「しりとり」で音楽を聴く試み(8)
なんらかの縁がある音楽アルバムをしりとりのようにつなげてゆく遊びです。前回はこちら↓
前回の最後はコーネル・デュプリーの『ティージン』でした。デュプリーはこのアルバムで、クラレンス・"ゲイトマウス”・ブラウンの「Okie Dokie Stomp」をカヴァーしました。ブルース・ギター、フィドルの名手ゲイトマウスは、デュプリーのヒーローだったそうです。
ゲイトマウスが最も影響を受けたミュージシャンはTボーン・ウォーカーとルイ・ジョーダン。ジャイヴ・ミュージックの第一人者ジョーダンのアンソロジーを聴いてみましょう。
ルイ・ジョーダンの代表曲のひとつに、ブルースのスタンダード「Caldonia」があります。B.B.キングもジェームス・ブラウンもやっている定番ソングですが、ジャズではウディ・ハーマン・オーケストラのヴァージョンがよく知られています。
ウディ・ハーマンは自分のビッグバンドをときどきがらりとメンバー・チェンジして音楽性を変化させてきました。「Caldonia」は1945年の録音で、この時期のハーマン楽団は「ファースト・ハード(First Herd)」と呼ばれています。「Herd」は動物や鳥の「群れ」のこと。
強力なトランペット・セクションが売り物で、ビバップとブルースが得意だったファースト・ハードを解散して、ハーマンは1947年に「セカンド・ハード」を立ち上げました。こちらはテナー3本にバリトン1本という編成でのサックス・セクションが売りです。今挙げたアルバムに入っている「Four Brothers」が代表曲ですね。
そのハーマン楽団のサックス・セクションで、スタン・ゲッツはソロイストとしてフィーチュアされました。そのことがきっかけとなってゲッツは有名になり、独立してスター・サックス・プレーヤーになったわけです。
さて、スタン・ゲッツがジャズ・ファン以外に広く知られるようになったのは、60年代にボサノヴァを演奏するようになってから。ジョアン・ジルベルトとの『ゲッツ/ジルベルト』はグラミー賞の「アルバム・オブ・ジ・イヤー」に輝きました。
ジョアン・ジルベルトはボサノヴァの創始者のひとりですが、その声とギターこそが「ボサノヴァ」という音楽そのものだ、とさえ言えるでしょう。大名盤『声とギター』をお楽しみください。
「声とギター」によるブラジル音楽の名作といえば、カエターノ・ヴェローゾの『Caetano Veloso』も忘れてはいけません。このアルバムも聴くたびに感動してしまいます。
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