環境で育ち、そうした環境が生む慢性的な強いストレスにさらされた場合、前頭前皮質が制御する実行機能と呼ばれる一連の能力の発達が阻害されます。

この実行機能は、脳の働きを監督する航空管制官に例えられるほど重要な部分で、作業記憶、自己調整、認識の柔軟性などの発達のための神経系の基盤となり、粘り強さやレジリエンス(回復力/復元力/弾力性)といった非認知能力の支えになります。

この能力は不慣れな状況を切り抜けたり、新しい情報を処理したりする際に非常に役立ちます。
逆に、ストレスを与え続けられれば実行機能が発達しないので、環境の変化に弱くなる可能性もあります。



2、親がとる行動

「環境」と聞くと、多くの人は子供の周りにある物理的な環境を思い浮かべるかもしれません。
もちろん、飲み水を確保するのにも大変な地域は世界にたくさんあります。
このような環境が子供たちの発達に一定の影響を及ぼしているのは確かです。

しかし、最近の発見によれば、いちばん問題となる環境要因は居住する建物ではなく、子供たちが経験する人間関係だと言われています。
つまり、子供たちがストレスを受けているときに、周りの大人たちがどう対応するかにかかっています。

子供が幼ければ幼いほど、家にいる家族は極めて重要なポジションにいます。
特に幼い子どもは自分の周りにあるもので世界を知ろうとしています。
そして、子どもは親の反応によって世界を理解します。

幼児が音をたてたり、何かをじっと見ていたりすると親は子供の関心を共有し、片言のおしゃべりや泣き声に対して、しぐさや表情や言葉で反応を返します。

たとえば、子供が電車を見て「でんしゃー!」と言ったら、「そうね~、電車ね~」とか「大きいね~」、「速いね~」といったやり取りをしますよね。
このようなやり取りは、乳幼児にとって世界のありようを知るための手段でもあります。
これはどんな経験よりも発達の引き金となり、脳内における感情、認識、言葉、記憶を制御する領域同士の結合を強固なものにします。

また、子供が幼い時期に親が果たす決定的な役割は、良いものも悪いものも含めて子供たちが受ける圧力の外部調整装置となることです。
研究によって、子供が動揺しているときにとる親の行動で、子供たちは大きく変わることがわっています。

子供が動揺したとき、親が厳しい反応を示したり予測のつかない行動を取ったりすると、後々子供は強い感情を上手く処理することや、緊張度の高い状況に効果的に対応することが出来なくなります。

反対に、子供が瞬間的なストレスに対処するのを助け、怯えたり癇癪を起したりした後に落ち着きを取り戻すのを手伝うことが出来る親は、その後の子供のストレス対処能力に大いにプラスの影響を与えることもわかっています。

あなたは、泣きわめいたり、感情を爆発させている子がいたらどうしますか?

最近はあまり見かけませんが、床に寝転がってジタバタと動き、泣きわめいている子供がよく親に引きずられていくということがありました。

実は、こんな時でも子供は何かを学ぼうとしています。

この時、親や世話をする人が子供のもつれた感情に敏感に注意深く反応するなら、子供はひどく不快な感情に自分でうまく対処できるようになると言います。(まぁ、親はイライラしますけどね。)

この学習は、知力は必要としませんが子供の心に深く刻まれ、次にストレスに満ちた状況になったとき、あるいは先々のさまざまな危機に直面したときに真価を発揮します。

まだ研究段階ではありますが、マギル大学の研究者がラットを使って研究した結果によれば、子ラットがストレスを受けたときに母ラットが示す暖かく繊細な対応、とくにリッキング・アンド・グルーミングと呼ばれるなだめるような行動がDNA上で海馬を制御する部位のメチル化を制御することがわかっています。

簡単にいうと、脳にある「海馬」という部分が、ストレスホルモンも処理する部位なんですが、これが温かい親の対応によってきちんと発達してストレスに対処しやすくなるということです。
またこの研究は検証段階ですが、人間の場合にも同様の効果があるとみられています。

