【スラムダンク】山王がなぜ湘北に敗れたのかを元バスケ部が大真面目に考えてみた
㊗️スラムダンク映画化🎉
私は元々ミニバスからバスケをやっていて、中学の時「スラムダンクを読め」と顧問に言われて読み始めたのですが、私がバスケをはじめてから既に「スラムダンクがバスケの教科書」だったので全然世代じゃないんですけど、これまでスラダンほど何度読んでも同じ熱量で同じくらい感動できる漫画に出会うことなく、今でも人生で一番好きな漫画として君臨しております。
まだ映画公開は先だけど、告知動画の花道が坊主で山王戦舞台が確実っぽいので、映画公開に先駆けて(?)未だに議論されている「何故全国王者がポッと出湘北に1点差で負けたのか?」をミニバス中学で6年間、ブランク10年の元バスケ部が大真面目に考えてみようと思います。
スラダン推しランキング
本題入る前に先に推し紹介させくれ!
①三井寿 (湘北)
最推し。自分がセンターだったので3Pが得意な選手に憧れる。スタミナ無いところが私と似てる(短距離は得意だけど持久走は苦手だった)。後輩の面倒見がいい、不器用なところが推せる。
②仙道彰(陵南)
陵南のエース。釣り好き。ツンツン頭。特技は寝坊。遅刻魔。マイペースさと朗らかさが好き。特に無礼な花道に対して笑い飛ばして受け入れているところ好感度しかない。だけどプレイはマジのエース。「まだ慌てる時間じゃない」とコート上で言える冷静さと自信とチームコントロール力、そして理論的なゲームメイクが好き。
③藤真健司(翔陽)
キャプテンでありプレイヤーであり監督でもあるスーパーマン。美男子。仲間からの信頼も厚く、リーダーシップのある男前な性格でまさにパーフェクトヒューマン。登場人物で唯一サウスポーなのがイケメン度を加速させる。
あと海南の神もおっとりしてて優しそうだし好きだな〜。でも旦那にするならしっかりしてるし海南の牧だな〜。ライバルも魅力的なのもスラダンのいいところですよね。ライバル同士交流があるのは(一部犬猿の仲だが)男子特有なのかな?
湘北メンバー
推しを語ったところでキャラおさらい。だいたいわかるべという方はこの部分を読み飛ばしていただいて問題ございません。
この記事はニッチ向けに書きたいので、読んだことある人なら分かる程度の世間的に有名ではないシーンで紹介。画像は拾ってきました。
#10 桜木花道
主人公の不良バスケ素人。1年。赤い髪の毛がトレードマーク。晴子に惚れてバスケを始めるという単純男だが、次第にバスケの魅力にのめり込み、誰もが驚くほどの身体能力でバスケットマンとしての才能を開花していく。流川をライバル視している。
この花道の下投げフリースローは、この時点で庶民シュート(レイアップ)とダンクとゴール下のシュートしか打てないので、下投げで打つと自ら編み出したシーン。
#11 流川楓
1年ながらもエースとして活躍するスーパールーキー。187cmと長身だがボール運び、3Pシュートからダンクまで出来るオールラウンダー。無口で超負けず嫌いのクールな一匹狼で、バスケ以外興味がなく常に寝ている。女子から絶大な人気。洋楽好き。無愛想だけど先輩にしっかり敬語で話すところは好き。
新装版の表紙の防波堤の上をでチャリる流川最高。(これ実際やった結構怖いよね?)
