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ハワード・ジョンソンを偲んで In Memory of Howard Johnson

敬愛するテューバ奏者(他にもいろいろな楽器を演奏しましたが)、ハワード・ジョンソンが2021年1月11日に亡くなりました。1941年8月7日生まれ、79歳でした。

私がハワード・ジョンソンというテューバ奏者の名前を知ったのは、ザ・バンドのライヴ盤『Rock of Ages』(1972)だったと思います。アメリカン・ロックやシンガー=ソングライターが好きで、まだジャズをそんなに聴いていなかった中学から高校時代の私にとって、ハワード・ジョンソンは、アメリカのルーツっぽいロックのアルバムによく参加しているテューバの人、というイメージでした。

Rag Mama Rag/ The Band ("Rock of Ages")


1976年に行われたザ・バンドの解散コンサート「The Last Waltz」にもハワード・ジョンソンは参加しています。

The Night They Drove Dixie Down/The Band ("The Last Waltz”)


ユニークなブルース・シンガー、タジ・マハールのアルバムにもジョンソンは参加、なんとこのライヴ盤で、タジはジョンソンを中心とする4本のテューバをフィーチュアしました!

Sweet Mama Janisse/ Taj Mahal ("The Real Thing")


タジとジョンソンの交友はこの後も続き、ジョンソンは自身のアルバムにタジをゲストで招いたりもしました。以下の映像はデヴィッド・サンボーンがホストを務めたTV番組「Night Music」から。

TAJ MAHAL & HOWARD JOHNSON: "Cake Walk In Town/She Caught The Ketty ". Live 1988, "NIGHT MUSIC #29"


大学に入ってジャズにどっぷり浸かり、特にギル・エヴァンスの音楽が好きになったとき、私は「あの、ザ・バンドとやっているハワード・ジョンソンがギルのオーケストラにいる!」と驚いたのでした。

ジョンソンは、ギルのオーケストラで、テューバの他にバリトン・サックスとバス・クラリネット、そしてティン・ホイッスル(高い音が出るブリキの縦笛)を演奏しています。まずは1974年のライヴ映像を。

Thoroughbred/Gil Evans Orchstra (Umbria Jazz 1974)


ちょっと長い映像ですが、1986年のギル・エヴァンス・オーケストラのライヴです。このメドレーの中で、ハワード・ジョンソンはバス・クラリネット、バリトン・サックス、ティン・ホイッスル、テューバを吹いています。特に”Voodoo Chile"での壮絶なテューバ・ソロにご注目を。

Gil Evans Orchestra - Fabrik, Hamburg, 26 October 1986
00:00 Up From The Skies - 10:05 Little Wing - 28:15 Voodoo Chil


ジャズ・ミュージシャンとの共演をいくつかご紹介します。アルゼンチン出身のテナー・サックス奏者、ガトー・バルビエリとはアルバム参加だけでなく、ツアー・バンドにも加入していました。この73年のローマでのライヴで、ジョンソンはエレクトリック・ベースとテューバを演奏、低音楽器なら何でも来い! という感じです。

La China Leoncia/Gato Barbieri Septet(Live – Rome 1973)


ローランド・カークのアルバムでは、ジョンソンは70年の『Rahsaan,Rahsaan』と76年の『The Return of 5000lb. Man』に参加しました。まずは『Rahsaan,Rahsaan』の「The Seeker」です。17分を超える組曲仕立てですが、ジョンソンはパート2とパート3で活躍します。

The Seeker/Rahsaan Roland Kirk("Rahsaan,Rahsaan")


『The Return of 5000lb. Man』のこの曲で、カークはジョンソンにテューバでチャーリー・パーカーのソロのパッセージを吹かせました。

There Will Never Be Another You/Rahsaan Roland Kirk ("The Return of 5000lb. Man")


さて、1976年に大学に入って、当時流行していたフュージョンをたくさん聴くようになった私は、デヴィッド・サンボーンの初リーダー作に、高校時代によく聴いていたジョン・サイモンの『Journey』に入っていた曲が収録されていることに気づきました。サイモンのオリジナルの「Short Visit」という曲です。サイモンのヴァージョンにもサンボーン、そしてハワード・ジョンソンが参加していたのでした。

Short Visit/John Simon ("Journey")


Short Visit/David Sanborn  ("Heart to Heart")


ギル・エヴァンス・オーケストラが77年にライヴ録音し、80年代になって発売された『Priestess』でも「Short Visit」が演奏されています。フィーチュアされているのはもちろんサンボーンで、ジョンソンもオケの一員です。ちなみにこのアルバムのプロデューサーはジョン・サイモン。ジョン・サイモンはザ・バンドのプロデューサーでもあります。

Short Visit / Gil Evans Orchestra ("Priestess")


ハワード・ジョンソンがジャズと(広義の)アメリカン・ロックのどちらにも関わっていたことと、ジョン・サイモンの存在はなにか関係がありそうです。そのあたりはもう少し調査したいところです。


ハワード・ジョンソンのリーダー作は多くないのですが、テューバを5〜6本ずらりと揃えた「Gravity」というユニットでの活動が知られています。ライヴ映像を観てみましょう。

Evolution and Natural Woman/Howard Johnson & Gravity(Live at The Bitter End,2014)

このバンドには、デイヴ・バージェロン、ボブ・スチュアート、アール・マッキンタイアなど、ジャズ界の名だたるテューバ奏者が揃っていました。


ハワード・ジョンソンが音楽的キャリアを語る映像があります。25分ほどありますが、なかなか興味深い話をしています。

Liner Note Legends #5: Howard Johnson


ザ・バンドとギル・エヴァンスに魅せられて音楽を聴きつづけてきたような私にとって、ハワード・ジョンソンは特別な存在です。心からの感謝と哀悼を捧げます。

ハワードの最後のリーダー作の最後の曲、ウィルトン・フェルダーの名曲「Way Back Home」をおしまいにご紹介しましょう。


Way Back Home/Howard Johnson & Gravity("Testimony")


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