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【映画スラムダンク】5回見に行って気がついたことなどを元バスケ部が自分なりに解説する


はじめに…こちらの記事を書いた当初は5回でしたが、4月の時点では鑑賞会数12回を超えています。どうせこのまま鑑賞回数が増えて行くと思うので、タイトルの鑑賞回数は5回のままにしておきます。

追記:最終的に数えられる分だけ数えたところ26回でした。ありがとうございました。まだまだ歴史更新したいので、復活上映お願いします!


人生で初めて同じ映画を5回も見るという私にとって史上大快挙を成し遂げてくれている「THE FIRST SLAMDUNK」 !

大好きなロックバンドと大好きなバスケが組み合わさったらそりゃ神映画決定なんよ。。。

日本どころか世界中でもスラムダンク旋風が巻き起こっていると言うことで、リピーターには「ここに注目して欲しい!」というシーンと、「バスケもスラダン知らないけど気になる」という方には「なぜあのプレイが凄いの?」という疑問を元バスケ部なりに解説したいと思います。

何回かスラダンに関しての記事を書いてますが、漫画とアニメでは印象が変わったり、映像化して理解出来たプレイもあるので、読みやすいように以前書いた記事からも抜粋して書きます。


山王戦についての解説

1.ゴリのトラベリング

「3歩歩いたらダメ!」なのは知ってる方が多いと思いますが、このトラベリングは実際バスケやってた人しか分からないと思うので解説。

※現在はゼロステップが導入(端的に言うと3歩歩いても良いというルール)されていますが、ややこしいのでこれはスラムダンク当時のルールで解説します

例えばボールを持ったまま右左右で歩いた場合、3歩目の右足がカウントされるのでトラベリングになる。

だがどの選手もやっている通り、ピポット(片足を軸足にして動くこと)で右足を軸にした場合、左足がいくら動いても永遠に2歩目とカウントされるので、いくら動かしてもトラベリングは取られない。
(但し、ボールを持ったまま5秒経つと相手ボールになるのでどちらにせよ限界がある)

この原理だとゴリのトラベリングはセーフなのでは?と思うが、ピポットしている軸足をドリブルする前に浮かせてしまうと、床から足が離れた途端に「3歩目」とカウントされてしまうので、ゴリはトラベリングを取られたと言うわけである。

策としては、足を浮かす前にドリブルしていればOK。

2.素人・花道が理解出来なかったスイッチ

この時の山王のプレイはゴリ→丸ゴリ(河田兄)、花道→ポール君(野辺)をマークしているが、ポール君がゴリにスクリーンをかけにいき、丸ゴリをフリーにするという作戦である。

スクリーンとは?

→味方をノーマークにしてシュートさせやすくするため、相手のディフェンスの邪魔をすることである。

みんなして手をグーにして下でクロスしているのは、ファウルを取られないようにするため。

スイッチとは?

→ディフェンスで使われる用語で、スクリーンをかけられた時などマークしている相手を一時的に入れ替えることである。

バスケでは「ノーマークを作らせないことが大事」なので、身長差があろうが必ず1 vs 1になるようにする。

「花道の素人さを引き立たせるためにスイッチのことを知らなかった描写が好き」という話だけど、次の丸ゴリダブルクラッチの伏線のための見出しでもある。

3.丸ゴリ、花道の身体能力の高さに気が付く

直後、丸ゴリがフリーになったと気づいた花道が、スイッチの意味がよく分からないまま反射的にシュートしようとする丸ゴリを止めにかかる。

画像お借りしました

漫画では「あれ、まだいる…」が分かりづらいと思うので解説。

花道の何が凄いかというとジャンプした時の滞空時間

丸ゴリがダブルクラッチしても、花道はまだジャンプした時の最高到達点にいたのだ。

ダブルクラッチとは?

→シュート体制に持ち込んだ時、ジャンプした時一度ボールを下げてディフェンスを交わしてからシュートを打つ技である。

沢北が3人交わしてシュートを決めた技もこのダブルクラッチである。

実際はジャンプした一瞬でボールの上げ下げをするので、滞空時間を考慮するとシュートをするときに狙って踏み込まないとシュートに間に合わなかったり出来なかったりする

またDFを交わすときに一度ボールを下げる必要があるので、他にDFがいないか視野が広くある必要もあり、身体能力だけでなく空間認知能力も必須となる高難易度の技である。

丸ゴリは一瞬遅くマークが遅れた花道を交わそうとダブルクラッチをしようと踏み込んだが、予想外に花道はダブルクラッチしてボールを再度上げようとした時にも花道はジャンプの最高到達点にいたのだ。

