喧しい二人は仕舞われた

「……買いすぎです」
「……反省してます…」
長身の男女。男は責める調子で、女は落ち込んだ様子で並んで街中を歩いていた。二対の手には冒険者の格好にはあまり似合わない大きな包み。
長身だけれども華奢な女には荷物は大きく、身体の横の直径より荷物のほうが幅をとっている。
いつもなら見かねた相棒が荷物持ちを代わるのだが、その彼も今は同じく大きな包みを抱えている。これ以上の荷物は持てない。
元より、今回は彼女の自業自得なので、早々手を貸すつもりもなかった。珍しくため息をついて、カーティスは荷物を持ち直す。
「あの…カーティスは体格がいいので、あれもこれも似合うなと思って、つい……」
「おだてても荷物は代わりませんよ」
「ちがっ…! 本心です!」
往来の最中、長身の二人が大荷物で話し始めるのはそれなりに目立っていた。しかし少しばかり世間からズレている二人は自分たちに向けられる視線に気付かず、おしゃべりという名の舌戦がヒートアップしていく。
「大体、カーティスも店主の褒め言葉にだんだんほだされて満足そうだったじゃないですか!」
「あれはご婦人があんまり楽しそうに笑うからつられて返していただけです。断じて熟女好きではありません」
「聞いてないことまで答えなくてよろしい!」
荷物を間に挟んでギャーギャーと騒ぎ始める二人。そんな二人に、一つの影が近付く。
「お二人さん」
「「なんですか!」」
勢いで振り返る二人。まったく見覚えの無い男がそこにはいた。目線で『お知り合い?』『まったく』のやり取りを済ませる。男は目の前で行われるアイコンタクトのやり取りを黙って待つと、親指を立てて後ろを指した。
「喧しいからとりあえず、ウチの店入れ」
「……す、すみません…」
「…すみません」
単純に街の人間を代表して苦情交じりに客引きをしにきたようだ。そう言われてはセルマ達も断れず、男が先導した食堂にすごすごと入っていった。

(いいわけ)806字。いつものやり取りというものが書きたかった。回復役と盾役のキャラクターだけど、特に穏やかな性格ではない。

お菓子一つ分くれたら嬉しいです。