#4 赤木剛憲
通称ゴリ。3年。キャプテン。センター。デカい。バスケ一筋。見た目ゴリラ。成績も優秀で文武両道。常に問題児の世話に手を焼いている。晴子は妹。今のところ私の周りでゴリ推しは見たことない。
#5 木暮公延
通称メガネ君。3年。副キャプテン。三井が復帰してからは補欠。ポジションはSF〜PFあたり。優等生。穏やかな性格で問題児たちの仲介役。Tシャツのセンスが謎。眼鏡を外すとイケメン。
#7 宮城リョータ
2年。ガード。短気。刈り上げパーマ風の髪型が目印。入院していたのでブランクあり。マネージャーの彩子が好き。ピアスを開けている。168cmと小柄だが電光石火ドリブルと呼ばれるスピードが武器。最初花道とは仲悪かったが、恋の悩みを花道に打ち明け、片想い同盟として一晩で距離を縮める。
#14 三井寿
通称ミッチー。3年。元中学MVPの県内でも有名なエリートプレイヤー。ヒザの怪我が完治せずグレていたが恩師の安西先生との再会でバスケ部に復帰。仲間からは「炎の男みっちゃん」と呼ばれている。スリーポイントが得意。ブランクが長くスタミナはないのでゲーム中いつもバテているが、バテてからスリーの確率が上がる敵からしたら厄介なプレイヤー。私の推し。
グレてる時は全然好きじゃない。ロン毛だし前歯無いし。
山王メンバー
全員坊主で分かりづらいので山王もおさらい。山王は全国2冠の無敗王者の強豪として君臨している男子バスケ界の最強高校。
#4 深津一成
キャプテン。ガード。山王を2年間無敗に導く正真正銘の王者。ピョンが口癖。真髄をつける冷静な性格。スコアやプレイで目立ちはしないが、アシストやディフェンスに定評があり全てのプレイにおいて安定感のあるチームを回す重鎮。
#5 野辺将広
通称ポールくん。センター。身長はデカイがモテる沢北、ゴツい河田、赤髪花道に阻まれ残念ながら影が薄い。
#6 松本稔
湘北戦では後半からの出場だが普段はスタメン。SG〜SF。オフェンスが得意でプレイも顔も沢北系。「腕が上がらない」という三井の言葉を真に受ける素直な性格がゆえ、雰囲気にのまれてしまうメンタルが欠点。
#7 河田雅史
通称丸ゴリ。現在はセンターだが当初は身長が低く、最初はガードだったが身長が伸びるに連れてシューター、センターと数々のポジションをこなす本物のオールラウンダー。マッチョでごつい割には俊敏。私的にはリバウンド争いも出来るので沢北より丸ゴリの方が強いと思っている。
#8 一之倉聡
普段は補欠だがディフェンス力が高く、三井を抑えるため湘北戦ではオフェンス力の高い松本に変わりスタメン。我慢強い性格(山王の合宿は厳しすぎてスタメンすら逃げ出すレベルとのエピソード)。バスケはディフェンスで流れを変えられるので、ディフェンスが上手いプレイヤーも重要となる。
#9 沢北栄治
山王屈指のエース。高校バスケ界で知らないものはいないほどの有名プレイヤー。幼い頃からバスケに精通しており、高校生ながら華麗なプレイでファンも多い。エースだけどまだ2年だからか山王の中ではいじられキャラっぽいので割と好き。
#15 河田美紀男
1年。河田の弟。210cmと高校生プレイヤーで一番身長が高い巨漢。兄と違い鈍臭い。デカイだけで想像以上に無能。魚住(陵南)や森重(名朋)のようにデカくて動けるプレイヤーの凄さが分かる。
①深津のアンスポ
意外とメンバー紹介が長くなってしまった。それではレッツゴー。
バスケはなんと言っても後半からが本番。前半無名湘北がワンゴール差で終え互角の戦いを見せますが、山王のオールコートゾーンプレスにより一気に20点差に引き離されます。
ここで観客もライバル校も勝負がついたと思いきや...がけっぷち高校の下克上が10分を切ってから始まり、あれだけ絶好調だった山王が少しずつ崩れ始める。
その1つ目、山王深津のインテンショナルファウル。