丸ゴリのヤバイところは言わずもがな身体能力とスキルに加えて、一瞬にしてド素人・花道のポテンシャルの高さを言語化出来ることである。

4.リョータは安西先生の言葉によって気がついた

後半開始早々、山王のオールコートプレスに対応出来ずあっという間に20点差に突き放された湘北はタイムアウトを要求。

スピードにおいて深津より分があると見た安西先生はリョータ1人でボールを運ばせると言う奇策を決行。

漫画だと「湘北の切込隊長ですよ」と言うところが、映画では「宮城君、ここは君の舞台ですよ」に変わっているんですよね。

リョータのあのハッとした表情は、きっと今まで失踪した兄のために立ち向かっていたリョータが安西先生の言葉で「山王とコートに立っているのは兄の身代わりでもなく自分自身」と気がついた瞬間なんですよ。

そんな演出したら泣いちゃうじゃん…

5.深津のインテンションファウル

三井のパスカットからリョータがこぼれ球を拾い、速攻しかけようとした時に深津が後ろからリョータの腰を掴み、インテンションファウルを取られる。

インテンションファウルとは?

→当時の正式名称は「インテンショナルファウル」、現在は「アンスポーツマンライクファウル」に改称。

故意のファウルや、スポーツマンシップに欠けた悪質な行為と見なされた場合に取られるファウル。相手に2本のフリースローに加えて相手チームからのスローインが与えられる。

チームファウルとしてはペナルティの重さは他と変わらず1つとして数えられるが、サッカーで言うイエローカードと同じくらいのファウルの中でも注意度が高い。


この時のインテンションは深津がリョータに対して①リョータの視界に入らない真後ろから②腰を掴んで③速攻を阻止しているという点で、悪質だとジャッジされたのだと思います。

これはガッツリ後ろから腰掴んでいるので、あれはどの審判でもインテンション取ると思う。もし私が山王ファンだっとしてもさすがに後ろから掴むのは擁護出来ないかなあ…多分リョータのスピードについていけない深津の焦りから手が出たんじゃないかな。

堂本監督すらが動揺しているのは冷静沈着なキャプテン・深津がファウルで最も注意度が高いインテンションを取られている事に対してだと思う。

神奈川県予選では海南・牧の花道ダンク阻止(牧のファウル)と翔陽・藤真に後ろから花道が飛び掛かっている(花道のファウル)シーンでインテンション取られているけど、どちらも「そりゃインテンション取るわ」と思うぐらいにわざとだったじゃないですか。

その対比を考えると、一見普通のファウルに見えてしまう深津のインテンションはそれはそれでなかなかの衝撃だった訳です。

6.花道、ポール君のユニフォームを引っ張る

これも審判に見つかっていたら完全にインテンションファウルですが、花道は素人なので常識かぶれのバスケは通用しません。

そもそも、バスケのユニフォームの素材って伸びないんですよ。映画では質感がかなり柔らかく見えるけど、実物はサテン系の素材をもっと分厚くしてスポーツ向きにしたという感じ。バスケやってた当時は着替える時汗が張り付いて大変だったな〜。

だから花道みたいにユニフォームを引っ張られるとTシャツとかジャージとかと比にならないぐらい動けない。あとポール君がユニフォームを引っ張られたのが初めてだから動揺したと思う。

7.リョータ、冷静沈着な深津を見習う

リョータは「こいつ動揺とかしないのかよ、追われる側のプレッシャーてのがあるだろうよ」と焦る様子を見せない深津に若干の戸惑いを見せる。

ずっと兄の「心臓バクバクだけど、目一杯平気なフリをする」だけを胸に抱えていたリョータは、目の前に平気そうなフリをしている深津を見て「深津がそうなら俺もそうする」と思って一旦仕切り直しているように見えるのがいいんですよね。

山王戦は技で技を返しているのが見どころだけど、花道の丸ゴリシュート、流川の沢北シュートとプレイでは分かりやすいけど、精神面では分かりづらいこのリョータvs深津のシーンも注目して見て欲しいな。

8.流川覚醒

1on1で沢北に全く歯が立たない流川は奥義・パスに覚醒。

画像お借りしました

パスなんて基礎中の基礎だし、流川は神奈川県大会で1年ながらベスト5に選ばれるほどにスキルが高いけど、性格が天上天下唯我族尊男なので「1人やりたい」ってだけなんですよね。

でも流川は沢北を前にして「自分の力で勝つ」というプライドをも捨ててシンプルに「勝ちたい」という気持ちが勝った。

流川がダンクすると見せかけてミッチーにパスした時「奴は打てねえ!」と言われた瞬間、生意気だけど先輩にはちゃんと敬語使う流川が「そんなタマじゃねえよな?」と先輩に向かってタメ口きいちゃうシーン(実際は脳内セリフだが)、好きすぎるんだよな〜〜〜!!!

