本屋HUT BOOKSTORE & 古池弘幸建築設計事務所

HUT BOOKSTORE店主+古池弘幸建築設計事務所主宰。住所/岐阜県美濃加茂市太田…

本屋HUT BOOKSTORE & 古池弘幸建築設計事務所

HUT BOOKSTORE店主+古池弘幸建築設計事務所主宰。住所/岐阜県美濃加茂市太田本町2-4-8 営業日/金・土・日・月 営業時間/13:00-18:00 お問い合わせ/hutbookstore@gmail.comまで。建築の設計依頼も。

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古い建物をどこまで直して店の空間とするか

古い建物を今の時代に建てられる建物と同じ耐震性や快適性とすることは難しい。絶対にできないかと言われればできるかもしれないけれど、古い建物を新築同様にするためには新築以上にお金がかかる。 まず耐震性能はないに等しい。耐震という考えが建物に活かされはじめたのは半世紀ほど前で、建物も揺れに弱く、場所によっては地盤も弱い。工事中に建物が倒壊しないように補強を入れて維持しつつ、地盤を補強することになる。 石の上に土台が乗っているところも多く、新しくコンクリートで基礎を作り直したり、

    • 不安から芽吹いたものはパニック症だった

      2016年にパニック症になった話をつらつらと。 あれは忘れもしない2016年の夏(いや…正確には忘れてて調べたけど…)、彦根の湖畔近くの混み合ったスターバックスで、コーヒーとチョコレートチャンクスコーンを食べていた時に、腹の底から猛烈な吐き気が襲ってきて、一瞬平然を装おうとしたけれど、このままでは倒れると思い、食べかけの皿とカップを小走り気味で片付けて車へ戻り、2時間ほど寝転んだ。 寝て置きたら体調は多少回復していたので、早々に自宅へ戻ることにして車を走らせた。(それ以降、

      • 2023年の振り返りと2024年の抱負

        2023年が終わり2024年が始まったものの、年を重ねるごとに新年を感じる心がすり減り、虚無の心で新年を迎えている感じがしないでもない。2023年がどんな年であったか思い出すためにもスケジュール帳を見ながら1年を整理しておきたい。 1月-2月 平常運転 HUT BOOKSTOREの始まりは1月13日と遅めのスタートでしたが、実は新年早々から建築の仕事はしていた2023年。本屋は1月と2月は平常運転。 3月の写真展「台灣書店の記憶」、4月の「MARGINALIA2023」の

        • 本と本のまわりにあるものフェスティバル

          本や本のまわりにあるものが集まっているフェスティバル。本の祭り。そんなイベントがあったらいいなと思うようなことがあった。 キーワードはもちろん”本”。 どんなことが考えられるだろう…ざっと書き出してみると… 本の販売 本屋さんや集まる新刊&古本市 素人さんが集まる一箱古本市 出版社による本の販売 展示 学生マンガ部による漫画発表 絵本の原画展 場のイベント 本を読みながら聞きたくなる音楽会 詩の朗読会 書店員トークイベント 取次ってこういう仕事

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        • 本屋の日々
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          トイレの散文

          浮かんで初めて自分を知る 友の記憶から切り離され カランコロンと音とともに 目の前を白い紙が通り過ぎる 左右に動く君の手が 僕には最後の挨拶に見えた 押されたスイッチで流れ押し出されていく 散りゆく花のように舞いながら 友に気づかれることもなく この場所をあとにする 僕は君に友情を感じていた 進むに連れて固くなる体に君との絆の深さを重ねてた でも離れていく運命だと 真っ暗の道の中でわかったんだ 水の流れに身を任せ 下がり続ける体温が僕をより孤独にする 微かに残る記憶と共

          本屋の傘立て

          ずっと探していた。傘立て。かっこいいものを販売している店に足を運び、地元のホームセンターにも足を運び、ネットで調べ、SNSに出てきた広告に飛びつき、それでも直感的に”これだ”と思えるものには出会えなかった。 普通の傘立てはデザインされている。それぞれに個性があり、商品の売り場で目立つようにつくられている。お客さんから選んでもらえるように。個性がない傘立てに商品価値はないともいえる。 でも、本屋で一番目立たせたいものは「本」だ。 本も紙や形、大きさ、色、カバーデザイン、帯

          本屋の屋外イベント出店の敵は天候

          夏が終わりに近づくと古本市や本のイベント開催情報が少しずつ目にとまるようになる。もちろん、本にまつわるイベント以外のイベントも流れてきて、中には声をかけていただけることもあり、嬉しい限りでもある。 屋外イベントに出店する時に一番気になるのはやっぱり「天候」。 雨は大敵。募集要項に「小雨決行」と明記があると出店したいイベントであっても躊躇する。テントがあっても雨が入ってきてしまい、本が濡れてしまったら、その本は販売できなくなってしまう。新刊書籍に当たってしまったら...