リョータがルーズボールを追い速攻を仕掛けようとしたところ、深津がリョータにファウル。これがインテンショナルファウル(限:アンスポーツマンライクファウル)として取られる。
何故あの冷静沈着な深津がアンスポをしたのか。
①パスミスのフラストレーション
②リョータのドリブルの速さに苛立っていた
③このままではノーマークで2点取られるのでアンスポしてでも速攻の2点を抑えようと覚悟した
彼はミステリアスなので感情が読めませんが、あの場面ではわざとなようで触発的にやったと思いますね。
得点を防ぐための多少のファウルは妥協する、これは強豪関係なくどのチームも一緒。観客の言う通り、今後も流れとして勢いづく速攻の2点を抑えられたのであの場面でのファウルは流れ的にはアリだけど、そのファウルの意味が非常に重い。
①物怖じしない冷静な性格のキャプテンの深津のファウル
②主にファウルの最上級であるアンスポ
こうなると監督含め、山王内では「キャプテンがアンスポなんてどうした」と少なからず不安がよぎるはずだ。
②沢北と流川のマッチアップ
山王側には大きく2つのミスがある。一つは先ほどのアンスポ、二つがミッチーの土壇場3Pバスカン(この後説明します)。だけど目立つミスではなく、徐々に追い詰めていたプレイもあった。
後半から山王が本領発揮、エース沢北の勢いが止まらず絶好調。だがその沢北の活躍に黙っていない男がいた。
流川だ。
続いて湘北のエース・流川の1on1が山王のエース・沢北を狂わせる。
三井のスリーがよく決まり点差をつめたかと思いきや、へなちょこシュート(正式名称:ティアドロップシュート)や速攻ダンクなど沢北の華麗なプレイが光り、また引き離される展開。
直後流川のターン。1on1で挑むと見せかけ、2つのターンで2回ともパスを出す。
プレイとしては当たり前のアシストパスだが、海南の清田が言う通り「流川がパスを出す意味をわかっていない」と言えるほど衝撃的なプレイである。
何故なら県大までの流川のオフェンスはボールを持ったら9割はゴールに果敢に攻めていた=どんな局面でも自分で攻めてパスを出さなかった。
猛反撃の際、沢北に「バスケットは算数じゃねえ」と言いますが、これは「俺は1on1だけじゃない」という意味で言っていると思いますね。
安西先生のガッツポーズの画像を見たことある人多いと思うんですけど、これは流川からゴリへのパスを見て咄嗟にでたものなんですね。いつもは置物のように傍観している安西先生、そして数ヶ月とは言えずっと流川を見てきた安西先生までもがこの喜びっぷり。
なんと安西先生は今の今まで流川に「仲間にパスを出しなさい」と一言も指示していないんです。なぜなら安西先生は流川を信じていたから。流川がパスをすれば沢北より上のプレイヤーである=湘北が勝てることを見抜いていたのだ。流川が自分が指示しなくても自らパスをし、一皮向けた。そりゃ先生も喜ぶはずだ。
そしてこのままなんの変哲のないパスが、日本No.1プレイヤーの2年・沢北を狂わせる。
どうして百戦錬磨無敗王者エースの沢北が流川に翻弄されていたのか。
事前のビデオ研究で自分と同じ性格である流川は確実に切り込んでくるとチームメイトですら読み構えていたが、2度連続パスを出され拍子抜け。同時に自分の相手は流川だけだと思っていたが、桜木にやられたオフェンスファウル以来、素人桜木の予測不能の運動量と存在がチラつき、流川とのマッチアップに集中出来ない。一気に視野が狭くなり、独りよがりのプレイになってしまった。
その結果、集中力が切れなかなかシュートが決まらず、流川には駆け引きで負け続け、湘北のルーキー2人に翻弄されっぱなしになった。
山王のペースが崩れている状態、記者が「どうして堂本監督はタイムアウトを取らないのだろう?」と疑問を投げかける。同じ記者も「エースの信頼」と答えるのですが、この状態で簡単に“信頼“の一言では無理がある。