10年以上ミッチー派閥だったのに、スラダン映画で覚醒流川を見れば見るほど流川のこと好きになってくんだけどどうすりゃいいだこれ???

9.リョータがダブルチームを突破できた理由

※2023/1/19追記

日本の全ガードを鼓舞してきた名シーン・名台詞「ドリブルこそチビの生きる道なんだよ!」のところ。

映画だと細かすぎるのと突破した時の疾走感が激しすぎて見落としがちなんですが、実はプレス突破前に小技を使ってるんですよ。

TO明け、リョータを潰すために山王はすかさず再度オールコートプレスを仕掛ける。

ダブルチームとは?
→ディフェンスで使われる用語で、ボールを持っているプレイヤーに対して2人のディフェンスが付くこと。

リョータから見て左沢北・右深津でダブルチームの場面、リョータは「こんなデカイやつらに阻まれてどうする?」と思いながら、沢北と深津の間に一瞬の隙を作ろうと企む。

リョータがプレス突破する直前、やっていることは分かりづらいけど最低限の動きで左(沢北側)にフェイクかけてます。漫画でのリョータからみて沢北が左に動いている描写が答え。

一方の沢北は流川を置いてまでリョータのマークに当たっているので、おそらく沢北の頭の中では中盤のリョータ1人でボールを運ぶ湘北の作戦はすっかり忘れており、リョータ→流川へのパスの方が恐れていたのと思います。

からの…

自分の過去、長年遠のいていた親子の距離、そして日本No.1ガード&No.1プレイヤー、全ての壁をぶち破るプレス突破!


力づくで無理矢理突破しているように見えるけど、リョータはフェイクをかけて沢北と深津の間に隙を作ったのでこのダブルチームを突破出来たと言うわけです。

「なんで沢北がこんなフェイクにかかるんだよ笑」と思うかもしれませんが、沢北は直前の流川に猛攻により完全に流川の手のひら、ディフェンスにおいては精神的には不安定な状態なので、どんなに小さなフェイクでもかかってしまっているんだと思います。

10.三井寿、知性と飛び道具全開の4点プレイ

この記事で解説しているけど、この4点プレイ前の動きもかなり重要なので改めて流れとともに書きます。

パスに覚醒した流川は vs沢北に置いて連続してパス、パス、パス、ドライブからのティアドロップ(沢北シュートの正式名称)、スリーポイントとエースらしい怒涛の猛追を見せる。

残り1分切り、花道のブロックのこぼれ球を拾ったリョータが流川・三井と共に速攻、深津と丸ゴリが待ち受けている3 vs 2の局面。

この時いくつか攻撃パターンは考えられたが、試合の秒数を逆算しても三井のスリーポイントバスケットボールカウントしか逆転勝利の道はないのだ。

リョータがボールを運んでいるので、展開としてはこのような形が考えられる。

1.流川にパス→絶対無し

直前の流川の猛追により深津と河田は流川へのマークを厳しくするはずだし、流川の性格なら絶対にドライブするので2点(バスカンでも最大3点)しか取れない。

その後、同点に追いついて延長戦となると主力の花道と三井が瀕死状態なので確実に山王に利があること、また3Pを打てる選手が湘北には三井と流川しかいないので逆転は不可能近い。

流川本体としてはただ走っていただけなのだが、直前までのプレイで流川という存在自身が布石にもなったプレイである。

2.三井の3P→これしかない

三井は「俺にはリングしか見えねえ」ので、どれだけドライブ出来る隙が空いていようが確実にどの局面でも3Pを打つのが三井。しかし、ただ3Pを打つだけではないのが元中学MVPの頭脳。

布石を敷いた流川を利用し、リョータが流川にパスをすると見せかけ、ノールックで三井にパス、この時点で三井をマークしている松本が三井に飛び掛かる。

三井にはドライブが無いにも関わらず、パスを受けたミッチーには3つの選択肢が生まれます。

  1. ボールを持ってすぐ打つ
    →フリースローは「シュートを打った時にファウルされたらもらえる」ので、審判によりけり「シュート体制に入っていない」とジャッジされれば、フリースローがもらえない可能性がある

  2. フェイクしてワンバウンドしてから打つ
    →東京オリンピックの女子・ベルギー戦で林選手が逆転3P決めたように、通常ならフェイクをかけて交わしてからシュートを打った方がノーマークになるので3Pの成功率が高い。

