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古い建物を直し、本屋にして3年。起こった問題点。

古い建物を直し、本屋にして3年。不具合がなかったかと言われれば……正直ある。予想していた問題もあれば、全く予想しない問題も発生していて、どうしたものか…と対応を考えたものもあるけれど、まぁーいいかと開き直っていることの方が多い。

ざっと上げると、

  • 天井から砂がパラパラと

  • 壁のひび割れ

  • 壁にカビ発生

  • 下屋部分から雨漏り

  • 強風豪雨で戸の下から雨水が侵入

軽微なものから重大なものまで、思い浮かぶのはこの5つくらいだ。

天井から砂がパラパラと

本屋スペースの天井は、前の住人が取り付けた天井板を撤去して、天井裏であった部分がみえる形で使用している。天井を見上げるとみえるのは、梁と2階の床板で、床板の上に新聞紙を敷いて畳を置いたら、もうそこは2階の床ということになる。

天井を見上げると梁と床板が見えている

長い年月の砂埃が床板の隙間に挟まっていて、強い風が吹いて建物が揺れたりすると、その砂埃がパラパラと店内に落ちてくるという問題が発生していた。

一番被害を受けたのは、店内中央に置いた台の飢えの新刊書籍で、その度に手で触るとジャリジャリと感じるほどだった。

ただ、それも1年が経ち、2年が経ち、時間が経つごとに砂埃が落ちきったようで、今ではほとんど砂埃を感じることはなくなった。(よかった…)

壁のひび割れ(クラック)

建物を直す際に、屋内の壁は木下地の上に石膏ボードを張り、その上にローラーで塗装する形で仕上げている。遠くから見ると分からないけれど、近くで見ると塗装が割れているのが目に入る。しかも、かなりの部分で割れている。

原因は、強風で建物が横揺れしたり、目の前の道路をトラックが走ることでドドドドンという振動が地面から建物に伝わり、縦に揺れることなど、いくつも考えられる。

壁が割れる場所は、石膏ボードと石膏ボードのつなぎ目のところ。ボード同士の隙間はパテで埋めてはいるけれど、パテは柔らかく強度はない。結果、弱いところに力が集中してパテが動き、パテの上の塗装が割れるという流れになる。

ピシピシッと壁の塗装が割れている

壁のひび割れは当初より予想していたことで、どのくらい割れるのか興味があった。
正直なところ、かなりの部分で割れているけれど、もっとバキバキに割れると思っていたので、想像以上に健闘しているなとも思っている。

このひび割れは、補修をしてもまたすぐに割れるので、今後も放置します。

壁にカビ発生

「壁のひび割れ」は予想していたけれど、全く予想していなかったのは「壁のカビ」だった。床下の空気に触れる部分の壁(本屋の床から50cmくらいのところまで)に点々が無数に発生した。広がっていく気配はないのだけれど、なんとなく見栄えが悪い。

カビの斑点はやっぱりきれいじゃない…

中山道太田宿は木曽川のすぐ近くで、土壌の土質は非常に水はけが悪い。近くの空き地は雨の日にすぐ水たまりができるし、晴れた日も土は濡れた色をしている。その部分には草も生えない。

そんなことから、床下がいつも湿っているのだと思われる。

施工時に壁に防湿シート張っておけば、多少カビの発生は抑えられたかもしれないので、建築設計事務所として学びがあったところだと思う。(やってみないと分からないこともあったり…しますよね?)

下屋部分から雨漏り

建物はほぼ2階建てなのだけれど、少しだけ下屋(平屋)部分が存在する。天井同様に見上げると、屋根を支える垂木と野地板が見える。

古い建物では、野地板の上に土を葺いて瓦を置く、土葺き工法が用いられるのが一般的で、この建物も土葺き工法となっている。

つまるところ、目に見えている野地板の上に土が乗っていて、その上はもう瓦ということになる。

台風や強風で斜めから雨が降ると、瓦の隙間から雨水が侵入する。少しぐらいの雨水であれば土が吸収してくれるのだけれど、大量の雨水が一度に入ってくると、吸収しきれず野地板の隙間から雨水が店内に落ちてきてしまう。

3年間のうちに、1度だけ雨漏りが発生した。

その時は、東からの強風+豪雨で、垂木にシャパシャパシャパと雨水が走り、店内にボタボタボタッと雨水が落ちてきた。本が濡れる被害はなかったけれど、合板の本棚が濡れて、今でも雨水の跡が残っている。

後日、野地板の隙間をコーキングで埋めてみたけれど、ほぼ効果はないだろう。

野地板の隙間を透明のコーキングで埋めた跡が残っている

抜本的な解決をするためには、瓦をすべて剥がし、土も落とした上でルーフィングを敷き、瓦を葺き直す必要があるのだけれど、うちは三軒長屋。そう三軒が繋がっているので一軒だけ工事することは不可能。それに、借りている建物でそんなにお金はかけられない…結果、強風+豪雨が来ないことを祈るしかないのが現実だ。

強風豪雨で戸の下から雨水が侵入

強風+豪雨は古い建物にとって脅威でしかない……雨漏れに続いては、床からの雨水侵入。当店は、住宅で言うところのポーチ部分と店内がフラットで段差がないつくりになっている。

当店の入口は、通常の戸と格子戸の2重の戸があり、すべての戸にレールがあると、店内に入りにくい(レールを踏まないようにしようとすると…)ことから、格子戸に比べて軽い通常の戸は吊戸になっている。

吊り戸のため床にレールがない
吊り戸のため下部に隙間がある

結果、何が起こったか…

豪雨のときに、ポーチ部分に落ちた雨水が強風に乗り、店内の方へ向けて雨水が走ってきたのだった。大量の水が入ってきたわけではないのだけれど、戸の近くに置いている本棚の底の部分が濡れたという事件が発生した。

元々の計画では、15mmほど段差を設ける予定であったのだけれど、床を施工したのがモルタル施工”も”したことがある職人さん(安く請けてくださったので…)で、難しいことはできないということから、フラットにした経緯がある。

やっぱり段差は重要。身を持って知った出来事でした。

現在は、本棚の下に5mm程度のゴムを敷いて、本棚を浮かせているので、多少の雨水なら大丈夫なはず。

いつでも起こるよね。問題は。

なんの問題もないような感じで本屋をしておりますが、古い建物を直して店をやっていくのは大変だよねという話と、計画してつくっても想定外のこと起きるよねという話でした…

その時々に起こった問題に、あるときは対応を、あるときは目をつむりながら、これからもやっていこうと思います。


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