一箱古本市の開催が減り部屋に本が積まれていく
新型コロナウィルスの影響で人が直接対面するイベントの開催が難しくなって久しい。特に2020年春頃は新型コロナウィルスがどのようなウィルスなのかが分からず、開催が予定されていた一箱古本市は軒並み中止となり、秋頃には開催された一箱古本市もあったけれど、オンライン開催に切り替えたものもいくつもあった。
自分はHUT BOOKCASE名義で2018年には3ヶ所、2019年には5ヶ所の一箱古本市に出店し、さて2020年もと思っていたところに新型コロナウィルスが猛威を振るい始めてしまった。
2018年
9月16日 岐阜 美殿町本通り
10月20日 愛知 円頓寺 本のさんぽみち
10月28日 三重 第4回 伊勢河崎一箱古本市
2019年
3月9日 三重 グッドオールドマーケット 古着&古本市 vol.1
9月15日 岐阜 美殿町本通り
10月26日 愛知 円頓寺 本のさんぽみち
10月27日 三重 第5回 伊勢河崎一箱古本市
11月10日 三重 第3回 熊野古道一箱古本市
出店していた一箱古本市は愛知県・岐阜県・三重県の3県。新型コロナウィルスの感染者が多い愛知県に引っ張られる形で同じ経済圏にある岐阜県・三重県も感染者が増え、出店していた一箱古本市は全て開催の目処が立たなくなってしまった。
このような状況になると難しいのが本の行き場がなくなることだ。一箱古本市に出店することで本棚に並んでいる本が次の方へと渡っていた流れが止まってしまい、本棚に並んでいる本の手前に新しい本を並べ始め、本の重みで本棚の板がたわみ(カーブ)し始め、さらに並べることができなくなった本が押入の隙間を占拠していく。
その結果、視線に入らなくなった本は記憶の縁に追いやられ「この本持ってたはずなんだけど・・・」と読み返したい時に探せない状況が生まれていく。もうどこに置いたのかが分からないのだ。
さらに、買って読んだ本を本屋さんで初めて見たかのような反応をした上で買ってしまう。そんなことが続いたことで、自分自身の許容量をオーバーしてしまっていると実感したのだった。
この状況を打破するためにも古本屋を開き、手にとってもらった方がいいかもと思ったきっかけの1つだったと思う。眠ってしまっている本は必要としている人の元へ、探せなくなっている本は本棚へ見える形で並んでいた方がやはりいい。
本を手に取れる場所がほしい
少しずつ増え始めてきたオンライン開催の一箱古本市。ただ、どうしても気持ちが入らない自分がいる。自分にとっての一箱古本市の良さは、箱主がそれぞれの趣味嗜好が偏った本を一ヶ所に持ち寄って集まることの面白さにあり、集まった場の空気感が好きというところが大きい。並んでいる本をパラパラとめくりながら、本の味を手で味わう楽しさもある。
オンライン開催の場合は視覚的に本をみることはできるけれど、Amazonなどと価格を見比べることもできてしまい、一箱古本市の面白さが半減してしまうような気がしてしまう。
本を手にとってくださった方は、どのような容姿、声、雰囲気なのかというところも一箱古本市の出店をしていると楽しいポイントであったりもする。足が悪くて台に手をついてたおじいちゃんだったなとか、子どもを抱きながら本を探していたなとか、音も立てずにそっと立ち寄ってくれたとか。
機械的に右から左へ本が流れていくのも悪くはないかもしれないけれど、自分としてはそういう場所が好きだなと思う。
そういう意味でも、HUT BOOKSTOREとして開く古本と新刊を扱う店はネット販売は行わない予定でいる。建築設計事務所という本業をしながら副業感覚での店ということもあるけれど、本を写真に撮ってアップロードし、梱包して配送する時間が作れないと考えている。全てを覆い隠して格好良く言えば、数を売るよりも場の空気感を優先したいと書いておいた方がいいのかもしれないけれど。
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