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ありがちなRPGの進め方

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『古典的なRPGの進め方』https://note.com/cocotwlz/m/m4cbff8bfa041 と同じ世界観、違うキャラクター達のワンシーン集。
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#ショートショート

私だけはあなたの思い出にいない

「アレックスの好きな花ってなに?」 見上げた横顔は一拍遅れてこちらを向いた。目つきの悪い…

譲原
3年前
2

はじまりの言葉を今も抱いていた

森の中でも敢えてろくに整地されていない場所に飛び込んだのは、少しでも敵を撒けないかという…

譲原
3年前
1

自由の先は無い、それでも自由でいたい。

「『冒険者なんて先のないこと、いつまで続けているの?』」 セルマは隣の相棒をちらりと見た…

譲原
3年前

君と歩いていきたい道がまだある

「アレックス。あれはなに?」 少女が指差したのは、中央の広場。噴水が吹き出している側で、…

譲原
3年前
1

もしもを渡って会いに来て

「ヴィー、待たせたな。……ヴィー?」 店から出てきた青年がそう声をかけると、ヴィーと呼ば…

譲原
3年前
3

空と草原のその先を

「ヴィーは将来、とびきり美人になるよ。僕が保証する」 金糸が混ざる、若草色の髪。蜂蜜を溶…

譲原
3年前
1

喧しい二人は仕舞われた

「……買いすぎです」 「……反省してます…」 長身の男女。男は責める調子で、女は落ち込んだ様子で並んで街中を歩いていた。二対の手には冒険者の格好にはあまり似合わない大きな包み。 長身だけれども華奢な女には荷物は大きく、身体の横の直径より荷物のほうが幅をとっている。 いつもなら見かねた相棒が荷物持ちを代わるのだが、その彼も今は同じく大きな包みを抱えている。これ以上の荷物は持てない。 元より、今回は彼女の自業自得なので、早々手を貸すつもりもなかった。珍しくため息をついて、カーティ

雨夜に君がいるところ。

「…そろそろ大きな木を探そう」 「木?」 森の探索途中、頃合いを見計らった口調で提案したア…

譲原
3年前
1

旅の途中、日常前夜

星が輝く濃紺の夜空の下、街を守る門扉の前。 「喉が渇きましたね」 「そっ…それどころじゃ……

譲原
3年前

縫い留められた過去を思い返す話

「──どうかしましたか、セルマ」 立ち並ぶ店の通り。ある一つの店の前でセルマは立ち止まり…

譲原
3年前
3

街角で相談した話

「妹さん?」 「お弟子さん?」 彼女と歩いていると、よくこの二つが挙がってくる。残念ながら…

譲原
3年前
1

強くなりたい話

「早く強くなりたい」 それは嘘じゃなかった。 朴訥とした小さな村。羊飼いの家。見晴らしの…

譲原
3年前
2

店先と季節の話

「…もうすっかり冬ですね」 手をすり合わせて息を吐く彼女は、どうにも寒いようでそんなこと…

譲原
3年前
1

回復の話

「お疲れ様でした」 盾の陰に隠れて座り込んだ俺に、セルマが水を差し出してくる。清浄な水。それを無言で受け取ると、一息であおった。喉を水が無理矢理通って、一瞬の息苦しさが訪れる。息をついてようやく、生き延びたという実感がわいてくる。 「ありがとうございました」 「いいえ。回復をかけても?」 彼女は杖を構えていなく、律儀に俺の答えを待っていた。 セルマは神官でもなく、生まれ持った治癒能力がただ圧倒的だっただけらしい。 今は珍しくもなくなったが、本来回復とは超常的な力。更に言えば