あの場面でエースの沢北に「周りも使え」と言えたのはチームメイトではなく、指揮を取る監督だけなのだ。だけどその肝心な監督が沢北に信頼を置いてしまっている。
記者が「いつまでも1on1にこだわりすぎた」と指摘したように、流川を起点としたチームプレイで追い上げ始めた湘北と対象的に、トッププレイヤーが集っているにも関わらず山王はチーム全員で沢北のワンマンプレイに頼り、自らを追い込んでいたようにも見える。
こうしてみると県大の湘北戦でにリードされているときにチームメイトに言った陵南・仙道の「まだ慌てるような時間じゃない」の重みと凄さが分かりませんか?読み進めている時は仙道って冷静なプレイヤーだなと思うぐらいですけど、実際全国に出ると改めて仙道の凄さが伝わると思います。
1回戦で当たった大阪の豊玉もラン&ガン勝負(得点力勝負)のチームなのでこの一言は言える人物はまずいない。
もしコートでキャプテンの深津か先輩の河田がこの一言を言えたら...そう思わずにはいられない。
③残り49秒、起死回生の三井の3Pバスケットボールカウント
流川の怒涛の追い上げにより流れは完全に湘北。残り1分を切ったミッチーの3Pがバスケットボールカウントとなり、大波乱を巻き起こす。
このプレイ、マッチアップしていた松本が焦ってファウルしますが、このファウルは完全にミッチーの戦略だと思ってます。
まず名場面・花道流川の勝利のハイタッチまでの流れを説明すると、この時点でスコアは71-76、勝負強い三井が3Pを決めて74-76、バスカンでフリースローを決めて75-76と一気に迫る。
その後は執念で互いがファウルギリギリのブロックで猛攻、チャンスを物にした流川がゴール、直後も沢北がひっくり返すが、最後は流川→花道にパスし、ブザービートで決勝点。79-78で湘北の大逆転勝利を収め、全国No.1の山王を初戦で下し実質日本一に。(その後3回戦に進出するが敗北、ここで湘北の夏が終わる)
このミッチーのクイを見てくれ!
瀕死状態の三井がリョータからパスをもらい、シュート体制までのモーションはおそらくわずか1秒。
フェイクはシュートを打つとみせかける時に使う。だがこれはフェイクと見せかけたシュートだったのだ。
この場ですぐシュートを打ったとする。バスケットボールカウントはシュートを”打った時”にファウルすると取られるので、パスをもらってからすぐにシュートを打ってファウルされた場合、おそらく”シュートを打った後のファウル”だとジャッジされる。
なのでフェイク無しで打った場合、バスカン無しのただの3点の可能性が高い。
もしミッチーがスリーを決めて74-76に持ち込み、仮にまた湘北がゴールを決めて同点延長戦に持ち込むとする。だが花道大怪我、ミッチー瀕死、山王は延長で絶対にオールコートマンツーで当たってくるとなると、全員がスタミナ切れの湘北に取って延長戦は勝ち目のない厳しい展開になる。
山王は松本がフェイクと瞬時に判断した。通常であれば飛びかかってきたディフェンスをフェイントで交わしてワンバンからのノーマークで3Pが打つ方が確実である。
ミッチーは細かなフェイクを入れて0.5秒ほどモーションを遅らせた。この一瞬でミッチーは松本がファウルをするのを待っていたと思う。
一瞬フェイクを入れて松本が飛びかかるのを待ったところでシュート、同時にファウルをもらう。しかもこのプレイでは松本がバランスを崩し三井にのしかかったので、どの審判でも「白6番、プッシング、バスケットカウント、ワンスロー」とジャッジする。
あのファウルは焦った単なる松本のミスではない、松本を利用しバスカンを狙っていたミッチーの作戦だったのだと思う。
