コーダが自分の親に通訳したがるけど、どこまでお願いして大丈夫かしら?(ヤングケアラー?)
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《コーダ子育て中の親向け》コーダ子育てサロン(対面・オンライン)にご参加いただいた方達の、子育てに関するお悩みやご相談いただいた内容をまとめました。※コーダ=聞こえない親を持つ聞こえる子どものこと
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Q.コーダが自分の親に通訳したがるけど、どこまでお願いして大丈夫かしら? (ヤングケアラー?)
A.家族の一員としての助け合いなら、その姿は微笑ましいですね。但し、通訳を頼む場合はいくつかの注意点があります。
コーダを研究しているある方は、以下の2点を満たしていればコーダが通訳をしても問題ないと述べています。
① コーダが自分の親に通訳したいと意欲的であること
② コーダの年齢相応の簡単な用件であること
その一方で、コーダを研究している人の中には、「絶対に通訳をやらせないで!」と言及する方もいます。
考え方は人それぞれですが、聞こえない親が特に意識していただきたいことは、以下の2点です。
③ コーダは聞こえない親が様々な手段を使って大人同士のコミュニケーションがとれていることを知っている
④ 親は「訓練された手話通訳者」と「家庭内での通訳(コーダ)」には違いがあることを理解している
以上のことをふまえて、コーダ自らが通訳したいと意欲的に申し出た場合、「短時間・年齢相応のレベル・簡単な用件」であれば、通訳してもらっても問題はないと考えられます。
ちなみに成人したコーダがいう「家庭内での通訳」は、家族の「お手伝い」という感覚だそうです。
自ら進んで通訳をしたコーダの中には、「通訳って楽しい!」と感じた良い経験から語学や異文化の理解に興味を持つようになったという人もいます。これは素敵なことですね。
◆ コーダが通訳することに関して、特に気をつけなければならないこと
それは、「自分が通訳をしないと聞こえない親は生活に困る」という使命感をコーダに持たせないことです。
聞こえない親は「ありがとう…、とても助かる…。」「あなた無しでは生活に困る。」ではなく、
普通に「通訳してくれてありがとう!」とコーダに感謝して、「お父さんとお母さんは筆談や文字アプリなどでやり取りできるから、大丈夫よ。」と伝えてコーダを安心させてあげてください。
「教育機関等で訓練された手話通訳のスキル」と
「家庭内で体得した手話通訳のスキル」は全く「別物」です。
「家庭内で体得した手話通訳のスキル」は、家庭内で通じる手話をベースにした自己流のスキルです。そのため、親子にとっては通じやすいのですが、学校や公の場にて「中立的な立場」で「通訳の質を保った内容」で提供することが難しいのです。
親はこれらを理解した上で、コーダに接してください。
本格的な通訳が必要な時は、外部の手話通訳者を利用してください。(電話リレーサービス、要約筆記・手話通訳者の派遣サービス等)
◆ コーダと聞こえない親が”嫌う”通訳場面をご存知ですか?
手話を知らない大人が「(聞こえない親に)通訳してもらえないかな?」や「○○○のことを親に伝えてくれる?」など聞こえない親を介さず、直接コーダにお願いするケースです。
もし、聞こえない親の目の前でこの依頼を行っていたら、阻止することができるのですが、聞こえない親の気づかないところで、コーダが通訳を頼まれることがあります。
幼いコーダほど、相手に言われるがまま親に通訳してしまいます。親はコーダが通訳させられていることを知らないまま、話を聞きます。
「うん。うん。(内容を把握した途端)あ…、今のは、通訳をさせられているのね!」と後から気づくことが多いです。
「子どもが通訳させられた!」と気づいた親は不愉快になり、この気持ちを顔に出してしまいます。すると、これを見たコーダは気が動転してしまうことがあります。
親は、コーダに対して怒っているのではなく、依頼した大人に対して不快感を表しているのですが、コーダが幼いほど、「自分は悪いことをしてしまった」という気持ちになってしまいます。
幼いコーダは、通訳を断ることすら知りません。成長したコーダでも通訳を断ってしまうと、自分の親を蔑ろにしてしまうと思い、仕方なく通訳するということもあります。
手話を知らない大人の都合による突発的な内容を聞こえない親に伝えなければならず、内容を把握しきれないままコーダは戸惑いながら通訳をしているのです。
◆ そのために、聞こえない親ができることといえば…
簡潔な内容の場合はその場であっという間に通訳が終わってしまいますが、親が気づいた時点で、
コーダに「大丈夫だよ」と通訳を止めさせ、自分の持っているスマホの音声認識アプリを起ち上げそれを使う、筆談をするなど、相手との会話にコーダを介さないよう努めてください。
◆ 気づいていますか?
“通訳をコーダにお願いする“ということ自体が「ヤングケアラー」の役割を担わせていることに。
聞こえない親だけでなく、周りの聞こえる大人(学校関係者・医療関係者、役場の人など)が“通訳をコーダにお願いする“ことも同様です。
厳しいことを書いてしまいましたが、改めて考えていただけたら幸いです。コーダは周りにいる子どもたちと同じ子ども、子どもらしく成長してほしいのです。
こちらも参考にお読みください。
Q.進路相談などの三者面談時、コーダが親に通訳すると言っているが・・・
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