村井康司

音楽評論家、編集者。1958年北海道函館生まれ。著書『あなたの聴き方を変えるジャズ史』…

村井康司

音楽評論家、編集者。1958年北海道函館生まれ。著書『あなたの聴き方を変えるジャズ史』『ページをめくるとジャズが聞こえる』(シンコーミュージック)、『JAZZ 100の扉』『現代ジャズのレッスン』(アルテスパブリッシング)ほか。尚美学園大学音楽表現学科講師(ジャズ史)。

マガジン

  • ジャズとラジオをめぐるあれこれ

    自分がDJをやっている「世界はジャズを求めてる」(鎌倉FM)のことをはじめ、ラジオとジャズにまつわる記事を集めます。

  • スタン・ゲッツをめぐるあれこれ

    ジャズ・サックス奏者スタン・ゲッツについての記事を集めたマガジンです。

  • 村井康司のポッドキャスト

    音楽評論家の村井康司がジャズを中心とする音楽について語るポッドキャストです。不定期ですが、少しずつ追加していきます。

  • 「しりとり」で音楽を聴く試み

    まるでしりとりのように、何らかのつながりがある音楽アルバムをジャンルを横断して次々に聴いていく、という試みです。

最近の記事

没後15年、吉村昭のエッセイを読む

小説家吉村昭は、2006年7月31日に79歳で亡くなりました。今年2021年で没後15年になります。 綿密な取材と調査に基づき、虚飾を排した淡々とした文体で日本と日本人をめぐる様々な「事件」を記述する吉村昭の小説は、現在でも多くの読者に支持され、『戦艦武蔵』『高熱隧道』『羆嵐』『破獄』などの長編小説は、未だに文庫が版を重ねています。事実の重みを無駄のない文章で突きつけてくる吉村昭の小説を、読者は息詰まるような思いで読み終え、深いため息をつくことになるでしょう。 そうした緊迫

    • 岸政彦『リリアン』の中のジャズ

      岸政彦さんの小説『リリアン』(新潮社)は、大阪在住のジャズ・ベーシストが主人公の中編です。惜しくも三島賞は逃しましたが、もしかしたら日本で書かれた「ジャズ小説」の中で、最もリアルなジャズ・ミュージシャンの生活が描かれている作品かもしれません。 追記:2021年12月16日、『リリアン』が織田作之助賞を受賞しました! 岸政彦さん、おめでとうございます!! 雑誌「文學界」2021年5月号に書評を寄稿しましたが、紙幅の都合もあって、あまり具体的にこの小説に登場するジャズについて

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      • タレントスカウトとしてのスタン・ゲッツ(3)〜Talkin' about Stan Getz #4〜

        天才テナー・サックス奏者、スタン・ゲッツ(1927〜1991)は、若い世代のミュージシャンをサイドメンとして積極的に起用し、彼らを鍛えつつ自己の音楽の幅を確実に拡げていった「タレントスカウト」でした。今回は、2021年2月9日に惜しくも亡くなったピアニスト、チック・コリアをフィーチュアします。 なお、第一回はスコット・ラファロとスティーヴ・キューンを、第二回ではゲイリー・バートンを採りあげました。 3.チック・コリア(1941〜2021) アーマンド・”チック“・コリアは

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        • ハワード・ジョンソンを偲んで In Memory of Howard Johnson

          敬愛するテューバ奏者(他にもいろいろな楽器を演奏しましたが)、ハワード・ジョンソンが2021年1月11日に亡くなりました。1941年8月7日生まれ、79歳でした。 私がハワード・ジョンソンというテューバ奏者の名前を知ったのは、ザ・バンドのライヴ盤『Rock of Ages』(1972)だったと思います。アメリカン・ロックやシンガー=ソングライターが好きで、まだジャズをそんなに聴いていなかった中学から高校時代の私にとって、ハワード・ジョンソンは、アメリカのルーツっぽいロックの

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        記事

          ラジオ番組「世界はジャズを求めてる」が始まります!