          本屋の屋外イベント出店の敵は天候

          2021年の振り返りを大晦日に。

          忘れる前に2021年がどのような1年だったのか振り返っておきたい。2021年1月から4月の前半ぐらいまで建物の改修をし、本屋を「本屋HUT BOOKSTORE」を開いたのが4月24日。おおよそ8ヶ月の間、毎週金曜日、土曜日、日曜日、月曜日の週4日、13:00から18:00に扉を開いてきた。 オープン日の記憶とともにオープンは4月24日(土)から3日間中山道太田宿で行われる合同展示会「MARGINALIA 2021」にあわせた。本屋としての技術も知識も経験も知名度もない中でH

          古本屋で新刊書籍を扱うか悩む

          2021年4月の終わり頃に古本に加えて新刊も扱う古本屋をオープンさせようと動いているけれど、実際のところ新刊書籍を扱うか悩んでいる。 新刊書籍を扱うよい点新刊書籍を扱うよい点はもちろんあると考えていて、 1点目は店内に新しさがプラスされる。過去の書籍が並ぶ古本屋の中にあって、新刊書籍は現在進行形の新しい本。本の内容だけではなく、装丁やデザイン、フォントなども今を表す。そういう意味でも自分自身も手に取ってみたいと思う。 2点目は店内の新しさが継続される。継続的にいろいろな

          古本屋で新刊書籍を扱うか悩む

          一箱古本市の開催が減り部屋に本が積まれていく

          新型コロナウィルスの影響で人が直接対面するイベントの開催が難しくなって久しい。特に2020年春頃は新型コロナウィルスがどのようなウィルスなのかが分からず、開催が予定されていた一箱古本市は軒並み中止となり、秋頃には開催された一箱古本市もあったけれど、オンライン開催に切り替えたものもいくつもあった。 自分はHUT BOOKCASE名義で2018年には3ヶ所、2019年には5ヶ所の一箱古本市に出店し、さて2020年もと思っていたところに新型コロナウィルスが猛威を振るい始めてしまっ

          一箱古本市の開催が減り部屋に本が積まれていく

          過去に刻まれた記憶に今の時代の価値観を加えること

          朽ちる一歩前を美と捉えるかゴミと捉えるか HUT BOOKSTOREとして古書店を開こうとしている場所は、歴史ある建物でもなければ、文献的な意味もない。どこにでもある古い建物にすぎない。その建物に関わってきた住み手や作り手、建物に出入りをしていた人、風景として眺めてきた人など、各個人が抱える思いがあるだけ。 それぞれの思いの集合体が歴史と言えるかもしれないけれど、その小さな1つがなくなったことで何かが大きく変わるわけでもない。 古い建物を見た瞬間に汚れたボロボロの建物と捉

          過去に刻まれた記憶に今の時代の価値観を加えること

          改修前の建物の現状

          古書店を開こうとしている場所は、岐阜県美濃加茂市の中山道太田宿にある木造2階建ての3軒長屋の右端。街道沿いだけれど、建物自体は江戸時代から続くような歴史はなく後から建てられたもの。 左端は元々薬屋さんであった場所を漆継を行う「nipponia」へと姿を変え、真ん中は昔から続く宝造園生花部(花屋)、右端は鮮魚の卸や煮付小売りなどを行う魚徳さんの店舗であったけれど、この場所から100mほど西側へ移転し、その後、海外の家族が住まわれていた場所を自分が借りる形となった。 建物の状

          物件との出会い

          古本屋をやれる場所があったらいいなと思いはじめて2、3ヶ月ほど経った2020年8月。岐阜県美濃加茂市の空き家バンク「みのかも時間」を見ていたら、中山道太田宿沿いの物件が掲載されていた。 物件は木造2階建て。以前は床屋さん(たぶん・・・。)で道路面に店舗スペースがあり、奧に台所や浴室などの水まわり、2階はリフォームされて綺麗になった個室がいくつかあった。水まわりの改修が必要なものの、元店舗であれば古本屋として活用できるスペースが確保されていて都合がよく、グーグルマップで確認す

          古本屋を作ろうと思ったきっかけ

          スケジュール帳を開いてみると2020年6月27日に三重に足を運んだと書かれていて、自分が古本屋をやり始めようと思ったきっかけは全てこの日から始まったと思っている。 この日の目的地は三重県尾鷲市九鬼町にあるトンガ坂文庫。2018年に伊勢市で行われた伊勢河崎一箱古本市に出店した際にブースが隣同士になり、そこから仲良くさせてもらっている青波堂さんと一緒に行こうと予定を合わせていた。 朝から車を走らせ高速道路に乗り、降り立った場所は三重県紀北町に6月27日にオープンした「cafe

          古本屋を作ろうと思ったきっかけ

          細部に宿るブランド

          家具を見た瞬間に「この家具はIKEAのだよね」と分かるときがある。IKEAのお店で見たことがある家具はもちろん、初めて見る家具であっても。IKEAの商品と分かる理由はなんだろうか。 形と答えたいところだけれど、形は分かりやすいので割愛する。 まずは素材。IKEAが使う木材は無垢板が多い。価格が安い商品はパイン、バーチ(カバ)、ビーチ(ブナ)などが多く、高額な商品はゴムの木、オーク(ナラ)が使われることもある。塗装もアレンジしやすい無塗装、水回りにも使えるアクリルラッカー塗

          「花のための庭」と「家のための庭」

          住宅街を歩いていると、殺伐とした庭から花に埋もれるぐらいプランターが置かれた庭、剪定されることなく木が育ち続けている庭、お金をかけただろうなと思う庭まであって本当に面白い。 家と違って住まい手の個性や生活スタイルがそのまま現れているようで想像がふくらむ。特に花が大好きで花のための庭をつくる住まい手の方と建物を設計する人とは対局にあるように思う。 花が大好きな方の庭を訪れると、花に視線がいくようなプランターや植木鉢に花を楽しめる植物が並ぶ。花が咲き終わったら花がすぐに咲くよ

          「花のための庭」と「家のための庭」