そして、心理学でも親子関係はよく研究されており、アタッチメント(愛着)と呼ばれているものがあります。

このアタッチメントですが、心理学者のボウルビィが提出した概念で、他者との親密な距離を求めようとする行動のことを指します。
簡単に言うと、赤ん坊は初め誰が世話をしても喜びますが、そのうち特定の人の世話を喜ぶようになります。

まぁ、大体は母親ですね。

この特定の人に特別の感情を向ける愛情の絆をアタッチメント(愛着)といいます。

ボウルビィはWHOの要請で、母親から隔離された乳幼児のマターナル・デプリヴェーション(母性的教育の剥奪)による心身の反応とその影響を調べた研究を行ないました。

これによると、「乳幼児と母親、またはそれに代わる母性的教育者との人間関係が、親密かつ持続的で、しかも両者が満足と幸福感によってみたされるような状態が精神的健康の基本である」として、母性的教育の剥奪によって、精神発達の遅滞、身体的成長の障害、情緒を欠いた性格障害、非行、深刻な悲痛反応が起こる可能性を示唆しています。

このことからも、幼い子供に親や周りの大人が与える影響はとても大きいことがよくわかりますね。

別の研究でも、アタッチメント(愛着)は食事を与えられるという一次的欲求の充足から始まるのではなく、身体接触(スキンシップ)のようなアタッチメント行動のほうが重要であることが明らかになっています。


3、トラウマ(心的外傷)

幼い頃に有害なストレスを経験すると、極めて深刻な発達の中断が起こり、免疫システムや実行機能、心の健康が損なわれます。
実は家のなかだけでなく、近所で起こる暴力行為や見知らぬ人間関係からの虐待なども含まれます。

しかし、大半の子供たちにとって一番の脅威は家の中にあります。

アメリカ疾病予防管理センターの医師ロバート・アンダと保険団体ヴィンセント・フェリッティが1990年代に1万7000人を対象に、子供の頃のトラウマを引き起こす体験について調査しました。
この対象者のほとんどが学歴の高い中年の白人です。

調査では、虐待ネグレクト「深刻な機能不全に陥った家庭」で育ったことを示すものについて、10項目からなる質問をしてそのうち何項目が当てはまるかという数だけを調査したものです。

※「深刻な機能不全に陥った家庭」とは、DVを目撃した、両親が離婚した、家族の中に刑務所に入っている者、精神疾患のある者、あるいはアルコールや薬物乱用の問題を抱える者がいたなどです。


アンダとフェリッティは、その後それぞれの患者の病歴を調べました。
その結果、患者が子供の頃に経験したトラウマの数と、成人後にかかった内科疾患の間に、驚くべき相関関係が見つかったんです。

それは、「子供時代の逆境(ACE)」を4つ以上経験している患者では、癌になる確率は2倍、心臓病にかかる確率は2倍、肝臓病にかかる確率も2倍、肺気腫や慢性気管支炎になる確率は4倍になるそうです。

「トラウマ」と聞くと一過性のもの、たとえば大きな災害などで受けた傷を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、アンダとフェリッティが設定した項目は慢性的で継続するものでした。
つまり、親の離婚やネグレクトといったものは、ある特定の1日の出来事ではなく毎日続く経験というわけです。

慢性的にストレスの多い家庭で育った場合、子供の実行機能の発達にマイナスの影響が出ることもわかっています。
心的外傷の研究者でもあるナディーン・バーグ・ハリスが行った研究では、ACEのスコアがゼロだった児童のうち、学校での学習や行動に問題のある子供は3%だけで、逆にACEのスコアが4点以上の児童では51%にのぼったそうです。


4、ネグレクトによる弊害

トラウマの所でも説明したACE(子供時代の逆境)の10項目にあったような重度のものではなく、もう少し軽度の機能不全もマイナスの影響を与える可能性があります。

オレゴンで行われた研究で、両親の間の暴力を伴わない口論が乳幼児の発達に与える影響を調べたものがあります。

生後6か月から12か月の乳幼児を対象にしたもので、眠っているあいだにfMRI(機能的磁気共鳴映像装置)で脳波を探る実験をしました。
実験の結果、家庭内での口論がほとんどないと答えた母親の子供は、怒声に対して比較的穏やかな反応を示しました。

