最近読んだ本たち(走り去った6月分)
6月はいきなり台風による大雨に見舞われた、気がする。1か月も経つと記憶がおぼろげになるのが悲しい。
以前、5月は逃げていったと書いたけれど、6月は走りさっていった。手もとに一瞬たりともとどまらぬ時の流れ、どうにかならないものだろうか。
『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』 宮崎伸治
村井理子『本を読んだら散歩に行こう』のなかで紹介されていた一冊。もちろん私は出版翻訳家ではないけれど、読んでみた。
著者の翻訳家生活の乱高下ぶりも面白いし、ちょこちょこと発露する俗っぽさも身近に感じられて、とても魅力的。読みごたえがあった。
とくに最後のメッセージには胸を打たれた。
『独立記念日』 原田マハ
もつにこみさんの素敵な記事をきっかけに読んだもの。
さまざまな境遇の主人公たちが「独立」していくさまに勇気づけられ、心がしずかに奮い立つ短編集。
終盤の『まぶしい窓』では、思わずポロッと泣いてしまった。喫茶店にいたというのに。涙もろくなったアラフォーが自宅以外の場所で読んではいけないやつだった。
もつにこみさんが書いておられたのと同様、最初のお話で「あっ」と思った。
「K市のM駅」から「T川」を渡ると「N駅(東京都S区)」という設定になっているのだ。
東京赴任中の私は、まさにこのあたりに住んでいた。高津・溝の口(神奈川県川崎市)よりの二子玉川(通称「ニコタマ」・東京都世田谷区)だった。南武線の宿河原に住んでいた時期もある。懐かしい。
『わたしのマトカ』 片桐はいり
下の記事でも触れた。映画撮影のためフィンランドで過ごした日々を綴った、片桐はいりさんのエッセイ集。ユーモアと茶目っ気がたっぷり詰まっている。
食べものがどれもこれもおいしそう。むぐむぐと無心で食べる片桐さんの姿が目に浮かぶようで、とても楽しく読み終えた。食いしん坊で好奇心旺盛で、チャーミングな方なんだろうなぁ。
豊かな気持ちになる旅エッセイ、という感じ。私もフィンランドに行き、しょっぱい飴を食べてイスケルマ(フィンランド語で歌謡曲)を聴きたくなった。なにもかもを味わいつくすスタンスで旅をする人は、きっと幸せだと思う。
『編集者・ライターのための必修基礎知識 Editor’s Handbook』 編集の学校/文章の学校
Twitterで見かけて購入した。読書のうちに入らないかもしれない、仕事がらみの一冊。
国語の成績が多少よかった人であれば知っているであろうことから、紙媒体編集の専門的な内容まで、編集・ライティングに関する知識が掲載されている。
ただ、私の知識が浅薄すぎて、網羅性がどの程度なのかはわからない。すみません。
『私の消滅』 中村文則
6月のなかば、忙しいのになにか読みたくてたまらなくなって、積読から取りだした一冊。
とにかく不気味な出だしに気持ちが吸いこまれ、一気読みした。途中、メモを取りながら。
このメモが終盤、役に立った。伏線とも言うべき謎めいた序盤から中盤の記述が、ぎゅぎゅぎゅーっと回収されていくのが快感である。
「最後まで離脱せずに読むといいことがある」系の作品だった。こういうの書ける人って、頭がいいんだろうなーと、あほな感想がわいてきた。
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6月も仕事をぎちぎちに入れてしまい、あまり多くは読めなかった。けれど、読もうと狙いを定めたものは制覇できた。うむ、ぼちぼち満足。
7月はなにを読もうかな。
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