    2点差や残り時間3分ほどであればありだが、試合の展開を考えると3点なので逆転は不可。

3.ファウルされるのを待ってバスケットボールカウントを狙う
→これしかない

フェイクは「シュートを打つと見せかけるとき」に使うけど、この時のミッチーに関しては逆で「フェイクと見せかけたシュート」なんです。

この日のミッチーは絶好調な上、スタミナが切れてからシュート率が上がるという異質なクレイジーシューター。

松本が飛びかかった時点でシュートを打ち、シュートを打った後にファウルをもらえればシュートフォームが崩れないのでシュート成功率は高い、かつディフェンスは明らかにシューターを押し倒しているのであれをファウル取らない審判はまずいない。

だからこの時のミッチーは「3Pを打つときファウルをもらうために一瞬ディフェンスが来るのを待ってからシュートを打ち、ファウルをもらってバスケットボールカウントでフリースローをもらった」という超人技を一瞬でやってのけた訳です。

もしシュートが入らなくても3つフリースローがもらえるので、2本決めてラスト1本を外してゴリ・花道・流川がこぼれ球シュートを決めれば協力4点プレイなので、どちらにせよスリー打ってファウルもらうのが確実。

実際は河田兄弟がいるのでオフェンスリバウンドとるのは厳しいと思うので、逆転に近づく可能性が一番高いのがこの3Pバスカン。

安西先生が言っていた「知性ととっておきの飛び道具」は、この4点プレイに詰め込まれているのだ。

11.流川も花道のポテンシャルを買っていた

先ほどの三井の3Pバスカンと同じくファウルはするのももらうのも作戦の1つ。

どうしてもコートに立ちたい花道に流川は「出るなら出ろ」と煽るシーン、あれ絶対わざとファウルしてる。

残り時間考えても7ファウルになっていないし、ここで1つのファウルをしたとことで影響は出ない。

※7ファウルチームファウルのこと。当時のルールに関する資料が見つからなかったが、時代を考慮するとこの時はチームで8つ目以降のファウルでフリースローが与えられていたと推測(スラムダンク当時のルールでは山王のスローインから始まっているので)

現在はゲーム構成が変わったため、チームファウルが5つに変更。ルールとしては自動的に5回目のファウルからシュート中でなくてもフリースローが与えられる。

個人で5回ファウルをしたら退場する「5ファウル」も同じように呼ぶのでややこしいが、ファウルの対象が個人かチームかである。

タイムアウトも選手の交代も要求したらすぐに出来るわけではなく、ボールが外に出たら、ファウルがあったらなどゲーム中のキリがいい時でしか行えないのだ。

別にドライブで抜かれると言うわけでも無かったのに流川がファウルしたのは「花道を交代させるためのファウル」だと思う。

流川も花道の能力を買っていたのだ、勝つためには桜木花道も必要だと。

12.彩子が花道に言った「選手生命」の本当の意味

背中を痛めた花道の異変に気がついた彩子が「選手生命に関わる」と言い、「もうバスケが出来ない」と思い込んだ花道が安西先生に引き止められるも「親父の栄光はいつだよ?俺は今なんだよ!」の名言が爆誕し、無理やりコートに戻る。

歩けてはいるのでリハビリすれば復帰出来る程度のケガではあると思うけど、彩子が漫画である通り「たった3ヶ月で得た技術が少しバスケ出来なくなっただけで、まるで夢だったかのように消えてしまう」ことの方が彩子に取って問題だったと思う。

バカな花道も「生命」と聞いた瞬間「もうバスケが出来ないかも」と思った訳だけど、バスケが出来なくなるほどの大ケガかもしれないという重さだけではなく、急成長した分落ちるのも早いのでリセットの意味も含まれれているこの「選手生命」の意味はかなり重い。

13.リョータがアメリカで履いていたバッシュは花道と同じ?

アフターエピソードとして、沢北とリョータはアメリカでバスケを続けていた。

花道が履いているのがかの有名な「エアジョーダン1」という赤と黒のバッシュなんだけど、アメリカでリョータが履いているバッシュが花道と同じものだと思う(または違うメーカーだが同じ色を選んでいる?)

