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【Web小説】友人が奇妙な体験をした。ぽわんとしたモノに遭遇したそうだ【AI朗読】
怪異は意外と身近に在る。
俺の友人は霊感があって、変な体験をしているんだ。
『季節を告げるモノ』
あらすじ
俺は趣味で小説を書いている。
小説は体験談をもとにしていて、すべて一人の友人から聞いたものだ。
友人は霊感があり、不思議な体験をたくさんしている。リアリティーをもたせたくて聞いた話は大きく変えないように心がけてホラー小説を書いている。
でもホラーにならないことが悩みだ。
また友人が奇妙な体験をした。
「ぽわん、としたモノに出会った」と言って話し始めた。
Web小説「告げるモノ」
※音あり(音声「VOICEVOX:四国めたん」)
平日の朝。
ぼうっとした状態だけど駅へ向かっている。
出勤というルーチンは無意識でもできるのがビジネスパーソンの悲しい習性だ。
家を出て決まったルートを通って駅へと向かう。駅近くの歩道を歩いていたら足先に何かを引っかけて転びそうになった。
ぼんやりしていたところに足元の障害物は不意打ちすぎる!
派手に転びかねない状況だったけど、なんとかこけずに踏みとどまった。
突然のことで肝を冷やし、眠気は一気に吹っ飛んで意識が明瞭になった。
足を止めて速くなっている動悸を落ちつかせるよう深呼吸する。
いくらぼんやりしていたからといって、道路に落ちていた物を見逃すはずはない。
何に足を引っかけたんだ?
転びそうになった場所へ目をやった。
ほ―――ん……?
何もない。
そりゃ、そうだよな。
何かあったのなら最初から避けてる。
状況が理解できないので、まずは情報を整理していこう。
足に残った感触からどんなモノだったのか――。
靴を通して足先に当たったモノは球状をしていた。
子どもが遊びで使うサッカーボールよりは小さく、ゴムボールのように柔らかくてぷよぷよと弾力があった。
見えない球体は道路に転がっている状態ではなく、半分は地中に埋まっており、地面から出ていたもう半分に足を引っかけた。――そんな感触だった。
ふ―――む。
丸いぽよぽよかあ。
当たったモノのイメージはできたが、見えないから結局なんなのか正体はわからなくて、もやもやする。
電車に乗りこんで職場へ向かう間もずっと考えていた。
会社に到着し、自席にきたところでデスクに置いてある卓上カレンダーが目に入った。手に取ると、マス目には数字のほかに文字が書かれている。
今日は啓蟄か。
冬ごもりしていた虫が目を覚まして地中から出てくる時期だっけ……。
あっ、それかあ!
虫が目覚める時期なら、いろんなモノが地中からはい出てくるのはあり得ることだよな。
たまたまナニカが地上へ出てきたところに引っかけたのか。
う―――ん。
目覚めに悪いことしたなあ。
頬を軽くぽりぽりとかいて「ごめん」と心の中で謝った。
外はまだ寒いけど、春はすぐそこまできている。
こんなカタチで季節の変化を感じるとは思ってなくて、意外な春との遭遇にほっこりして椅子に座った。
✿
物語を書き終えると、よく思うことがある。それは――
『友人は恐怖感覚がおかしい』
この体験を友人から聞き終わったとき、「まてまて! ほっこりじゃないだろっ!」と突っこみたかった。
何もない道でナニカに――つまり妖めいたモノにつまずいたんだろう?
それはほっこりな出来事じゃなくて、恐怖体験だよっ!
声に出して言いたかったけど下手なことを言うと、友人が体験を語らなくなりそうなので黙っている。
怖く演出したいなら文を加えることもできる。あえてそうしないのは、聞いた話をできるだけそのまま伝えたいからなんだけど――やっぱりホラーにならないんだよなぁ。
■『季節を告げるモノ』了■
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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【小説】『季節を告げるモノ』
また友人が奇妙な体験をした。
「ぽわん、としたモノに出会った」と言って話し始めたんだ。
※カクヨムに投稿している物語を推敲し掲載しています
『ホラーが書けない』 より
https://kakuyomu.jp/works/16816452220402346436
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