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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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#文縁の友

短歌 ピアノ 十首

短歌 ピアノ 十首

調律が必要みたい 少しだけ生きづらいのはたぶんそのせい

無理をしてキスをねだった日もあった 笑い話になりますように

形から入るタイプと連弾で触れた指から紡ぐナラティブ

口下手で不器用なのもちゃんと好き 理想ではないとこまでなんで

旋律が悲しくなると泣き出すの 正しさなんてどこにもないと

残酷なニュースを流すテレビとか部屋の明かりを消してひとつに

僕たちが持ち寄る

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短歌 初夏 十首

短歌 初夏 十首

ドローンは孤独を壊すためにあるという説だがやはりオバケか

ヒーローになれる方法があるなら三回払いで買わせてくれ

君だけがわかってくれたほろ苦さ 焦げたキャラメル食んで微笑む

水たまり飛び越え進む初夏の道 絶望なんてまだ知らないよ

予報ではにわか雨だというけれど二人時々ケンカのちキス

水滴にまっさかさまに映り込む二人の顔がくっつく瞬間

青春の味しかしないガムを噛む

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短歌 猫 十首

短歌 猫 十首

偉い人なんていないよ 偉そうな人なら街に溢れてるけど

黒猫で親指ぎゅっと隠したらぽつぽつ漏れる死にたい理由

終電を逃した猫の迷い子は夜が明けるまで罪を匿う

シグナルが点灯しても気づかずに踊り続ける人のプライド

私よりスマホ画面に夢中だね 私は君よりじゃらしに夢中

突きつけたはずの刃が裏切って禁じ手として愛に化けてく

恋心なんてかわいいもんじゃない できることなら

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短歌 習作 十首

短歌 習作 十首

さよならを置き去りにした二人して永遠求めツツジを啜る

幼な子の黒目に問うてみるがいい ちゃんねるを見る背中はどうか

やわ肌についた傷ごとよろしくね あなたの爪が弾く思い出

省みることのできない阿呆烏 正義の皮を被った行列

今日未明行方不明になりました 確かに君を好いていたのに

イヤホンを分けあう部屋の片隅でおどけほつれてひとつの影に

嫌味など上手くなっても意味が

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短歌 アドレッセンス 十首

短歌 アドレッセンス 十首

頭からトマトスープに突っ込んで溶けたあなたの味が好みよ

あやとりの得意な人は手をあげて そこに神経を通しますね

危険だと早く逃げてと叫ぶ君のシルエットがもう笑ってる

なにもかも芽吹き始めたせいにして思う存分浸っていいの

走り出す理由があると泣く意味がなくなることに気づいてるかい

教科書に載せられなかった現実を書き加えたら楽譜になった

永遠は一瞬の中にだけ在る 奇

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短歌 卒業 十首

短歌 卒業 十首

へたくそな口笛だって構わない 今はひたすら声がききたい

桜色の袴が似合う人でした ほんとに淡く散ってしまった

嫌いとは愛の同義語 三月の空になびかぬ切りすぎた髪

アイシャドウなんてつけない 嘘のない瞳で君を見ていたいから

ツーアウト満塁みたいな恋をした 次の一手が決定打なの

居残ったざわめきがまた暴れ出し蕾のきみをこじ開けてゆく

萌芽とは青年の春に訪れる葛藤の蔦

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短歌 晩冬 十首

短歌 晩冬 十首

芽吹いたら底を知らない恋心 晩冬の空に毅然とあれ

「ありがとう」と「愛してる」の言の葉はくすぐったさがとても似ている

灰色の冬を脱ぎ捨て街に出よ 小さな春を捕まえにゆけ

届かないことは同時に尊さを伝えることだと気づいた喪服

iPhoneの画面にたぶんアイはない eyeで追うのは虚しさばかり

あの日から心に決めたことがある 何が何でも生き延びてやる