白がメインのコンバースを履いていたリョータだが、真逆の赤と黒のバッシュを選んだのは兄・ソータの赤いリストバンドとリョータが愛用していた黒のリストバンドを組み合わせただけでなく、問題児&片想い同盟の結束が産んだ絆も含まれていると思う。

14.背を向けがちだったリョータと前しか見ない流川の対比

※2023/2/18追記

リョータはソータが生きてた頃から「背を向けるな」と忠告されていることに対し、一方流川は山王戦ではロールやスピンを使っていないのです。

スピンとは?
バッグロールターン、スピンムーブの略、名称。リョータや河田兄が要所で使っている。

片足を軸に逆回転し、ディフェンスを交わす技。

ドリブルスキルはもちろんだが、遠心力を利用するため最小限の回転でディフェンスを交わす体幹の強さと、一度背を向ける必要があるのでロール時に先にドライブコースの見極めも必要。

ドリブルする時に相手に背を向けがちだった過去のリョータは、身長が思うように伸びないこともあって自分に自信が無かったんじゃないかな。

一方、体格にも運動神経にも恵まれた後輩の流川は相手に背を向けない=前しか見ない。同時に流川も「沢北に背を向ける方がマズイ」という本能も働いていたと思う。

映画では「沢北を潰す」というはっきりとした目的を共有した仲間。

「後ろめたかった過去のリョータ」と「前だけを見ている後輩の流川」、その間に存在したのが山王戦で真っ向勝負した「正真正銘の全国No.1ガードと対峙する宮城リョータ」なのである。

15.山王のお家芸・オールコートゾーンプレスについての解説

※2023/2/19追記

見た感じですが自分なりに図解で解説。海南の高頭監督の説明通りですが、全体の流れとして山王のプレスから湘北のプレス攻略まで書かせていただき申す。

山王のプレスの構図は3(フロント)・1(ゴール下)・1(ゴール下)、又は3(フロント)・2(ゴール下)だと推測。
(主に3・1・1(スリー・ワン・ワン)/3・2(スリー・ツー)と呼びます)

ゴール下が「1・1」か「2」としているのは縦並びが横並びかの違い。

山王の場合、前3人がボールを運ぶ深津、沢北、松本、ゴール下を担う河田兄、野辺の2人がバックで待機。

#7 リョータにボールが通った途端、マッチアップしている #4 深津に加えて #9 沢北がヘルプに行く形でダブルチームに付きます。

一方で #6 松本はパス出しした #14 三井にリターンパスを出させないためにすかさず三井をマーク。同時にボールを運べる #11 流川を警戒。

仮にミッチーにリターンパスが通った場合、#14 三井に対して #6 松本 #9 沢北がダブルチームに付きます。#4 深津は #7 リョータをマーク。

マンツーマンはその名の通り1vs1だけど、ゾーンプレスは1.5人をマークしているイメージです。

#7 河田兄 #5 野辺 のゴール下組は前3人が抜かれた時のセーフティ。#7 河田兄はスティールを取りにいくため、センターサークル(ジャンプボールをするところ)あたりで待機しています。

深津くんと沢北くんへ、絵下手くそでごめん(何この深津ヤバくない???)

一見山王のディフェンスは力づくに見えるけど理論あってのスタミナ勝負なのです。

映画見れば分かりますが、リョータは同じ場所で捕まってるんですよ。それもそのはず、まんまと山王のトラップにかかっているのです。

リョータにボールが渡った瞬間、すかさず深津・沢北がオンボールのリョータをマーク。この時2人はコートの隅に追いやるようにディフェンスをします。

理由は真ん中にいるとパスコースが大きく左前右の3つだが、端に追い込むことで前左の2つに絞らせる、オフェンスの選択肢を減らす仕組み

リョータの目線だとハーフハーフの力量でダブルチームを組んでいるようですが、微妙に角度が違う。

リョータに対して深津は正面で前のコースを塞ぎ、沢北は魚を捕まえるかのように斜めから追い込み横へのコースを防ぎます。

つまり、山王の狙いは以下の通り。

・オフェンスファウルへの誘い⇦序盤に取られている
・パスコースを防ぎ、スティールを取りやすくする⇦ほとんどがこれ
・5秒ルール狙い ※ボールを持ったまま5秒立つと相手ボールになる
・10秒ルール狙い ※10秒以内にセンターラインからフロントコートに運ばないと相手ボールになる

この罠にかかるとリョータはドリブルが出来ても前に運べず10秒バイオレーション、ドリブルして再度ボールを持ったらダブルドリブルになるのでパスしか選択肢がない、ガードにとって山王のゾーンプレスは絶望そのもの。オフェンスの全ての可能性を潰す絶望ディフェンス。

リョータが「押してるぞ!」と言ってるけど、際どいラインで「あの程度でファウルを取ってては試合にならない」と言う意味でのファウルとしてギリギリ取られない境界線かなと思います。取られたとしたらお腹で押しているように見えるのでプッシングですかね。

