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本屋を始めて増えた備品や什器たち

前回書いた「古い建物を直し、本屋にして3年。起こった問題点。」は、建物自体の話だったけれど、今回は「本屋の備品」の話を書いていこうと思う。本屋を始める前は、ここに看板を付けて、本棚を置いて…と考えるのだけれど、オープンしてすぐにその考えは甘かったと知ることになる。(きっと本屋を始めた人全員がそうなっていると思いたい…)それぐらい、計画通りにいかない現実が待っていた。

増やした(増えてしまった)備品や什器は、

  • 本棚(棚)

  • 展示台

  • 照明器具

  • サインスタンド

  • サーキュレーター

  • 日除け布

大きなものはこれぐらい。

本棚(棚)

本屋の本棚は空気を吸うぐらい簡単に増えていく。きっとこれは真理だと思っている。本棚が増えない本屋さんなんてあるのだろうか…いや…ないはずだ。きっとない。ないと思いたい。

本屋をオープンした当初は百冊単位の古本と、十冊単位の新刊書籍で始めたのだけれど、1、2年後には1500冊以上の古本と、500冊ぐらいの新刊書籍に増えた。本屋をオープンした当初の本棚はスカスカで、棚差しだけでは棚が埋まりきらないので、面陳列もしてスペースを埋めていた経緯がある。

「古本も新刊書籍も本は徐々に増やしていこう」

そう思っていたら、本棚に入り切らないほど本が増えていた。ある意味、確信犯的行動だとも言える。

本屋を始めて1年半後に、絵本をいれる本棚とデザインや芸術、建築などのジャンルの本を入れる本棚を増やした。本棚は既製品ではなく、設計をして建具屋さんに作ってもらったものだ。

絵本をいれる本棚(棚は角度付き)
デザインや芸術、建築などのジャンルの本を入れる本棚(左)とZINE用の棚(右)

元々、当店がオープン当初から使用している本棚は、自分で本棚を設計して作ってもらったもの。材質はラワン合板で、角の部分を45度でカットしている。こうすることで、厚みのある頑丈な本棚なのだけれど、見た目はゴツすぎないスッキリとした本棚ができあがる。
既製品を購入した方が確実に安いのだけれど、表面がプリント化粧紙の本棚はどうしても受け入れられなかったこと、全体の雰囲気に統一感がでること(当店はトイレの戸などもラワン合板なので…)から、作ってもらう流れとなった。

昨今の材料費や工事費の高騰で、2本の本棚は金額が1年半前の何割増しにもなっていて製作費は高かった…(ちなみに今注文したらもっと高い…)

そして、もう1つ棚は増えている。ZINEを置く場所をつくるべく、古本市出店時に使用する台(ファルカタ合板)の端材を使って、棚を自作した。すぐほしかったので、適当にノコギリで合板を切って作ってしまったのだけれど、完成した棚がショボい…。もうちょっとしっかり作ればよかったと後悔している。

展示台

愛知県犬山市にある出版社Landschaft(ラントシャフト)さんが発刊した「線と言葉 楠本まきの仕事」の出版を記念して、本屋をオープンして3ヶ月後となる2021年に、Landschaftさんの本の販売と原画2点を展示する特設コーナーを期間限定で作った。

「線と言葉 楠本まきの仕事」の出版記念展示

什器が全くなかったため、本棚と同じラワン合板で箱状の展示台を木材屋さんに作ってもらい、展示台に本を平積みに置きに、額縁に入った原画2点を並べる形で展示をした。

展示台は、木材で骨組みを作り、表面に5.5mmの薄いラワン合板を張り付ける形で作ってもらった。厚めの合板で作られた棚とは違い、比較的軽量なため一人で運ぶことも可能。展示台は動かすことも多いので、力のない自分としては軽いのは重要なポイント。

この展示台は、今でも展示の際に使用したり、個人出版や小出版社の本を並べたりと活用している。

照明器具

照明計画は誤算だったことの1つ。

当店の照明器具は、天井に取り付けたダクトレールにレール用の照明器具を取り付けるもので、本屋スペースに40W×6と60W×1、レジスペースに40W×1、後に展示室となるスペースに40W×1で計画していた。いざ照明を点けてみると…

暗い…

日中は太陽の光が店内に入ってくるため問題ないのだけれど、太陽が沈むと店内全体が薄暗くなり本が探しにくく、読みにくいという問題が発生した。さらに、本棚の正面に立つと後頭部あたりに光源があるため、自分の影で本棚の本が見にくいという事態にもなっていた。

本来、光源から発せられた光は、壁や天井、床、家具などに反射をして、さらに部屋を照らし、その反射光がさらに反射し…部屋全体を明るくする。
住宅のように壁が白であれば必然的に光が拡散するのだけれど、当店の壁に塗った塗装の主成分は粘土、天井は昔ながらの木、床はコンクリート。本棚はラワン合板。どの材質も光を反射させるよりは、どちらかといえば吸収してしまう素材。光の反射光は望めない…