この起死回生の一本までを細かく言えば、前半ディフェンスのスペシャリストである一ノ倉とのマッチアップで三井のスタミナを切れさせてシュートの確率を下げる作戦を決行したが、結果「バテてからが本番」の三井のシュートの確立を上がらせてしまうという想定外の失態、後半コートでもマッチアップしていた松本も雰囲気に呑まれたり、本当はシュート打てるのに「もう腕が上がらない」と嘘ついたりしているのですが、これが徐々に響いてきた感じですね。
「お前のディフェンスが効いてるぞ、三井がかなり疲れている」と一ノ倉に伝えるのですが、これは三井の底力をまだ知らない描写。これはスラダンの1ファンの私の見解なんですが、知ってから「ヘヘッミッチーはこれからだぜ」って思いながら読むのもめちゃくちゃ面白いかも。
まあ取り敢えず読んでくだされ、この波乱を呼んだ奇跡とも言える1本が全て山王の誤算であるか分かるでしょう。
この1プレイは6Pほど使って丁寧に描かれているが、実際のプレイだとおそらく2秒もないはず。
秒数にしても一瞬のプレイだ。偶然のように見せかけて計算していたようにも思う、恐るべしミッチーの状況判断力。
④新人・美紀男投下の采配ミス
いくつか敗因はありますが、こうした派手なミスが敗因かと思いきや、見返してみるとジワジワと河田弟の投下が響いていることが分かります。
全国を経験させようと投入した注目の新人・美紀男の投入が長すぎた。最初はあの花道がポジション取りでやられたぐらい図体がデカくパワーもあったが、兄と違って経験は浅く鈍臭い。花道ゴリにボコバカやられてたし、無駄なファウル多いし、美紀男1年でポール3年だろ!ポール君も冬出ないなら夏で最後だろ!出してやれよ!
湘北も山王も得点力の高さはトップクラスなので、この攻撃型チームに美紀男のようなパワープレイでしか勝負できないセンターは出オチでお役御免。
監督は機敏さのないルーキーを投下しても湘北に勝てるだろうと余裕ぶっこいていた結果の自爆ですね。監督も途中から花道に敵わないと分かったはずだし、一度全国ゲームを経験させるなら前半だけで良かったし...
それか山王でもあれほどの図体の選手が美紀男しかいなかったのか。G〜SFはいい選手多いのにな。
⑤研究不足と勝利への飢え
当時は今みたいにYouTubeで検索すれば動画がヒットする時代じゃないので、監督の伝で資料を入手したりするしかないんですよね。
ちなみに海南の高頭監督は何も調べていないで湘北に挑んでるし(もし研究されていたらワンゴール差どころか大差つけられていたとは思う...)
高さをものともしない電光石火のリョータ、スタミナ切れてからスポスポ入るミッチーの3P、絶対王者とのマッチアップで更に開花した多彩な流川のプレイ、チームをまとめるゴール下の大黒柱ゴリ、底が見えない素人桜木の運動量、そして全員が「がけっぷち精神」で逆境に強すぎる性格ばかりが集ったチーム、彼らの勝利への執念の恐ろしさを知らなかった。
湘北怒涛の追い上げにより山王目当ての高校バスケファンで埋まっていた観客席も、いつしか湘北への応援が半々になるほど熱いゲームを見せる。
「この土壇場の強さはいつもの山王を見ているようだ」と記者が言いますね。
勝って当たり前だった山王と、対照的に敗北を多く経験してきた湘北。
どちらがより勝利に貪欲かと言えば、勝ち慣れしていた山王よりも、敗北の悔しさを味わっている湘北だと思う。
⑥監督から選手へのメンタルケア
終盤2分、堂本監督が「うちの選手は絶対に精神で負けはしない、湘北はいつになったら諦めるんだ?」と言ってますね。まず相手が折れるのを待っている時点で勝ち目は無い。同時に選手たちにやるべきことを指示していないことが分かる描写だ。
堂本監督はどう指示したのか描写は無いのですが「気持ちの勝負」だとプレイヤーに託してますね。
だけど一方の安西先生はどうだろう?