          コミュニティFM局「鎌倉FM」で、ジャズの番組を始めます。 1月7日スタート、毎週木曜午後8時(再放送は日曜お昼12時)からの1時間番組「世界はジャズを求めてる」で、毎月第一週の進行役をつとめることになりました。 以前から音楽仲間たちと、どこかでジャズのラジオをやりたいよね、と話していたんですが、ご縁あって鎌倉FMで始めることになりました。 パーソナリティは、 第一週:村井康司(音楽評論家)「ジャズと一緒に東へ西へ」 第二週:池上信次(音楽書籍編集者)「20世紀ジャ

          ラジオ番組「世界はジャズを求めてる」が始まります!

          村上春樹さんにスタン・ゲッツとジャズの話を聞きました〜Talkin' about Stan Getz #3〜

          今回は番外編、10月7日発売の『文學界』11月号の特集「JAZZ×文学」と、その巻頭記事「村上春樹さんにスタン・ゲッツとジャズについて聞く」(聞き手:村井康司)のことを書きます。  文芸誌初のジャズ大特集!おそらく文芸誌としては初の本格的ジャズ特集を組んだ「文學界」、145ページというボリュームでジャズと文学をめぐるさまざまな話題が満載されています。 内容の概略はこんな感じです。 【総力特集 JAZZ×文学】 文学界のジャズ・キャッツが集結、音楽の謎と魅力へいざなう完全

          村上春樹さんにスタン・ゲッツとジャズの話を聞きました〜Talkin' about Stan Getz #3〜

          タレントスカウトとしてのスタン・ゲッツ(2)〜Talkin' about Stan Getz #2〜

          スタン・ゲッツ(1927〜1991)についてあれこれ語るシリーズ「Talkin' about Stan Getz」を始めました。まずは若い世代のミュージシャンをサイドメンとして積極的に起用し、彼らを鍛えつつ自己の音楽の幅を確実に拡げていった「タレントスカウト」としてのスタン・ゲッツについて書いてみることにします。第一回はスコット・ラファロとスティーヴ・キューンを採りあげました。以下の記事です。 第二回は、1964年から66年まで在籍したゲイリー・バートンについてです。 2

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          タレントスカウトとしてのスタン・ゲッツ(1)〜Talkin' about Stan Getz #1〜

          仕事の関係でここのところスタン・ゲッツ(1927〜1991)を集中的に聴いています。「クール・ジャズとボサノヴァの人」というパブリック・イメージが強いゲッツですが、1944年から亡くなった91年までの長いキャリアを俯瞰してみると、さまざまなタイプの音楽に積極的にチャレンジする「進取の人」でもあったのだ、ということがよくわかります。 このシリーズでは、若い世代のミュージシャンをサイドメンとして積極的に起用し、彼らを鍛えつつ自己の音楽の幅を確実に拡げていった「タレントスカウト」

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          オンライン授業をnoteで作成する試み

          1.オンライン授業パッケージを何を使って作成するか 私はある大学で「ジャズの歴史」を週2コマ担当しています。 今回、春のセメスターがすべてオンライン授業となることが決まったのは3月末ぐらいでした。授業開始は5月の最終週で、7月の最終週までの10週間で、最低12週分の授業をオンラインで行うことになりました。 最初はZoomなどを使ってのリアルタイム授業も考えたのですが、通常は「レジュメ」「講師の話」「音源または映像」の3つの要素を組み合わせて授業を行っていることもあり、そ

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          「ジャック・ケルアックとジャズ」のポッドキャスト

          2020年3月21日に、四ッ谷のジャズ喫茶「いーぐる」で、『ページをめくるとジャズが聞こえる』発刊記念のイベントを開催しました。 前半は「スコット・フィッツジェラルドとジャズ」、後半は「ジャック・ケルアックとジャズ」というテーマで村井康司が話をしたのですが、ここでは後半のケルアックとジャズについてのレクチャーをポッドキャストにしたものをご紹介します。 「スコット・フィッツジェラルドとジャズ」のポッドキャストはこちらです。 ということで、ケルアックについて少しお話を。