では「湘北はどうすればこのプレスを攻略出来るのか?」と言うと、仮にリョータ→三井 or 流川にパスを出そうとしても既にスティール待ちなので希望は薄い。

右に抜いても深津と沢北がボールをコートアウトさせるように仕組む、左に抜いては今度は沢北と松本が待ち受ける。

なのでこのダブルチームを突破するには、リョータが深津と沢北の間をぶち破るしかなかったのです。

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口で言うには簡単ですけど、この絶望プレスを成功させるにはオールコートを駆け回るため圧倒的なスタミナ量とプレッシャーをかけ続ける精神力が必要不可欠。かつ精度の高いゾーンプレスは、相当ハードな練習をしていることが伺える。

今も高校バスケだと試合中に足攣ってベンチ下がってしまう子もちょこちょこいるんです。

なのでケガをしないようにケアをするもの日々の鍛錬の一つ。山王が誰1人スタミナ切れていないのは、ハードな練習と身体のケアを怠っていない努力の証拠でもあるのです。

■床バンについて

※2023/5/11追記

プレイ解説なので上記から抜粋しつつ、こちらで追記します。

まず「床バン」の説明から。

深津と言えばディフェンス時の「床バン」ですが、喝を入れるため・相手を威嚇するためもありますが、実は理に適っています。

スクワットした時一番腰を沈めた状態がディフェンスするときの基本姿勢になるのですが、この「コートの床に触った時がスクワットで一番深くに腰を沈めた状態に近い」ので、腰を落とす低さの指標として床にタッチすることが多いのです。

腰を低くするのは、重心が低いほどブレないので一時的にフィジカルを強くするためであることが大きいです。

この状態で単純計算でも20分間、80を超えたシャトルランをするような感覚でコートを縦横無尽します。想像するだけでもこのキツさは分かりますよね?

床バンはプロバスケではあまり見られないので馴染みがないかもしれないですが、高校〜大学生あたりまでの学生バスケではよく見られます。特に部活が始まる中学あたりは多いかな。

男子だけではなく女子もやるチームは多いですが、深津やリョータみたいに両手で力強くバン!と言う感じではなく、床にソフトタッチするチームが多いです。

私も当時は練習でディフェンスのフットワークでは必ず床にタッチしてからやってましたね。大会では別の学校ですが、全員で床タッチしてチームワークを高めているところもありました。

今は”腰を落とさなくていい”と言う指導者もいますし、3×3などバスケのスタイルも多様化しているので一概にはこの姿勢が正しいとは言い切れませんが、深津のディフェンスは男女共に理想系です。

■オールコートプレスの時の深津のディフェンスについて

次に、オールコートプレス時の深津のディフェンスです。

上記で「リョータから見てコートの右端で捕まっている」と書きましたが、最初から深津がそうするように仕組んでいます。

ディフェンスの基本姿勢は上記の図。

山王は相手の動向を見て後出しでディフェンスをするのではなく、最初から深津から見てリョータを左端に追い込み、司令塔を潰す作戦を取ります。

流れ的にはこんな感じ。この作戦はガードの負担が半端じゃない。

深津は右側を背に向け、リョータを左側でパスをもらわせるように仕組みます。流川のいる右側に背を向けても松本がいるので無問題です。

この時深津はリョータに対して右手はパスを出させないように伸ばし、左手はリョータの胴体に手を添えるか、腕を曲げてガードする形を取ります。

ポジションはリョータに対して真後ろと言うよりは斜め後ろ〜真横をキープする形です。

🏀ちなみに…
普通のディフェンスでは抜かれることを恐れるので、ボールを運ぶPG〜SFのプレイヤーは真後ろ/正面にいることが多いです。

司令塔は終始動いているポジションなので、添える形を取ることが多いです。相手の身体に手を添えるのは相手との隙を作らないためですね。

仮にリョータが深津からみて右側でパスをもらおうと動いたとした場合、深津はリョータの身体ごと邪魔し、左腕で止めるように見せます。

”止めるように見せる”と言うのは、一見左腕だけで止めるように見えますが、実際は身体全体を駆使しています。

この時、腕だけで相手を押したらボールを持っていなくてもファウル(プッシング)を取られてしまいます。

基本的には手だけ出たらファウル、胴体で抑えたらセーフ。

なので全体を通してみると、リョータと深津のマッチアップは身体ごとぶつかっていると思います。

身体の使い方のイメージとしては、腕相撲のように腕の力だけで抑えるのではなく、足と胴体でリョータの動きを止めて、最終的に足の力を左腕に流して抑えるような感じ

こうすれば左腕は動かさずガードするだけに見えるので、ファウルを取られずリョータを抑えることができます。

リョータにボールに渡ってからの沢北とのダブルチームも同じ。2人とも手は上げているだけで、沢北も胴体でリョータの動きを止めています。

簡単に”ガードする”と書いても、深津が実在するプレイヤーだとすれば、彼のディフェンスは我々が思うよりかなり強固だと思います。

それにあのポーカーフェイス…私が男子だとしても太刀打ちできないな…言葉で説明しても難しいですよね。あのディフェンスは筋肉量とスタミナからして深津しか出来ないなあと思うばかり。

.