そうなると、明るくするためには照明器具を増やすしかない…

その結果、現在は本屋スペースに40W×5と60W×6、レジスペースに60W×2、展示室スペースに40W×4という構成に現在は落ち着いている。光源的には2倍位上の明るさになり、ようやく「これぐらいでいいかな」という感じになった。(ここまでくると、40Wを1つ増やしたところで大して変化は感じられないほどに…)

消費電力の低いLED照明がある時代でよかった…

現在はダクトレールにはたくさんのスポットライトが取り付けられている

サインスタンド

本屋の定休日や開いていない時間帯には、入口にサインスタンドを置いている。サインスタンドには店舗名、営業時間、定休日が書いてあり、お客さんに、いつ本屋が開いているかお伝えしている。(それを見た方が「閉めすぎなんだよ!」と言っている声が店内にいる自分にも聞こえてしまうこともあります…)

サインスタンドの形状は、博物館や美術館などで使用されるようなスッキリとした形状で、サイン部分には、PCで製作したものをコピー用紙に印刷し、厚さ3mmのスチレンボードに貼ったものを取り付けている。(本来は、白のアクリル板を取り付ける。)

サイン部分のサイズを変えられて、自由に取り換えも可能なため、臨時休業やイベント時には別のものを取り付けることができるため、重宝している。

黒のサインスタンド

以前は、入口の横にある腰の高さぐらいの棚の上に、営業時間や定休日などを書いた紙を額縁に入れて立てかけていたのだけれど、見られることなく入ってこられる方もそこそこ多く、どうしたものかと思っていた。

結果、定休日などに店内奥に照明が点いていても、本屋に入ってこようとするお客さんはほぼいなくなったため、サインスタンドの方が分かりやすいんだということが分かった。

サーキュレーター

当店は古い建物のため、夏は比較的涼しく(いや…岐阜なので暑い…暑いんだが…)、冬は寒いという環境で本屋をしている。冬の間はストーブを点けて営業しているけれど、本屋スペースの天井高が3.1mほどあり、暖かい空気はどんどん上がってしまい、足元は寒いという状況が生まれてしまう。(手を上へ伸ばすと手だけ温かいと明確にわかるくらい差が出る…)

それを打開するために、天井にサーキュレーターを取り付けて、温かい空気を足元に送り、本屋の中の空気をぐるりとまわしている。

最初は据え置き型のサーキュレーターを天井に向けて回していたのだけれど、あまり上手く空気が回らなかったので、天井取付型に変更したら、ほどよく空気が混ざってくれるようになった。しかも、サーキュレーターを置きたい場所に本が置いてあることも多々あり、本を移動させるなどの問題が発生しないのが非常にいい点でもある。

日除け布

当店は南向きに入口がある建物で、もれなく太陽光が店の中に入ってくる。夏場は軒が遮ってくれるため問題ないのだけれど、冬場はしっかりと本棚に直射日光が当たる。

入口の戸はガラスではなくアクリル板(UVカット仕様)なので、本へのダメージはそこそこは抑えられているはず(それでも紙質によっては、直射日光が当たり続けてしまうと焼けて退色してしまう)だけれど、本に直射日光が当たっている状態が、気分的に落ち着かない。(本に直射日光を当てたくない!という気持ちで落ち着かないのだ。)

その結果、冬を中心に秋の終わりから春先まで、入口付近に柔らかい雰囲気の布(知多木綿)をかけて、本に直射日光が当たらないようにしている。UVカット100%などの生地の布は、性能的には理想だけれど、店内が暗くなるので採用は見送っている。

外から店内が見えにくくなってしまうのだけれど、お客さんの入りに変化はないように感じたため、今後もやっていくだろう。

備品も増える…什器も増える…

「何かをやろう」、「問題を解決しよう」とすると自然と増える備品や什器。上記のように目に見えて分かる大きなもの以外にも…

「ちょっとここに棚ほしいからホームセンター行ってくる」というところから、合板、ビスに加えて、トンカチ、ドライバー、ノコギリ、塗料、刷毛、マスキングテープやマスカー、手袋など…お金が次々に飛んでいき、トータルすると多くのお金を使ってしまっている。

イベントで黒字になれば…本をたくさん売れば…そんな上手くはいかないもので、本屋の環境が良くなっても劇的に売り上げが伸びるわけではなく…書きながら自分に言い聞かせてますが、自己満足の領域でもあり…でも、気になるところは解決したい。

悩ましいところだ。

さらに、使用しない時期に片付けておけるバックヤードは必須。当店は本屋スペースの奥に何部屋かあり、物を置くには困らない。非常にありがたいと思う反面、だから備品や什器が増えるのでは…とも思わなくもない…。


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