通常ならTOで作戦を指示することが多い。でも安西先生は一人ひとりの強みを上げ、その上でプレイヤーの長所がこのチームを最強にさせていると褒め称えた。
チームスポーツにしては珍しく自己中心的なプレイヤーが揃った湘北。そんな彼らに安西先生はチームを支えているのは各々の活躍ではなく、各々の活躍がチームを強くさせていると上手に伝えた。
スタミナもなく残りは集中力と執念でコートに立つしかない状態、安西先生にそう言われ彼らはどう捉えるか。「自分のおかげで強いんだ」と捉えるはずだ。
これはゲーム終盤の話である。しかもゲーム前には緊張しているスタメン1人ひとりに自分の強みは何なのか意志を確認し「自分たちの方が力量は上だ」と伝えた。
鉄壁ガードを突破するリョータのドリブル、沢北を翻弄させる流川のプレイ、限界を超えても執念でコートに立つ三井、リングを守る大黒柱ゴリ、そしてリバウンド王桜木、猛進のプレイを安西先生に褒められ自信のついた彼らは「来いや山王!」と正々堂々真っ向勝負。
終盤堂本監督がゲームメイクをプレイヤーに託したことは天晴れだが、中盤から完全に沢北中心にプレイヤーに任せた堂本監督と、選手一人一人の役割と長所を明確にした安西監督。
最終的に監督からプレイヤーへのメンタルケアが勝利を左右したと思う。
安西先生は中学時代の三井に「諦めたらそこで試合終了だよ」と、湘北に「君たちは強い」と言い続け、得点源として活躍したプレイヤーには「頑張った」「君がいてよかった」と肯定する。
作戦の鋭さだけではなく、選手へのモチベーションの上げ方が、安西先生が名将と言われる意味がよく分かるような気がする。選手を底力を信じ、選手が欲しい言葉をさらりと言ってのける。
「負けたことがあるということがいつか大きな財産になる」
私がスラムダンクで一番好きな名言が堂本監督の「負けたことがあるというところがいつか大きな財産になる」なんですよね。
山王の現3年は他校に負けたことはなかった。試合が終わって美紀男以外の選手は誰も涙していなかったのは、ブザービートでの逆転ゴールだったこともあり、瞬時に勝敗がひっくり返されて、負けたことを受け入れられなかった。シード校の絶対王者が初戦敗退なんてプライドも深く気付けられたことでしょう。
ゲーム直後、堂本監督がまず今までの彼らの努力や死闘を肯定するのではなく、まだ高校生の彼らに長い目で見て敗北を「経験」として選手たちに伝えられるのは、指導者として素晴らしいと思うのです。
湘北戦は采配ミスが多くてボロクソ言ってるけど、彼らにそう言えるのは真の指導者だと思います。
同時に敗北を知った次期山王は、もっともっと強くなるでしょう。
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以上、私の見解はこんな感じ。
今回「なぜ湘北が勝ったのか?」ではなく「なぜ山王が負けたのか?」と主に山王目線で書いたのかというと、そちらの方が山王の真の強さと湘北の底抜けの恐ろしさが同時に明確になると思ったからです。
例えばマッチアップを流川目線で書いたら「1on1で1年の流川に負けるとか2年の沢北はそうでもないじゃん」となってしまいがちなんですが、流川が日本最高峰のプレイヤーである沢北と同等、もしくはそれ以上のレベルのプレイヤーであることを証明したかったので「実は沢北ザコじゃね」になる表現は避けたかったんですね。後半の猛攻を見れば分かりますが、沢北すげえ。
いや〜〜〜長くなってしまった!ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます。皆さんスラダン読み返したくなりました?
持っていない方は読み出したら止まらないので大人買いがオススメです。人生のバイブルが1万ちょいで買えるなんて安いもんです。
私は表紙が好きなので新装版を買いました。
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