最初は阿吽の呼吸で沢北が挟み込みに言ったのかと思ってたけど、これに気がついたのは何回か見た後で、後半早々ミッチーがパス出しするアングルになった時「私がミッチーだったらあそこでしかパス出せない」と気がついたんですよ。

リョータは牧とのマッチアップ経験が活きていると思うけど、あの体格差でよく深津と沢北を打破したなと毎回思う…

とんでもない男だよ、宮城リョータは。

16.ファウルとブロックの違い

※2023/4/22追記

先日バスケもスラダンも初心者の友人と見に行ったところ「ファウルとブロックの違いが分からない」とのことだったので、もしかしたら分からない人が多いのでは?と思ったので追記します。

ファウルの定義は「相手の身体にぶつかった時」に取られ、簡単には「ボールに触っていたらセーフ、体に触れたらファウル」です。

ファウルの種類はいくつかあるので軽く説明。

・プッシング
相手を押したときに取られるファウル。

山王では終盤花道をコートに戻す為の流川→沢北の流川のファウル、三井の4点プレイ時に松本が三井を押し倒しているプレイが顕著。

・ブロッキング
相手のコースを塞ぐように邪魔した時に取られるファウル

プッシングとの違いはプッシングは押すブロッキングは立ちはばかるように見えます。


イリーガル・ユース・オブ・ハンズ
手首を叩いたりすると取られるファウル。
主にシュート体制時に起こりやすく、”相手の手ではたくように見える”と取られる。

以前は「ハッキング」と呼称だったので、スラムダンク当時のルールではおそらく「ハッキング」が正式名称かと思います。


ホールディング
相手の腕などを掴んだ時に取られるファウル。

先ほどのイリーガル・ユース・オブ・ハンズと似ているが、ホールディングは”手で相手の動きを抑えつけている”ように見えます。
1on1などの場面で、DFに取られることが多いです。


オフェンスファウル
→正式には「オフェンス チャージング」だが、オフェンスファウルが通称。ボールを持っているプレイヤーが相手DFにぶつかったら取られる

山王戦ではリョータがプレスにかかった時沢北にぶつかった時と、原作で沢北→花道で沢北にオフェンスファウルが取られている。


テクニカルファウル
→主にプレイ以外のファウル。例えば監督やコーチ、選手が審判に言いがかりをつけたり、相手チームを挑発したり、監督やコーチが勝手にベンチを離れたりすると取られる。

このテクニカルファウルはコート上のプレイヤーにも取られることがあり、例としてはダンクをした時にリングに必要以上にぶら下がっていると「挑発している」とみなされるため、プレイヤーにテクニカルファウルを取られることもある。

山王戦では無いものの、スラムダンクでは名朋の森重がダンクした時に必要以上ぶら下がっていた時と、神奈川県大会予選で海南vs陵南で魚住が審判に言いがかりをつけた時に取られている。

(本来なら花道が来賓席の机に飛び乗ったシーンは、テクニカルを取る審判の方が多いと思う)

めっちゃ絵下手だけど図解で説明(ゾンプレ時といい毎回ごめん)

絵では伝わりづらいのですが、イリーガルかホールディングと書いたのは、実際イリーガルと思っていても程度が過ぎると押さえつけているように見えると、ホールディングの可能性もあります。

この時ボールではなく手首を叩いた場合「シュート体制時のファウル」としてフリースローが与えられます。

ちなみに、陵南戦で仙道が「シュート打つ前に流川にファウルしたのにフリースローだとジャッジされた」と不服そうだった場面がありましたが、これは”ボールを持った時点でシュート体制に入った”とジャッジされたためですね。

ここで説明しますが、フリースローがもらえる定義は①シュート体制時のファウル②現在のルールではチームファウルが5個目から自動的に与えられます

なので今のルールだと1Q/ピリオドで4回までのファウルはセーフ、連載当時のゲーム構成は前後半の20分なので7ファウルルール、フリースローはおそらく8つ目以降で与えられると思います。(最後の流川のプッシングがスローインから始まっているため)

②のチームファウルが1Qで5(8)個目以降に与えられるフリースローは、シュート体制時でなくても与えられ、バックコートでもディフェンス側のファウルであれば自動的にフリースローが2本もらえます。

