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読書家の終活

「今、実は終活をしているんだけどね」

80歳近いおじいさんは、私に話し出す。

私がバイトしているスナックのお客さまだ。この方は、その店の守り神のような存在で、次々入店するお客さんたちも、端の席にまず目を通し、ひと声かけて席に着く。空気が一角だけ違うのだ。

いつもカウンターの一番端の席で、静かに煙草をふかす。数ヶ月前までは、「神の河の水割り」を飲んでいたが、今は氷少なめ烏龍茶。塩を舐めながらお店を見守るように、街を見ているように座る。

私はこのおじいさんの空気感が好きで、とても文学的な、知的な空気を纏っているように思うのだ。

私の知らない時代を、見てみたかったモノや空気を吸ってきたひと。

お話するのは、いつも「映画」「絵」「音楽」のことで、とても実りある時間になっている。

昔の映画と今の映画の比較の話であったり、「綺麗なもの」に対する考え方だとか、自分が感覚としてあるものを言葉で表してくれる。

ハッとさせられるものが多く、接客しつつよくメモしています🍊笑

そのおじいさんが、先日、

『今、終活をしていてね、家のモノをどんどん捨てていってるんだけど。家にある本も全部処分してもらったよ。業者に頼んだら、本が1万冊あったんだ。』っと。

最初「しゅうかつ」という言葉が出たとき。

「就活」、いや「習慣」の聞き違いかな?とすぐさま「終活」に変換するのに混乱した私だったけど、その後の言葉らで納得する。

そして更に本の数が1万冊という…!(驚愕)

どのくらいの量なんだろうと、とても想像ができないほどの冊数。


「数えるの大変じゃなかったですか」

っと聞くと、

業者が1回に持っていける冊数が1000冊で、数日に分けて合計10往復もしてもらったようだ。

とてつもない冊数に驚きと共に、おじいさんのこれまで過ごしてきた生活や時間が、そこにあったように思い、とても感慨深く心に沁みてきた。

1日に何ページ読み進め、本を読んでは何を感じたのかな。その日々の繰り返しが、その1万冊になっていたのだと思うと、人生だ。

1万冊、もしくはそれ以上の本を読んできたおじいさんに、

「その中でも手元に残しておいた本はありますか?」と訊ねると3冊のみ。

本を教えてくれた。

1冊目:「天の夕顔」  著・中河与一
2冊目:「邪宗門」   著・高橋和巳
3冊目:「永遠の都」  著・ホールケイン

の3冊。(接客中だけど、iPhoneに必死にメモ)


私、なんだか今後絶対読むべき本である気がしてます。

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