疲れたら詩歌を

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短歌 ココア 十首

短歌 ココア 十首

窓際で眠るあなたに降り注ぐ柔い西陽に僕はなりたい

思い出がこれ以上美化されぬよう右のこめかみを強く押した

美しい季節になれと微笑んで秋を屠った君は変態

私よりゲームに夢中な君のこと攻略をするゲームに夢中

バンホーテンを知らない君へ教える甘くない恋もあるってこと

二人とも整理整頓が苦手で互いの傷の場所を知らない

「あ、天使」と空を見上げて呟いた君の孤独をわかりたかった

笑い顔が似てきた

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短歌 春待ち 十首

短歌 春待ち 十首

嘘つきは美しい花になるはず四月ごろには桜が咲くし

萌芽とはつまり悪意の目覚めだという仮説なら否定しておく

缶コーヒー片手に君を待っていた路地の氷がみたび張るまで

クリスマスソングが世界を急かすから自転速度が上がったみたい

恥たちも過ぎてしまえば糧になる がっついてでも生きぬく聖夜

熱を持つ月にお祈りしちゃダメよ叶うものすら失っていく

再会を恐れ彷徨うコンコース 京王線はわざと止まった

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短歌 ヒストリー 十首

短歌 ヒストリー 十首

好きな色も知らない人にプレゼント 有馬記念より緊張する

本当にいいんですねと念押され急にためらう愛の告白

流行らないタバコなんかでごまかして微笑めるのは今のうちです

心にはしっかり棲みついているのに歩幅を知るとイライラしちゃう

左側なんて嫌です支配してほしいの右ききのその腕で

こんなにも心が痛い原因は君なんだから責任を取れ

休日にカフェデートなんてしゃれこんでイオンモールが恋しくなった

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短歌 誕生日 十首

短歌 誕生日 十首

倦怠期をケンタッキーと間違えて今日も我が家は平和なのです

おめでとうが今更照れて言えなくて口を尖らせつぶやく「老けた?」

あなたからもらったピアスをしています 早く髪に触れそれに気づいて

サプライズがなくても日々がサプライズ なんでシチューにちくわが入る

その瞳がどうか曇りませんように 泣けますように 笑えるように

寒いからほっぺをくっつけニヤケ顔 これから冬を大好き

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短歌 煌めきの赤 十首

短歌 煌めきの赤 十首

満たされるつもりなどない 愛情に底があるとは思えないから

私たち重ねた日々が鮮やかに広がってゆく影が愛しい

ゆく季節に柔らかなサヨナラを真白いベッドの上で告げるの

銀河系の隅っこでまだ泣いてるの 胸を裂くならフレアを想え

リトマス紙みたいにわかりやすいひと 嘘がつけないところも一緒

情熱を薔薇に託した歌の所為 私は耳を塞ぎ続ける

僕らみな太陽の子と笑えればどこに

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短歌 占い 十首

短歌 占い 十首

占いを信じるわりに私には現実的なことを言うのね

水瓶座と射手座の相性がいいことは僕たちがもう証明してる

唇をくっつけたそれは事実上キスと判定していいですか

この胸にドラムンベースが棲みついた 重たく深く鼓動を刻む

やっかいな鼓動の高くある冬は孤独をどこかに見失っている

十二月 間違ってなどいないから一緒に虹を探しに行こう

吐く息も街の明かりに消えてゆく 二人の影

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短歌 吐息 十首

短歌 吐息 十首

二番目じゃだめなんですと涙声 掴んだ袖に嵐の予感

告白がまるでこれでは告発だ 誰が君の心を踏んだ

時ぐすりが効いてきたから大丈夫 私あなたと眠っていたい

ただ一人を信じる勇気が生まれて師走の空も笑ってくれた

あの頃は傷を隠して息してた そんな時代もあったと笑う

大好きな人だからなおタチ悪い どこまで君を信じればいい

吐く息が白くなったらこの胸にポインセチアを飾っ

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