※オフェンスファウルは例外で、チームファウルのカウントはされますがスローインからのスタート、つまりフリースローはもらえません。

5(7)ファウルルールですが、例えば一方のチームが3Qで5ファウルに達してしまった場合、4Q目ではリセットされ、ファウル数は0からのカウントになります。連載時は前後半でリセットですかね。

これはブロック

全体で見るとこのような感じ。終盤の花道→沢北の「返せ」は花道が沢北の腕に触れず”ボールだけ”弾いているのでファウルではなけ「花道のブロック」としてカウントされます。

下の図のように「相手の手に触れていないが、胴体で押ししているように見える」場合、プッシングやブロッキングを取られることもあります。

これはファウル

例えば終盤の花道のダンクがノーカンになった時の河田兄→ゴリの河田兄にファウルが取られるシーン。

ファウルはファウルですが、この場合センタープレイで丸ゴリは”コースを邪魔している訳ではない”ので、種類としてはブロッキングよりプッシングのジャッジが妥当かなと思います。

後半、三井が松本に抜かれてゴリがヘルプに入った時のゴリのバスカンファウルは、上記の理論だとプッシングに見えるかもしれませんが、ドライブコースを塞ぐようにヘルプに入ったことを考えると、ブロッキングでのジャッジが妥当かと思います。

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言葉で説明しても分かりづらいですね。ファウルの裁量は審判によりけりかつ実際のプレイでないとジャッジ出来ないので、曖昧な表現も多くて申し訳ない。

改めてこうして書いていると山王戦の審判は全国常連の前回王者・最強山王と初出場・悪者湘北と明らかな知名度の差があるにも関わらず、コールがフェアだなと思います。

高校バスケどころかプロリーグでも贔屓じゃない?と思うジャッジ多いですからね。

なんとな〜くでも分かっていただければ幸いです。

その他気がついたこと

1.ピアスの「あやこ」とマネージャーの「彩子」は別人だと思う

「re:SOURCE」に「ピアス」が再収録されているのですが、改めて読み返してやっぱりピアスの「あやこ」とマネージャーの彩子は別人ではないか?と思ってます。

ピアスの彩子は右耳にピアス開けているけど、マネの彩子は見た限りピアス開けてない?

2.リョータが安西先生のことを知った理由

漫画では陵南の田岡監督がリョータをスカウトした時「安西先生がいるから湘北に行く」と断られているのですが、直接入学前に安西先生に出会ってエピソードがごっそり無いんです。

推測だけど、中学の時知り合ったミッチーから「湘北にいい先生がいる」と聞いたんじゃないかなと思っている。

3.クーアザドンイハビ

主題歌の10-FEETの「第ゼロ感」の最後のフレーズが「クーアザドンイハビ」。

逆から読むと「ビハインドザアーク」、これはバスケ用語でスリーポイントから遠い場所から打つシュートのこと。今は「ディープスリー」と呼ぶのが主流ですね(NBAではよく見られます)

わざと逆さ読みで歌詞に入れたと言うのは、県予選の陵南戦での木暮君の実質決勝点スリーも含めて「大逆襲」「下剋上」をテーマにしたのではないか?と思ったり。


4.エンドロールのキャストはポジション順

※1/22追記

疑問の声を多く見かけたので追記。

キャスト発表からそうだと思うけど、エンドロールの順番は単にリョータが主人公だからトップではなくポジション順では無いかと。

今はあまり言わないのでそんなに知られては無いのですが、バスケではポジションを番号で表すこともあります。

1番→ポイントガード/PG
湘北:宮城リョータ 山王:深津一成

2番→シューティングガード/SG
湘北:三井寿 山王:松本稔

3番→スモールフォワード/SF
湘北:流川楓 山王:沢北栄治

4番→パワーフォワード/PF
湘北:桜木花道 山王:野辺将広

5番→センター/C

湘北:赤木剛憲 山王:河田雅史

なので「主人公」や「作品で目立った順」という訳では無いんですね。

「THE FIRST」

本当に時間とお金が許せば1日で同じ映画館で朝から晩まで見たいぐらい大好きな映画!

リピーターも未履修だけど気になっている人も、見る前でも見た後でも、スラダンに対しての解像度が上がればいいなと思っております。

作品の初期設定としての「THE FIRST」でもあり、
初めて出会う人の「THE FIRST」でもあり、
以前からのファンの「THE FIRST」でもあり、
湘北にとっての「THE FIRST」の全国大会、
山王にとっては「THE FIRST」の敗北、
次元を超え全てを含んだ「THE FIRST」。


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