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ありがちなRPGの進め方

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『古典的なRPGの進め方』https://note.com/cocotwlz/m/m4cbff8bfa041 と同じ世界観、違うキャラクター達のワンシーン集。
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2020年11月の記事一覧

私だけはあなたの思い出にいない

「アレックスの好きな花ってなに?」 見上げた横顔は一拍遅れてこちらを向いた。目つきの悪い…

譲原
3年前
2

はじまりの言葉を今も抱いていた

森の中でも敢えてろくに整地されていない場所に飛び込んだのは、少しでも敵を撒けないかという…

譲原
3年前
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自由の先は無い、それでも自由でいたい。

「『冒険者なんて先のないこと、いつまで続けているの?』」 セルマは隣の相棒をちらりと見た…

譲原
3年前

君と歩いていきたい道がまだある

「アレックス。あれはなに?」 少女が指差したのは、中央の広場。噴水が吹き出している側で、…

譲原
3年前
1

葉擦れには負けないたった一つの単語

「あなたは私の名前をよく呼ぶわね」 探索の途中。暇つぶしにと切り出した雑談の一言は、思っ…

譲原
3年前
1

もしもを渡って会いに来て

「ヴィー、待たせたな。……ヴィー?」 店から出てきた青年がそう声をかけると、ヴィーと呼ば…

譲原
3年前
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空と草原のその先を

「ヴィーは将来、とびきり美人になるよ。僕が保証する」 金糸が混ざる、若草色の髪。蜂蜜を溶かしたような瞳。少しだけつり上がった大きな目が冷たく感じないのは、くるくるとよく変わる表情のおかげだ。 優しさとはつらつさ。太陽の光、空と草原のその先を求めることを恐れない勇敢さ。 それがヴィヴィアンという少女だった。 青年はそれらすべてを含めてその言葉を伝えたつもりだったが、当の少女は顔をしかめて冷たい感想を返しただけだった。 「…誰彼構わず口説き始める羊飼いに言われても、全然嬉しくない

喧しい二人は仕舞われた

「……買いすぎです」 「……反省してます…」 長身の男女。男は責める調子で、女は落ち込んだ…

譲原
3年前

雨夜に君がいるところ。

「…そろそろ大きな木を探そう」 「木?」 森の探索途中、頃合いを見計らった口調で提案したア…

譲原
3年前
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旅の途中、日常前夜

星が輝く濃紺の夜空の下、街を守る門扉の前。 「喉が渇きましたね」 「そっ…それどころじゃ……

譲原
3年前

縫い留められた過去を思い返す話

「──どうかしましたか、セルマ」 立ち並ぶ店の通り。ある一つの店の前でセルマは立ち止まり…

譲原
3年前
3

街角で相談した話

「妹さん?」 「お弟子さん?」 彼女と歩いていると、よくこの二つが挙がってくる。残念ながら…

譲原
3年前
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強くなりたい話

「早く強くなりたい」 それは嘘じゃなかった。 朴訥とした小さな村。羊飼いの家。見晴らしの…

譲原
3年前
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店先と季節の話

「…もうすっかり冬ですね」 手をすり合わせて息を吐く彼女は、どうにも寒いようでそんなことを隣で呟いた。 実際のところ、冬だと言い切るにはまだ早い。木はまだ枯れていないし、日が昇る時間はまだ遅くない。寒さに弱い彼女の冬認定が早いだけだ。 街のざわめきを遠巻きに見ながら、道の端でポツポツと言葉だけを交わす。 「冬は嫌いですか」 「…そうですね…好きではないです」 到着したばかりの街で宿もとらずにぼうっと立っているだけの状態には訳があった。俺達二人とも疲労困憊だったのだ。 相性が悪