          「ジャック・ケルアックとジャズ」のポッドキャスト

          「スコット・フィッツジェラルドとジャズ」のポッドキャスト

          2020年3月21日に、四ッ谷のジャズ喫茶「いーぐる」で、『ページをめくるとジャズが聞こえる』発刊記念のイベントを開催しました。 前半は「スコット・フィッツジェラルドとジャズ」、後半は「ジャック・ケルアックとジャズ」というテーマで村井康司が話をしたのですが、ここでは前半のフィッツジェラルドとジャズについてのレクチャーをポッドキャストにしたものをご紹介します。 この写真は、スコット・フィッツジェラルドと妻のゼルダ。1920年に『楽園のこちら側』でデビューしたフィッツジェラル

          「スコット・フィッツジェラルドとジャズ」のポッドキャスト

          「しりとり」で音楽を聴く試み(8)

          なんらかの縁がある音楽アルバムをしりとりのようにつなげてゆく遊びです。前回はこちら↓ 前回の最後はコーネル・デュプリーの『ティージン』でした。デュプリーはこのアルバムで、クラレンス・"ゲイトマウス”・ブラウンの「Okie Dokie Stomp」をカヴァーしました。ブルース・ギター、フィドルの名手ゲイトマウスは、デュプリーのヒーローだったそうです。 ゲイトマウスが最も影響を受けたミュージシャンはTボーン・ウォーカーとルイ・ジョーダン。ジャイヴ・ミュージックの第一人者ジョー

          「しりとり」で音楽を聴く試み(8)

          「しりとり」で音楽を聴く試み(7)

          次から次へとなにか関係のある音楽を聴いていくゲーム、もう7回目になってしまいました。今まで紹介したアルバムは36作になります。前回はこちらです↓ さて、6回目の最後はポール・サイモンの『There Goes Rhymin' Simon』でした。このアルバムはアラバマ州マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオでの録音が入っていて、ジミー・ジョンソン(g)、バリー・ベケット(kbd)、デヴィッド・フッド(b)、ロジャー・ホーキンズ(ds)といったマッスル・ショールズの腕利きスタ

          「しりとり」で音楽を聴く試み(7)

          「しりとり」で音楽を聴く試み(6)

          つながりのある音楽をしりとりみたいに繋げて聴いてゆく、という試みです。前回はこちら↓ 前回の最後はジャニス・ジョプリンの遺作『パール』でした。 ジャニスをもう一枚。衝撃的なデビュー盤といえる、ビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーの『チープ・スリルズ』を。 ここでの「Summertime」のアレンジは、ニーナ・シモンの「You'd Be So Nicd To Come Home To」に影響を受けているのではないか、と私は思います。というわけで、ニーナ・シモンを聴

          「しりとり」で音楽を聴く試み(6)

          「しりとり」で音楽を聴く試み(5)

          何らかの関連がある音楽を「しりとり」的につないで聴く、というゲームです。 前回はこちらです。↓ 前回の最後はビル・フリゼールでした。 アヴァンギャルドもジャズもハードコアメタルもカントリーもサーフ・ミュージックも出来てしまう、フリゼールのとんでもない懐の深さがいちばんよく出ているバンドは、ジョン・ゾーンが80年代末に結成した「ネイキッド・シティ」かもしれません。88年のライヴを聴いてみましょう。 ジョン・ゾーンは本当にいろんなことをやる音楽家で、ハード・バップ期のミュ

          「しりとり」で音楽を聴く試み(5)

          「しりとり」で音楽を聴く試み(4)

          何かの縁がある音楽を次々につなげて聴く遊びです。 前回はこちらです。↓ 前回の最後はギャビー・パヒヌイでした。 次はギャビーの先達で、偉大なるハワイアン・スティールギター奏者のソル・ホーピイを選びます。アメリカ本土のカントリーやジャズにも影響を与えたホーピイの演奏は、今聴いても本当にすごい! さて、ハワイのオルタナティヴな音楽に最初に注目した日本のミュージシャンはおそらく久保田麻琴。久保田麻琴と夕焼け楽団の『ハワイ・チャンプルー』は、ハワイ音楽・沖縄音楽・テックスメッ

          「しりとり」で音楽を聴く試み(4)