しかし、家庭内で口論が頻繁に起こると答えた母親の子供の場合、fMRIの画像上で感情、ストレス反応、自制に関わる脳の部位にはっきりとした反応が示されていたんです。

実際、ネグレクトが子供の健康的な発達を脅かしているという科学的根拠は相次いで報告されています。
研究者たちによれば、ネグレクトは肉体的な虐待よりも長期にわたって害を及ぼすこともあるそうです。

ただ心理学者によると、親や世話をする人がときどき注意を払うのを怠ってしまうようなものにはプラスの効果があるといわれています。

これは、子供が自分は常に親の中心にいるわけではないと知り、時には自分だけで楽しもうとすることは良いことだと考えるようになるためです。
しかし、一番注意しなければならないのは「慢性的な低刺激」と呼ばれる状態です。

これは親が子供にあまり反応せず、積極的に関心を寄せたり、きちんと向き合ってやりとりをしていない状態のことを言います。
子供は泣いても、話しかけようとしても無視され、何時間もテレビの前に放置されたりします。

神経科学者たちの研究によれば、この程度のネグレクトでも脳の発達に対し、長期にわたる深刻な影響を及ぼすことがわかっています。
そして子供時代だけではなく、その後の社会生活においても影響を及ぼすそうです。

慢性的な低刺激を受けた子供は上手に友達を作れない傾向があり、認知能力や言語の発達が遅れ、実行機能に問題を生じることもあります。

神経学者は、ネグレクトや虐待、その他のトラウマはすべて「自分の置かれた環境が不安定で混沌として予測がつかない場所にいる」ということを乳幼児に教え込むことになるといっています。

乳児期の子供の脳は、周囲の世界に決まったパターンを探しています。

それなのにすぐそばの環境が常に流動的な場合、例えば大人が突飛なふるまいをしたり、あまり反応を示さないという態度だと、子供の脳は常に警戒をするようになります。


【ロシアのサンクトペテルブルクでの実験】

私たちはつい問題行動を起こす児童に目が行きますが、実は親の行動を変えることで、その影響を半減させたり、好転させることもできます。
これは、2000年代に行われた実験です。

ソビエト時代の社会や経済の崩壊により、ロシアでは多くの乳幼児が孤児院に入ることになりました。
この施設では、十分な食べ物、衣類、おもちゃなどが与えられ、清潔なベッドや適切な医療が確保されていました。
決して物資が不足していて、食事が十分でない、というようなことはなかったそうです。

傍から見ればなにも問題はないように思えますよね。

しかし、施設は厳しく人間味に乏しいやり方で運営されていて、スタッフが子供たちに暖かく接することがなかったそうです。

別の報告書には、この時代の典型的なロシアの孤児院について「子供たちの食事や着替えや入浴は機械的に処理され、家庭で親との間で起こるような笑いやおしゃべりやアイコンタクトは一切なかった」と書かれています。

その後、ロシアとアメリカの科学者のチームが一部のスタッフに、もっと心のこもった世話をするように教育しました。
食事や入浴のような毎日の世話をするときに、声をかけたり、笑みを向けたりといった、大抵の親が自分の子供に対してするようなことをしてもらったんです。

そうすると9か月後には、認知機能や社会性の発達、運動技能に相当の伸びが見られました。
そして驚くことに体の発育まで改善があったそうです。
食事や医療ケアは前と変わらないのに、身長・体重・胸囲がすべて増加したことがわかっています。

そして、世話をするスタッフにもいいことがありました。
子供たちが健康で幸せそうになるにつれ、スタッフの間でも鬱や不安が減少したそうです。

私たちは子供の成長を願うばかりに、すぐ物理的な環境を良くしようとします。
良い刺激になるようにと知育玩具を与えたり、食事に気を遣ったりします。もちろん大切な事ではありますが、この実験からも物理的な環境を良くしても限界はあることがよくわかります。

子供の能力を伸ばしたいと考えるならば、子供を変えようとするのではなく、日々接する大人たちの行動や態度を改善することが最初にやるべきことかもしれませんね。


今回はここまで

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それではまた次回お会いしましょう。

※この記事は読んだ本をもとに考察し、私の経験したことなども踏まえて書いています。
そのため、参考にした本とは結論が異なる場合があります。
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